赤字決算でも融資は受けられるか
- 赤字であること自体が即座に融資を止めるわけではなく、金融機関は赤字の理由・債務超過の有無・足元の資金繰り・試算表の内容・経営者の個人資産といった複数の要素を組み合わせて判断するとされる
- 赤字と債務超過は別の状態であり、混同しないことが重要
- 決算書だけでなく直近の試算表・資金繰りの見通しを用意して相談することが実務上の対策になる
この記事の内容
この記事は、直近の決算が赤字になり、この状態で銀行や日本政策金融公庫に融資を相談していいのか分からずにいる小規模事業者・一人社長に向けて書いています。 結論から言うと、赤字であること自体が融資を即座に止めるわけではありません。金融庁の「金融検査マニュアル」は2019年12月18日に廃止されており(金融庁「検査マニュアル廃止後の融資に関する検査・監督の考え方と進め方」令和元年12月、fsa.go.jp、2026年9月確認)、赤字決算のときの審査基準を定めた公的な一次資料は現在ありません。ただし、金融機関が赤字の中身を見ずに判断しているわけでもありません。複数の専門家解説に共通するのは、赤字の「理由」・債務超過の有無・足元の資金繰り・試算表の内容・経営者の個人資産という複数の要素を組み合わせて見ているという説明です。
- 決算が赤字になり、この状態で融資の相談をしていいのか分からない
- 銀行が具体的にどこを見て可否を判断しているのか知りたい
- 決算書のほかに何を用意すれば相談が進めやすくなるのか分からない
結論:赤字は入口を閉じないが、複数の要素を組み合わせて見られる
赤字決算になったからといって、融資の相談自体を諦める必要はありません。銀行や日本政策金融公庫(以下、公庫)、信用保証協会は、申込時に直近の決算書の提出を求めます(大阪信用保証協会は必要書類のページで「確定申告書等」について直近2期分の写しを求める旨を明記しています。大阪信用保証協会公式サイト、2026年9月確認)。しかし、赤字という結果の数字だけを見て機械的に可否を決めているわけではなく、赤字に至った理由、資産と負債のバランス、足元の資金繰りの見通しなど、複数の要素を合わせて判断しているという説明が、複数の専門家解説・金融機関の相談窓口の案内に共通して見られます。この記事では、その「どこを見ているか」を項目ごとに整理します。
まず、赤字=即NGではないと知ってから相談する
決算書に赤字の数字が出た瞬間、「もう融資は無理だ」と相談自体を諦めてしまう事業者は少なくありません。ですが、赤字の理由を説明できる状態で相談に行くのと、何も準備せずに「赤字なので無理ですよね」と切り出すのとでは、金融機関側の受け止め方も変わってきます。相談すること自体に、心理的なハードルを感じすぎる必要はありません。
心身に不調が出るほど資金繰りに追い詰められている場合は、この記事の情報より先に、医師や産業医への相談を優先してください。ここから先は、銀行が実際にどこを見ているかの整理です。
比較表:銀行が赤字決算のときに見ている5つの着眼点
| 着眼点 | 何を確認しているか | 事業者側でできる備え |
|---|---|---|
| 赤字の理由 | 一時的な要因(特別損失・設備投資の減価償却など)か、売上減や固定費過多による構造的な赤字か | 決算書の数字を、理由と翌期の見通しをセットで言葉にしておく |
| 債務超過の有無 | 貸借対照表上、負債が資産を上回っていないか | 資産・負債の内訳を自分でも把握しておく(詳しくは次の見出しで整理) |
| 足元の資金繰り | 決算後、現時点で売上・入金が回復傾向にあるか | 直近の試算表・入出金の状況を用意する |
| 試算表・直近の動き | 決算日から相談日までの期間、状況が改善しているか悪化しているか | 月次試算表を作成できる体制を整えておく(税理士に依頼している場合は依頼する) |
| 経営者の個人資産・保証 | 代表者個人の資産状況、経営者保証の有無 | 経営者保証に関するガイドラインの存在を知っておく(次の見出し以降で整理) |
※上記5点は複数の専門家解説・金融機関の相談窓口の案内に共通する着眼点として整理したものです。金融機関ごとの内部基準は公表されておらず、この表は点数化の基準ではありません。
赤字の「理由」をどう説明するか
「赤字」とひとくくりにされがちですが、中身は大きく分かれます。設備投資による減価償却や、その期だけ発生した特別損失が原因の赤字と、売上そのものが減り続けている、または固定費が売上を恒常的に上回っている構造的な赤字とでは、金融機関の見方も変わるとされています。
決算書の数字だけを提出して終わりにするのではなく、「なぜ赤字になったのか」「翌期以降どう改善する見込みなのか」を、自分の言葉と数字で説明できる状態にしておくことが実務上重要だという説明は、複数の専門家解説・税理士の解説記事に共通して見られます。この見極めが自分だけでは難しい場合は、顧問税理士に決算内容を一緒に整理してもらうことをおすすめします。赤字の「質」による違いは、[赤字決算でもファクタリングは使えるか]でも扱っています。
赤字と債務超過は別の状態
赤字と債務超過は、しばしば混同されますが別の状態です。赤字は、その期の損益計算書で支出が収入を上回った結果を示す数字です。一方、債務超過は貸借対照表上、負債の合計が資産の合計を上回っている状態を指します。単年度が赤字でも、それまでの利益の積み上げ(利益剰余金)が厚ければ債務超過には至りませんが、赤字が複数期続くと、資産の目減りが利益剰余金を食いつぶし、債務超過に近づいていきます。
2期連続で赤字が続く、あるいは債務超過に陥っている場合は、融資の審査がより厳しくなる傾向にあるという説明が複数の税理士・コンサルタントの解説で一致していますが、金融庁の「金融検査マニュアル」廃止(2019年12月18日)後は金融機関ごとの内部基準に委ねられているため、債務超過時の統一的な審査基準を示す公的な一次資料はありません(金融庁「検査マニュアル廃止後の融資に関する検査・監督の考え方と進め方」令和元年12月、fsa.go.jp、2026年9月確認)。自社が今どちらの状態にあるのか(赤字だが債務超過ではないのか、債務超過に近づいているのか)を、決算書の貸借対照表で確認しておくこと自体が、相談前にできる備えになります。
決算書だけでなく試算表を持っていく効果
決算書は、あくまで「決算日時点」の過去の数字です。相談のタイミングが決算日から数か月経っている場合、決算書だけでは「今、状況がどうなっているか」が伝わりません。月次で作成する試算表(貸借対照表・損益計算書の期中版)を合わせて提示することで、決算後に売上が回復傾向にあること、赤字が縮小していることなどを、決算書とは別の資料で示せます。
試算表の提出が可否に直結するという基準を明記した金融機関の公式情報は確認できていませんが、決算が赤字だった直後の相談ほど、試算表のような「その後の動き」を示す資料の有無が会話の進み方を左右するという説明は、複数の税理士・コンサルタントの解説に共通しています。顧問税理士がいる場合は、相談前に直近の試算表を作成してもらえないか確認してください。試算表と合わせて資金繰り表があると、今後の入出金の見通しも示しやすくなります(作り方は[資金繰り表の作り方|一人社長は3列で足りる]で整理しています)。
経営者保証と個人資産の位置づけ
中小企業の融資では、代表者個人が会社の借入を連帯保証する「経営者保証」が求められることがあります。日本商工会議所と全国銀行協会が公表した「経営者保証に関するガイドライン」(平成25年12月5日公表、平成26年2月1日適用開始、日本商工会議所・全国銀行協会公式発表)は、法人と経営者個人の資産・経理を明確に分離していることなど一定の要件を満たす場合に、経営者保証を求めない、または保証の必要性を改めて検討する取り扱いを金融機関に促す内容になっています。ただし、このガイドラインは法的な強制力を持たない自主的なルールであり、自社が要件を満たすかどうか、実際に経営者保証を外せるかどうかは金融機関・案件ごとの個別判断になります。ガイドラインの原文・Q&Aを探しても、要件充足の可否を全国一律で判定する基準は示されておらず、個別に申込先の金融機関へ確認するほかありません。
赤字決算の局面では、法人としての返済能力だけでなく、経営者個人の資産状況が合わせて見られる場面があるという点は、知っておいて損はありません。
実体験:赤字決算の年、資料をどう準備していたか
正直に書きます。私自身が経営者として自社の赤字決算を経験し、融資を申し込んだことはありません。前職では執行役員として管理部門を統括する立場にいたため、この記事は「赤字を出して融資を申し込んだ側」の体験ではなく、「決算内容を踏まえて金融機関との相談資料を準備する側」として見てきた事実に基づいて書いています。
赤字の見込みが立った期は、決算が確定してから慌てて資料を作るのではなく、決算の見込みが固まった段階で、赤字の理由と翌期の改善見込みを数字にまとめた資料を先に用意していました。決算書だけを渡して「あとはお任せします」という進め方より、赤字の理由・足元の試算表・翌期の見通しをセットで持っていったときのほうが、金融機関との会話が「赤字だから難しい」で終わらず、次の相談につながりやすいという実感があります。
次にやること
まず、直近の決算書の貸借対照表を確認し、自社が「赤字だが債務超過ではない」のか、「債務超過に近づいている」のかを把握してください。 その上で、赤字の理由(一時的な要因か構造的な要因か)を数字で説明できる資料を用意し、顧問税理士がいれば直近の試算表の作成を依頼してから、銀行または公庫に相談してください。2期連続赤字や債務超過が見えている場合は、資金調達の前に、顧問税理士や中小企業診断士、商工会議所の経営相談窓口に事業の立て直し自体を相談する価値があります。支払期日が近く、相談・審査を待つ余裕がない場合の選択肢は[赤字決算でもファクタリングは使えるか]で整理しています。
ラボル
※本記事は2026年9月時点の調査に基づく情報整理です。金融機関が赤字決算時に何をどう点数化しているかという具体的な審査基準は、金融庁・日本政策金融公庫・信用保証協会のいずれの公式情報にも公表されておらずとしています。これらは複数の専門家解説・相談窓口の案内に共通する目安として記載しており、確定した審査基準ではありません。経営者保証ガイドラインの適用可否を含め、個別の資金調達・経営判断については、税理士・金融機関の公式情報と担当者への確認を優先してください。
出典(2026年9月確認) - 金融庁「検査マニュアル廃止後の融資に関する検査・監督の考え方と進め方」(令和元年12月18日、fsa.go.jp)で金融検査マニュアルの廃止を確認 - 経営者保証に関するガイドライン研究会(日本商工会議所・全国銀行協会)「経営者保証に関するガイドライン」(平成25年12月5日公表、平成26年2月1日適用開始、jcci.or.jp・zenginkyo.or.jp) - 大阪信用保証協会公式サイト「必要な書類」ページ:確定申告書等について直近2期分の写しを求める旨を明記(cgc-osaka.jp/guide/documents/) - 赤字決算時の具体的な点数化基準・債務超過時の統一的な審査基準は、金融庁・日本政策金融公庫・信用保証協会のいずれの公式情報にも見当たらず - 実体験部分は運営者本人が前職(執行役員・管理部門統括)で見てきた事実に基づく