日本政策金融公庫の融資の種類一覧
- 日本政策金融公庫の融資制度は約50前後あるが、小規模事業者が最初に見るべきは「一般貸付」「新規開業・スタートアップ支援資金」「セーフティネット貸付」「マル経融資」「生活衛生貸付」の5つ(公式サイトで確認)
- 制度を選ぶ入口は「開業前後か、事業を続けているか」「売上が落ちて苦しいのか」「経営指導を受けられるか」という自分の状況の分岐で決まる
- 新規開業資金は2025年3月に「新規開業・スタートアップ支援資金」へ名称変更されている(公式サイトで確認)
この記事の内容
この記事は、日本政策金融公庫(以下、公庫)で融資を検討しているものの、制度が多すぎてどれに申し込めばいいか分からない小規模事業者・個人事業主に向けて書いています。 結論から言うと、公庫には国民生活事業だけで36の融資制度がありますが(2026年9月1日、公式サイトの融資制度一覧で確認)、小規模事業者がまず見るべきは「一般貸付」「新規開業・スタートアップ支援資金」「セーフティネット貸付」「マル経融資」「生活衛生貸付」の5つです。どれに当てはまるかは、自分が「開業前後か、事業を続けているか」「売上が落ちて苦しいのか」という状況で、ほぼ機械的に絞り込めます。
- 公庫のサイトを見ても制度が多すぎて、自分がどれに当てはまるのか分からない
- 「創業融資」「セーフティネット貸付」など言葉は聞いたことがあるが、違いが説明できない
- 間違った制度に申し込んで、審査に時間だけかかるのが怖い
結論:まず「開業前後か、事業を続けているか」で分かれる
公庫の融資制度は名前も条件も似たものが多く、公式サイトの一覧をそのまま読んでも選びにくいのが実情です。ただ、実際に絞り込む手順はそれほど複雑ではありません。
- 開業前、または開業からおおむね7年以内なら「新規開業・スタートアップ支援資金」
- すでに事業を続けていて、特に業況が悪化していないなら「一般貸付」
- 売上が一定以上落ちて苦しいなら「セーフティネット貸付」
- 商工会議所・商工会の経営指導を受けられる、または受けているなら「マル経融資」
- 飲食店・美容業・旅館業など生活衛生関係の事業なら「生活衛生貸付」
この5つのうち、自分がどれに当てはまるかを次の章から順に整理していきます。
制度が多すぎて迷うのは、自分の理解不足ではない
公庫の国民生活事業だけで融資制度は36あります(2026年9月1日、公式サイトの融資制度一覧で確認)。制度を読んでも違いが分からないのは、あなたの理解力の問題ではなく、単に制度の数が多いからです。 銀行の窓口担当者でも、公庫の全制度を暗記しているわけではありません。
焦って条件に合わない制度に申し込むと、審査だけに数週間かかった上で「対象外」と言われることもあります。まず自分がどの入口に当てはまるかを先に絞ってから、その制度の詳細を確認する順番が結果的に早道です。
日本政策金融公庫とは何か
日本政策金融公庫は、「株式会社日本政策金融公庫法」に基づき設立された、政府が全額出資する政策金融機関です(財務省「政府関係金融機関」ページで確認)。民間金融機関だけでは資金供給が十分でない分野(創業期の事業者、小規模事業者、農林水産業者など)を対象に融資を行う点で、営利を目的とした民間の金融機関とは立場が異なります。事業の種類ごとに「国民生活事業」(主に小規模事業者・個人事業主向け)、「中小企業事業」(中小企業向け・国民生活事業より大口)、「農林水産事業」の3つに分かれており、この記事では小規模事業者・個人事業主が主に利用する国民生活事業の制度を扱います。
比較表:代表的な5つの融資制度
| 制度名 | 対象者 | 融資限度額 | 返済期間 |
|---|---|---|---|
| 一般貸付 | 事業を営むほとんどの業種の方(公式サイトで確認) | 運転資金4,800万円・設備資金4,800万円(特定設備資金は7,200万円) | 運転5年以内(特に必要な場合7年以内)・設備10年以内・特定設備20年以内 |
| 新規開業・スタートアップ支援資金 | 新たに事業を始める方、または事業開始後おおむね7年以内の方(公式サイトで確認) | 7,200万円 | 設備20年以内・運転10年以内 |
| セーフティネット貸付(経営環境変化対応資金) | 社会的・経済的環境の変化等により一時的に業況が悪化しているが、中長期的には回復が見込める方(公式サイトで確認) | 7,200万円 | 設備20年以内・運転10年以内(いずれも据置3年以内) |
| マル経融資(小規模事業者経営改善資金) | 商工会議所等の経営指導を原則6ヶ月以上受けている小規模事業者(公式サイトで確認) | 2,000万円 | 10年以内 |
| 生活衛生貸付(一般貸付) | 飲食店・美容業・旅館業など生活衛生関係の事業を営む方(公式サイトで確認) | 7,200万円〜4億8,000万円(業種により異なる。上限は一般公衆浴場業2施設以上の場合) | 13年以内(一般公衆浴場業は30年以内) |
※2026年9月1日時点の調査。各制度の対象者・融資限度額・返済期間は、いずれも日本政策金融公庫公式サイト(jfc.go.jp)の各制度ページで運営者が直接確認しました。金利は基準利率をもとに返済期間・担保の有無・利用者の属性(女性・35歳未満・55歳以上など)によって変動し、申込み時点でないと確定しないため、この表には記載していません。
開業前・開業からおおむね7年以内なら「新規開業・スタートアップ支援資金」
これから開業する、または開業してからまだ7年以内という方は、まずこの制度が入口になります。無担保・無保証人で利用でき、融資限度額は7,200万円、返済期間は設備資金20年以内・運転資金10年以内と、一般貸付より長期の設計です。
この制度は2025年3月3日に名称が変わっており、以前は「新規開業資金」という名称でした。「スタートアップの方にもご利用いただけることを分かりやすくするため」に名称変更したと、公庫の公式お知らせ「『新規開業・スタートアップ支援資金』に関するお知らせ」(2025年3月3日付)に記載されています(2026年9月1日確認)。また、無担保・無保証人で利用する場合にかつて要件だった「創業資金総額の10分の1以上の自己資金があること」は、2024年4月1日付(一部は同年2月16日)で撤廃され、あわせて融資限度額も3,000万円から7,200万円に、運転資金の返済期間も7年以内から10年以内に拡充されています(公庫のニュースリリース「『スタートアップサポートプラザ』の新設について」2024年4月1日付、別紙「日本公庫のスタートアップ向け融資制度の拡充について」で確認)。この制度の詳しい審査のポイントは、当サイトの記事「日本政策金融公庫の新規開業資金|自己資金なしで通るか」にまとめています。
すでに事業を続けているなら「一般貸付」
すでに事業を営んでいて、開業から7年を超えている、あるいは特に業況の悪化があるわけではないという場合は「一般貸付」が基本の選択肢になります。用途を限定しない、事業資金の基本形の融資制度で、運転資金・設備資金いずれにも使えます。融資限度額は運転資金・設備資金とも4,800万円(特定設備資金は7,200万円)です(公式サイトで確認)。
担保・保証人については、公式サイトに「お客さまのご希望を伺いながらご相談させていただきます」と記載されており、絶対要件ではありません(2026年9月1日確認)。ただし実際の可否は個別の審査によります。
売上が落ちて苦しいときは「セーフティネット貸付」
一時的に売上が落ちて資金繰りが苦しいものの、事業自体は中長期的に立て直せる見込みがある、という場合はセーフティネット貸付が対象になります。代表的なものが「経営環境変化対応資金」で、対象になるのは、最近の決算期の売上高が前期または前々期に比べて5%以上減少している方、または直近3ヶ月の売上高が前年同期・前々年同期に比べて5%以上減少しており、かつ今後も売上減少が見込まれる方などです(公式サイトで確認)。融資限度額は7,200万円、返済期間は設備資金20年以内・運転資金10年以内(いずれも据置期間3年以内)です(公式サイトで確認)。
なお、新型コロナウイルス対応の実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の返済に苦しんでいる場合は、セーフティネット貸付とは別に検討すべき窓口があります。詳しくは当サイトの記事「コロナ融資(ゼロゼロ融資)の返済が苦しいときの選択肢」を参照してください。
経営指導を受けられるなら「マル経融資」
商工会議所・商工会の経営指導員による経営指導を、原則6ヶ月以上受けている(または受けられる)小規模事業者であれば、マル経融資が選択肢に入ります。無担保・無保証人で融資限度額は2,000万円と、5つの制度の中では小さめですが、その分、経営指導という準備を経ているため審査の設計が異なります。今すぐ資金が必要な場面には向かず、数ヶ月先を見据えて動く制度です。条件・流れの詳細は当サイトの記事「マル経融資(小規模事業者経営改善資金)の条件と使いどころ」にまとめています。
生活衛生関係の事業なら「生活衛生貸付」
飲食店、美容業、旅館業、クリーニング業など、生活衛生関係の事業を営んでいる場合は、一般の国民生活事業の制度とは別に「生活衛生貸付」という専用の窓口があります。同じ「一般貸付」という名称でも、生活衛生貸付のものは融資限度額が7,200万円〜4億8,000万円と、業種・設備の内容によって幅が大きく、通常の一般貸付より大口の資金にも対応します。上限の4億8,000万円は一般公衆浴場業(2施設以上)の場合で、この業種のみ返済期間も30年以内と別枠になっています。それ以外の業種(飲食店・理容業・美容業など)は返済期間13年以内です(いずれも公式サイトで確認)。自分の業種が対象になるかどうかは、業種ごとの詳細条件が異なるため、公庫の窓口または生活衛生同業組合に確認するのが確実です。
自分で決めきれないときは、窓口に電話で聞く
ここまで読んでも「自分がどれに当てはまるか分からない」場合、無理に自分だけで決めようとしなくて大丈夫です。公庫には「事業資金相談ダイヤル」があり、電話で状況を話せば、担当の制度案内をしてもらえます。 制度を間違えて申し込み、審査に時間をかけた末に対象外と言われるより、先に電話で確認するほうが結果的に早く進みます。
窓口では自分の状況(開業前か、開業何年目か、売上の増減、商工会議所の会員かどうかなど)を伝えれば、担当者が候補の制度を絞り込んでくれます。この段階では融資の可否を判断されるわけではないため、気軽に問い合わせて構いません。
次にやること
自分がどの制度に当てはまりそうかを、この記事の5つの分岐(開業前後か・業況悪化があるか・経営指導を受けられるか・生活衛生業か)で仮に絞り込んだ上で、公庫の事業資金相談ダイヤル、または最寄りの支店に電話で確認してください。制度を1つに決めてから書類を揃えるほうが、結果的に申込みから融資までの時間を短くできます。