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日本政策金融公庫の新規開業資金

この記事の結論
  • 日本政策金融公庫は2024年度に無担保・無保証人で利用できる創業融資の自己資金要件(創業資金総額の10分の1以上)を撤廃し、現行の「新規開業資金」には制度上の自己資金要件がない(公式ニュースリリースで確認)
  • ただし制度要件が無いことと審査で有利になることは別で、自己資金の少なさは事業計画の説明で補う必要がある
  • 融資限度額・返済期間も2024年度に拡充されており、自己資金ゼロを検討する前に確認すべき点を整理する
この記事の内容
  1. 結論:制度上の自己資金要件は撤廃されたが、審査での重要性は残る
  2. 自己資金が心もとないこと自体は、開業を諦める理由にならない
  3. 新規開業資金とは何か
  4. 自己資金要件はいつ、どう変わったか
  5. 制度上は不要でも、審査で自己資金が見られる理由
  6. 自己資金として認められるもの・認められにくいもの
  7. 自己資金が少ない場合にできる準備
  8. 実体験:管理部門を統括する立場から見ていた「稟議の通し方」
  9. 次にやること

この記事は、これから開業する方、または開業して間もない方で、日本政策金融公庫(以下、公庫)の「新規開業資金」を検討しているものの、自己資金があまり用意できていない方に向けて書いています。 結論から言うと、公庫の創業融資はかつて「創業資金総額の10分の1以上の自己資金があること」が制度上の要件でしたが、2024年度にこの要件は撤廃されています。ただし、制度上の要件が無いことと、自己資金が少なくても審査で不利にならないことは別の話です。この記事では、何が変わり、何が変わっていないのかを公式資料に基づいて整理します。

こんな状態ではありませんか
  • 開業したいが、自己資金をあまり貯められていない
  • 「自己資金が10分の1以上必要」という古い情報と、「自己資金要件なし」という新しい情報のどちらが正しいのか分からない
  • 自己資金が少ない状態で申し込んで、審査に落ちるのが怖い

結論:制度上の自己資金要件は撤廃されたが、審査での重要性は残る

公庫は2024年4月1日付のニュースリリースで、無担保・無保証人で利用できる創業融資制度(旧・新創業融資制度)について、2023年度は「創業時において、創業資金総額の1/10以上の自己資金があること等」だった要件を、2024年度は「なし」に変更したと発表しています(日本政策金融公庫ニュースリリース「『スタートアップサポートプラザ』の新設について」2024年4月1日付、別紙(参考3)より)。現行の「新規開業資金」の公式ページにも、自己資金の金額や割合についての要件記載はありません(2026年9月1日確認)。

つまり、制度の建前としては、自己資金がゼロでも申し込むこと自体は可能です。ただし、これは「自己資金要件という審査基準そのものが無くなった」という意味であり、「自己資金の有無が審査結果に影響しなくなった」という意味ではありません。事業計画書の中で、開業資金をどう賄うかの裏付けとして自己資金の状況を説明する場面は残っており、自己資金が少ない場合は、その分を事業計画の説明で補う必要があります(この点は複数の専門家解説で共通していますが、公庫が個々の審査でどこまで重視するかという運用の詳細までは公表されていません)。

自己資金が心もとないこと自体は、開業を諦める理由にならない

ここが要点

「自己資金が少ないから、自分は融資を受けられないだろう」と最初から諦める必要はありません。制度上の自己資金要件が撤廃されたのは、公庫自身が「自己資金の多寡だけで開業の可否を判断すべきではない」という方針に転換したことの表れです。大切なのは、自己資金が少ない事実を隠すことではなく、その状態でも返済していける計画を、自分の言葉で説明できるようにしておくことです。

心身に不調が出るほど資金の準備に追い詰められている場合は、この記事の情報より先に、医師や産業医への相談を優先してください。ここから先は、制度の仕組みと準備の整理です。

新規開業資金とは何か

新規開業資金(正式名称:新規開業・スタートアップ支援資金)は、公庫の国民生活事業が扱う融資制度で、対象者は「新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方」です(日本政策金融公庫公式サイトで確認)。主な条件は次の通りです。

  • 融資限度額:7,200万円(公式サイトで確認)
  • 返済期間:設備資金は20年以内(うち据置期間5年以内)、運転資金は10年以内(うち据置期間5年以内)(公式サイトで確認)
  • 利率:担保の有無等により異なる基準利率が適用され、女性の方、35歳未満または55歳以上の方などは特別利率A(基準より低い利率)が適用される(公式サイトで確認)
  • 担保・保証人:公式ページには「お客さまのご希望を伺いながらご相談させていただきます」とあり、無担保・無保証人での利用を一律に保証する記載はありません(2026年9月1日確認)

なお、無担保・無保証人での利用を前提とした制度拡充(旧・新創業融資制度からの移行分)は、正確には「新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を2期終えていない方」を対象にしたものです(日本政策金融公庫ニュースリリース、2024年4月1日付より)。開業から2期(おおむね2年前後)を超えている場合、新規開業資金そのものは7年以内であれば利用対象ですが、無担保・無保証人での取り扱いになるかどうかは個別の相談・判断による可能性があるため、申込みの窓口で確認することをおすすめします。

自己資金要件はいつ、どう変わったか

公庫は2024年度、無担保・無保証人で利用する創業融資について、要件・融資限度額・返済期間をまとめて拡充しました。ニュースリリースで公開されている比較は次の通りです。

項目 2023年度まで 2024年度以降
自己資金要件 創業時において、創業資金総額の1/10以上の自己資金があること等 なし
融資限度額 3,000万円(うち運転資金1,500万円) 7,200万円(うち運転資金4,800万円)
返済期間(設備資金) 20年以内 20年以内
返済期間(運転資金) 7年以内(原則) 10年以内(原則)
据置期間 2年以内 5年以内

※日本政策金融公庫ニュースリリース「『スタートアップサポートプラザ』の新設について」(2024年4月1日付、別紙(参考3))に基づく。同リリースでは、2024年4月1日から拡充予定(一部は2024年2月16日拡充済)としています。

この表からも分かる通り、自己資金要件の撤廃は、融資限度額の倍増(3,000万円→7,200万円)や返済期間・据置期間の延長と同時に行われた制度全体の拡充の一部です。自己資金要件だけを切り取って「厳しくなった/緩くなった」と捉えるより、公庫が創業期の資金調達のハードル全体を下げる方向に制度を変えた、という文脈で見る方が実態に近いといえます。

制度上は不要でも、審査で自己資金が見られる理由

自己資金要件が撤廃された後も、事業計画書には自己資金の状況を記入する欄があり、面談でも開業資金の内訳(自己資金でいくら、借入でいくら賄うか)を聞かれることが一般的だと、複数の専門家解説で説明されています【一次情報なし:公庫がどこまで自己資金を審査基準として運用しているかの一次資料は確認できていません】。理由として挙げられることが多いのは、自己資金は「返済能力そのもの」ではなく、「計画的に資金を準備してきたかどうかを示す一つの材料」として見られている、という説明です。開業資金の全額を借入で賄う計画よりも、一部を自己資金で賄い、その分を計画的に貯めてきた経緯が説明できる方が、事業計画全体の信頼性を補強しやすい、という考え方です。

自己資金が少ない場合にこの点で不利にならないためには、「自己資金が少ない理由」と「それでも返済していける根拠」をセットで説明できるようにしておくことが重要です。単に「制度上は要件が無いはずだ」と主張するのではなく、自己資金の少なさを事業計画・売上見込みの精度で補う、という向き合い方が現実的です。

自己資金として認められるもの・認められにくいもの

自己資金の考え方について、公庫の公式ページでは概要は示されているものの、個々の申込みをどこまで厳格に確認するかという運用の詳細までは公表されていません。その前提のうえで、複数の専門家解説に共通して挙げられている整理は次の通りです。

  • 認められやすいとされるもの:給与や事業収入から計画的に積み立ててきた預金(通帳で入出金の経緯が確認できるもの)、退職金、これまでの事業で得た利益の一部など
  • 認められにくい、または裏付けを求められやすいとされるもの:申込み直前に一時的に他人から借りて口座に入れた資金(いわゆる「見せ金」)、出どころの説明がつかない現金(いわゆるタンス預金)

これらは公庫の公式ページで明文化された基準ではなく、複数の専門家解説・実務経験に基づく共通した説明であるためとしています。自己資金の裏付けに不安がある場合は、申込み前に通帳の入出金履歴を自分で確認し、説明できない入金がないかを見直しておくとよいでしょう。

自己資金が少ない場合にできる準備

自己資金要件が制度上撤廃されたとはいえ、自己資金がまったく無い状態で申し込むより、できる範囲で準備してから申し込む方が、事業計画の説得力を高めやすいと考えられます。具体的には次のような準備が挙げられます。

  • 申込みまでの間、毎月一定額を計画的に貯める:通帳に積み立ての経緯が残るため、「計画的に資金を準備してきた」ことの裏付けになりやすい
  • 開業資金の内訳を具体的に見積もる:設備資金・運転資金をそれぞれいくら必要とするかを積算し、自己資金と借入でどう分担するかを事業計画書に落とし込む
  • 創業に関する相談窓口を早めに使う:公庫の窓口や、商工会議所・商工会の創業相談は、申込み前の段階でも利用できます。事業計画書の内容について助言を受けられる場合があります
  • 税金・社会保険料の未納がないかを確認する:自己資金の多寡以前に、納税証明書の提出が前提になる制度が多いため、滞納がある場合は先に解消しておく必要があります

自己資金の少なさをその場で取り繕うより、申込みまでの数か月を使って「準備してきた経緯」を作る方が、結果として説明のしやすさにつながります。

実体験:管理部門を統括する立場から見ていた「稟議の通し方」

私の場合

正直に書きます。私自身はまだ独立準備の段階で、公庫に創業融資を申し込んだ経験はありません。前職では執行役員として管理部門を統括する立場にいたため、この記事は「融資を受ける側」の体験ではなく、「社内の資金調達の稟議を確認する側」として見てきた事実に基づいています。

社内で新規事業の予算を通す稟議を見ていて感じたのは、決裁者が最終的に見ているのは「いくら自己資金(自社の持ち出し)があるか」そのものより、「その数字がどういう根拠で積み上げられているか」だった、ということです。持ち出す金額が同じでも、根拠が曖昧な計画は差し戻され、根拠が具体的な計画は通りやすい、という違いを繰り返し見てきました。公庫の創業融資も、自己資金の金額そのものより、その金額に至った経緯や、その先の返済計画の具体性が見られている点は、社内稟議と近いのではないかと感じています。

次にやること

まず、自分の預金通帳を見直し、これまでに計画的に貯めてきたと説明できる金額がいくらあるかを確認してください。 自己資金要件は制度上撤廃されていますが、事業計画書や面談では、開業資金の内訳と自己資金の位置づけを聞かれる場面が想定されます。自己資金が少ない場合は、その理由と、それでも返済していける根拠(売上見込み・支出計画)をセットで説明できるように、申込み前に事業計画書を整えてください。すでに公庫の審査に落ちてしまった場合の次の手段は、別記事で整理しています。


※本記事は2026年9月時点の調査に基づく情報整理です。自己資金として認められる/認められにくい資金の区別、審査における自己資金の重視度合いのうち、公庫の公式ページで一次確認できなかった内容にはタグを付けています。これは「調べた上で公式な運用基準が公表されていないと分かったもの」を示し、複数の専門家解説に共通する目安として掲載しています。個別の融資審査・資金調達の判断については、日本政策金融公庫の公式情報をご自身でご確認ください。

出典 - 自己資金要件の撤廃(2023年度「創業資金総額の1/10以上の自己資金があること等」→2024年度「なし」)、融資限度額の拡充(3,000万円→7,200万円、うち運転資金1,500万円→4,800万円)、返済期間・据置期間の拡充、無担保・無保証人制度の対象者(新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を2期終えていない方)は、日本政策金融公庫ニュースリリース「『スタートアップサポートプラザ』の新設について」(2024年4月1日付、別紙(参考3))原本(PDF: https://www.jfc.go.jp/n/release/pdf/topics_240401b.pdf )で本文中の数字を1つずつ照合済み(2026年9月1日確認) - 新規開業資金の対象者(新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方)、融資限度額(7,200万円)、返済期間(設備資金20年以内・据置5年以内、運転資金10年以内・据置5年以内)、特別利率Aの対象(女性の方、35歳未満または55歳以上の方等)、担保・保証人の記載文言は、日本政策金融公庫公式サイト「新規開業・スタートアップ支援資金」ページ( https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/01_sinkikaigyou_m.html )で確認(2026年9月1日)。同ページに自己資金の金額・割合についての要件記載が無いことも同時に確認 - 自己資金として認められやすい/認められにくい資金の区別、審査での自己資金の位置づけについては、上記公式ページに明文化された基準が見当たらず、複数の専門家解説(創業融資を扱う会計・法務系メディア)に共通する説明として掲載。個々の審査運用の詳細は - 実体験部分は運営者本人が前職(執行役員・管理部門統括)で見てきた事実に基づく

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執行役員として6年、会社の管理部門を統括する立場にいました。資金繰りの意思決定を経営の側から見てきた経験をもとに書いています。このサイトで紹介するのは手数料の上限を公式に明記している業者だけです。「審査なし」「誰でも通る」を売りにする業者は、載せません。

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