税金を滞納しそうなとき
- 税金は待ってもらえないと思われがちだが、国税通則法46条の「納税の猶予」、国税徴収法151条・151条の2の「換価の猶予」という、法律に基づいた分割納付の制度がある
- 申請すれば通常年9.1%(令和8年・2か月経過後)かかる延滞税が、猶予中は年1.3%(令和8年)まで軽減される
- 相談先は国税(法人税・消費税・所得税)なら所轄の税務署、地方税(住民税・固定資産税など)なら都道府県税事務所または市区町村役場の納税課で、どちらも「払えない」と分かった時点で連絡することが起点になる
この記事の内容
この記事は、法人税・消費税・住民税などの納期限が迫っているのに、資金繰りが間に合わない事業者に向けて書いています。 結論から言うと、税金は「待ってもらえない」ものではありません。国税通則法46条の「納税の猶予」、国税徴収法151条・151条の2の「換価の猶予」という、法律に基づいた分割納付の制度があります。ポイントは、納期限を過ぎてから慌てるのではなく、払えないと分かった時点で税務署または自治体の窓口に連絡することです。
- 納期限が近いのに、税金分の資金が用意できていない
- 滞納したらすぐに差押えが来るのではないかと不安
- 誰に相談すればいいのか、税務署なのか役所なのか分からない
結論:払えないと分かった時点で窓口に連絡する
税金の支払いが厳しいと分かった時点で、納期限を待たずに所轄の税務署(国税)または都道府県税事務所・市区町村役場(地方税)に連絡することが、選べる制度の幅を最も広く保つ動き方です。国税の「換価の猶予(申請による)」は、納期限から6か月以内に申請書を提出することが要件の一つになっており、これは国税庁の法令解釈通達で確認できます(国税庁「第151条の2関係 申請による換価の猶予の要件等」、2026年9月1日確認)。期限を過ぎてから動くと、使える制度が狭くなります。
まず、税金が払えないこと自体は責められることではない
「税金も払えないのか」と自分を責める必要はありません。売上が入るタイミングと納税のタイミングが一致しないのは、事業をしていれば誰にでも起こることです。 特に消費税や法人税は、決算から数か月後にまとまった金額を一括で求められる構造になっているため、資金繰りと噛み合わないことは珍しくありません。
心身に不調が出るほど追い詰められている場合は、この記事の情報より先に、医師や産業医への相談を優先してください。ここから先は、制度としての猶予・分納の整理です。
何もせず滞納すると何が起きるか
連絡もせずに納期限を過ぎると、次の流れで負担が積み上がっていきます。
- 延滞税(地方税は延滞金)が発生する:納期限の翌日から発生し、日数に応じて増えていきます。令和8年(2026年)分は、納期限の翌日から2か月を経過するまでは年2.8%、2か月経過後は年9.1%です(財務省「令和8年分の延滞税の割合」、2026年9月1日確認)。
- 督促状が届く:納期限を過ぎても納付がないと、税務署・自治体から督促状が送られます。
- 財産の調査・差押えに進む可能性がある:督促状を送ってもなお納付がない場合、法律上は財産の差押えに進むことができる段階になります。
猶予の申請は、この流れを止める・遅らせるための正式な手続きです。 連絡せずに放置することが最も選択肢を狭めます。
国税と地方税で窓口が違う
税金の種類によって、相談する窓口が変わります。
| 税金の種類 | 主な税目 | 相談窓口 |
|---|---|---|
| 国税 | 法人税・消費税・所得税・源泉所得税など | 所轄の税務署(徴収担当) |
| 都道府県税 | 事業税・不動産取得税・自動車税など | 都道府県税事務所 |
| 市区町村税 | 住民税(個人)・固定資産税・軽自動車税・国民健康保険料など | 市区町村役場の納税課(名称は自治体により異なる) |
社会保険料(厚生年金・健康保険)は税金ではなく別の制度のため、この記事では扱いません。別記事「社会保険料の滞納|放置すると差押えまでの流れ」で整理します。
納税の猶予とは(国税通則法46条)
「納税の猶予」は、災害・病気・事業の休廃止・事業の著しい損失など、一定の事情によって国税を一時に納付できないときに、納付を猶予してもらえる制度です(国税通則法46条)。地方税にも同じ趣旨の「徴収猶予」があります(地方税法15条)。
- 猶予期間:原則1年以内。状況により、さらに1年以内の延長が認められる場合があります
- 延滞税の軽減:猶予が認められた期間中は、延滞税が軽減されます。令和8年(2026年)分の猶予期間中の割合は年1.3%(平均貸付割合0.8%+0.5%)で、通常の延滞税(2か月経過後は年9.1%)より大幅に低くなります(財務省資料・国税庁「納税の猶予制度FAQ」、2026年9月1日確認)
- 担保:猶予を受ける金額が100万円以下の場合、または猶予期間が3か月以内の場合は、担保の提供は不要です。それ以外は原則として担保が必要ですが、提供できる財産がない場合は不要とされています(国税庁「納税の猶予制度FAQ」、2026年9月1日確認)
- 申請期限:納期限から6か月以内に申請することが要件の一つです(国税庁「納税の猶予制度FAQ」、2026年9月1日確認)
換価の猶予とは(国税徴収法151条・151条の2)
「換価の猶予」は、すでに差押えが行われた財産、またはこれから差押えが想定される財産について、その財産を売却(換価)して現金化するのを一定期間待ってもらう制度です。地方税にも同じ趣旨の制度があります(地方税法15条の5・15条の6)。
- 職権による換価の猶予(国税徴収法151条):税務署長の判断で猶予されるもの。財産の換価によって生活の維持や事業の継続が困難になるおそれがある場合などが要件です
- 申請による換価の猶予(国税徴収法151条の2):滞納者本人が申請するもの。納期限から6か月以内に申請書を提出していることが要件の一つです(国税庁「第151条の2関係」、2026年9月1日確認)
- 猶予期間:1年を限度に、分割納付で完納できると見込まれる最短の期間とされます
- 注意点:申請期限内であっても、差押えなどの滞納処分自体が止まるとは限りません(国税庁「第151条の2関係」、2026年9月1日確認)
2つの猶予制度の比較表
| 項目 | 納税の猶予 | 換価の猶予 |
|---|---|---|
| 根拠法(国税) | 国税通則法46条 | 国税徴収法151条・151条の2 |
| 根拠法(地方税) | 地方税法15条 | 地方税法15条の5・15条の6 |
| 対象となる場面 | 災害・病気・事業の休廃止・著しい損失などで一時に納付できないとき | 財産の売却を待ってほしいとき(差押え前後どちらも対象になり得る) |
| 猶予期間 | 原則1年以内(延長は最大1年以内) | 原則1年以内 |
| 延滞税の扱い | 猶予期間中は軽減(令和8年は年1.3%) | 猶予期間に対応する部分の延滞税が軽減される(国税通則法63条1項・租税特別措置法94条2項により、実質的には納税の猶予と同水準の年1.3%相当まで軽減) |
| 申請期限 | 納期限から6か月以内が目安 | 納期限から6か月以内(申請による場合) |
| 担保 | 100万円以下・3か月以内なら不要 | 状況により判断 |
※国税の条文・要件は国税庁の法令解釈通達・FAQで、2026年9月1日に運営者が確認しました。地方税の条文番号は法令データベースで確認していますが、地方税における延滞金の軽減率・担保要件の細部は自治体ごとに運用の説明が異なる場合があるため、実際の手続きは必ず所轄の窓口で確認してください。
相談時に準備するもの
窓口に相談する際、一般的に聞かれる・求められる情報は次の通りです。事業内容や状況によって必要書類は変わるため、電話で「相談したい」と伝えた時点で、その窓口が何を持ってくればよいか教えてくれます。
- 納付すべき税金の種類と金額、納期限
- 現在の資金繰りの状況が分かるもの(通帳の写し・試算表など)
- なぜ一時に納付できないのか(売上減少・取引先の入金遅延など)の事情
- どのくらいの期間・金額であれば分割して納付できるかの見込み
まず電話で「払えそうにない」と伝えることが最初の一歩です。 書類が完璧に揃っていなくても、相談自体は可能です。
実体験:退職後に住民税の請求書が急に届いた話
正直に書きます。私自身は今回の猶予制度を申請した経験はありません。ただ、2026年に前職を退職した際、在職中は給与から天引きされていた住民税(特別徴収)が、退職を機に自分で納付する普通徴収に切り替わり、まとまった金額の納付書が自宅に届いた経験があります。
在職中は毎月の給与明細に金額が載っているだけで、住民税を「自分で払うもの」として意識したことはほとんどありませんでした。それが退職後、数か月分がまとめて請求書として届いたときは、金額そのものより「急に自分で管理しなければいけなくなった」という感覚に驚きました。
事業者の税金の滞納とは状況が異なりますが、税金は「気づいたら大きな金額でまとめて来る」性質があるという点は共通していると感じます。だからこそ、金額が確定した時点で早めに支払い方法を確認しておくことが、後になって慌てないための唯一の手段だと思います。
こういう対応はしない
- 連絡せずに納期限を過ぎる:督促状が届くまで放置すると、選べる制度の幅が狭くなります
- 「そのうち払える」で猶予の申請をしない:猶予は延滞税を軽減する正式な制度です。使わずに通常の延滞税を払い続けるのは、選択肢を自分で狭めることになります
- 申請書類を自己判断で簡略化する:窓口に電話すれば必要な書類を教えてもらえます。分からないまま自己流で進めない方が確実です
次にやること
まず、払えそうにない税金の種類・金額・納期限を1行で書き出し、その税金を管轄する窓口(国税なら税務署、地方税なら都道府県税事務所か市区町村役場)に電話してください。 「猶予の相談をしたい」と伝えるだけで、必要な書類と次のステップを教えてもらえます。連絡は納期限の前でも後でも可能ですが、換価の猶予(申請による)は納期限から6か月以内という申請期限があるため、早いほど選べる制度が広くなります。
※本記事は2026年9月時点の調査に基づく情報整理です。地方税(地方税法15条の5・15条の6)における延滞金・担保要件の自治体ごとの運用細部は、自治体ごとに説明が異なるため一般化していません。個別の納税相談は、必ずご自身が管轄する税務署・都道府県税事務所・市区町村役場にご確認ください。
出典 - 国税通則法46条(納税の猶予の要件等)(2026年9月1日、条文原文で確認) - 国税徴収法151条・151条の2(換価の猶予の要件等)(2026年9月1日、条文原文で確認) - 国税庁「第151条の2関係 申請による換価の猶予の要件等」 https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/chosyu/06/01/151_2/01.htm(2026年9月1日確認) - 国税庁「国税の納税の猶予制度FAQ」(令和6年11月) https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/nofu_konnan/pdf/0021001-141_05.pdf(2026年9月1日確認) - 財務省「延滞税の割合」 https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/tins/n04_5.pdf(2026年9月1日確認) - 地方税法15条・15条の5・15条の6(徴収猶予・換価の猶予)(2026年9月1日、法令データベースで確認) - 国税通則法63条(納税の猶予等の場合の延滞税の免除)、租税特別措置法94条2項(延滞税の割合の特例) 国税庁「第8章 第1節 猶予をした場合における延滞税の免除」 https://www.nta.go.jp/law/jimu-unei/tyousyu/150302/08/01.htm(2026年9月1日、条文および法令データベースの解説で確認。国税庁ページ本体は文字コードの都合で自動取得できず、条文原文と税務研究会法令データベースの解説で内容を突き合わせ)