創業計画書の書き方
- 創業計画書で審査に直結するのは「必要な資金と調達方法」「事業の見通し(月平均)」の2項目で、金額そのものより「その数字に至った根拠」が見られる
- 設備資金は見積書、運転資金と売上高は「単価×数量×稼働日数」のような分解式で裏付けるのが基本の型
- 公庫は「売上高等の計算方法について」という参考資料と「創業計画書セルフチェックリスト」を公式に用意しており(存在は確認・中身は今回の手段では未確認)、思いつきの数字ではなく計算過程を残すことが最初の一歩になる
この記事の内容
この記事は、日本政策金融公庫の創業融資に申し込むために創業計画書を書いていて、「売上はいくらと書けばいいのか」「この金額で説得力があるのか」で手が止まっている方に向けて書いています。 結論から言うと、創業計画書で審査に直結するのは「必要な資金と調達方法」「事業の見通し(月平均)」の2項目で、ここで見られているのは金額の大小そのものより「その数字がどう計算されたか」です。この記事では、数字の根拠をどう組み立てるかに絞って整理します。
- 売上見込みの欄に、何を根拠に数字を入れればいいか分からない
- 「希望的な数字」を書いている自覚があり、面談で突っ込まれるのが怖い
- 設備資金・運転資金の内訳を、どこまで細かく書けばいいか分からない
結論:金額より先に「計算式」を決める
創業計画書には「必要な資金と調達方法」と「事業の見通し(月平均)」という、どちらも金額を記入する欄があります。この2つの欄で審査担当者が見ているのは、記入された金額そのものの大小より、その金額がどんな計算式・見積もりから導かれたかだと、複数の創業融資支援サイトの解説で共通して説明されています【一次情報なし:公庫の公式ページに「何を根拠として重視するか」を明文化した記載はなく、複数の解説記事の記載が一致している段階です】。
つまり、「月商50万円」と書く前に、その50万円が「客単価いくら×客数いくら×営業日数いくら」のような式から出てきたのかを、自分の手元で先に作っておく必要があります。この記事では、その式の作り方を、設備資金・運転資金・売上高の3つに分けて整理します。
根拠のない数字を書くこと自体は、珍しい失敗ではない
「なんとなくこれくらい」で数字を先に書いてしまい、あとから根拠を後付けしようとして手が止まる、というのはよくある順番の間違いです。責められることではなく、順番を「数字が先、根拠があと」から「根拠が先、数字はその結果」に入れ替えれば直る種類のつまずきです。
創業前は実績が少なく、数字を正確に見積もること自体が難しいのは自然なことです。分からない部分を無理に埋めるより、「今の時点でここまでは根拠がある、ここから先は仮定である」と切り分けて書くほうが、結果として説得力のある計画書になります。心身に不調が出るほど資金計画に追い詰められている場合は、この記事の情報より先に、医師や産業医への相談を優先してください。
数字が問われるのは「必要な資金と調達方法」と「事業の見通し」の2項目
日本政策金融公庫の創業計画書(様式)は、「創業の動機」「経営者の略歴等」「取扱商品・サービス」「従業員」「取引先・取引関係等」「関連企業」「お借入の状況」「必要な資金と調達方法」「事業の見通し(月平均)」「自由記述欄」の10項目で構成されています(様式PDFで確認済み。https://www.jfc.go.jp/n/service/pdf/kaigyou00_190507b.pdf、2026年9月1日確認)。このうち、具体的な金額の記入と根拠の説明が中心になるのは「必要な資金と調達方法」と「事業の見通し(月平均)」の2項目です。
| 項目 | 記入する内容 | 根拠として求められるもの |
|---|---|---|
| 必要な資金と調達方法 | 設備資金・運転資金の金額と、自己資金・借入等の調達方法の内訳 | 設備資金は見積書(様式に「見積先」の記入欄あり)、運転資金は月あたりの支出額×必要な月数(複数の解説記事の記載による) |
| 事業の見通し(月平均) | 創業当初と1年後(軌道に乗った後)の売上高・売上原価・経費・利益の月平均額 | 単価・数量・稼働日数などに分解した計算式(業種別に4パターンを公庫が例示)、または同業他社の実績値 |
他の8項目(創業の動機・経営者の略歴等・取扱商品やサービス・従業員・取引先や取引関係等・関連企業・お借入れの状況・自由記述欄)は、文章や経歴で説明する項目が中心で、金額の計算根拠を問われる度合いは相対的に低くなります。数字づくりに時間を割くなら、まずこの2項目に集中するのが効率的です。
必要な資金の根拠:設備資金は見積書、運転資金は月数で説明する
設備資金は、店舗の内装費・厨房機器・パソコンなど、開業時に一度だけ購入するものが対象です。様式の「必要な資金と調達方法」欄には、設備資金の項目ごとに「見積先」を書き込む欄が用意されており(様式PDFで確認済み)、公庫が公式に配布している「創業計画書セルフチェックリスト」にも「見積金額が適切か、相場を調べたり、相見積もりを取得するなどして、検証していますか?」というチェック項目があります(https://www.jfc.go.jp/n/finance/sougyou/pdf/sougyou_selfchecklist_2023.pdf、2026年9月1日確認)。つまり見積書そのものは様式上の必須提出物ではありませんが、金額の根拠として見積もりを取っておくことが公庫側から明確に求められています。見積もりの取得先が確定していない段階でも、内装業者や機器メーカーから概算の見積もりを取っておくと、金額の裏付けとして使えます。
運転資金は、仕入代金・家賃・人件費・水道光熱費など、開業後も毎月かかる費用が対象です。運転資金の根拠として複数の解説記事が挙げているのは、「月あたりの支出額を積み上げたうえで、それに何か月分を掛けるか」という考え方です【一次情報なし:公庫の公式ページにこの計算式そのものを明文化した記載はありません】。たとえば「月の固定費が30万円で、売上が軌道に乗るまでの3か月分を運転資金として見込む」という形であれば、30万円×3か月=90万円という金額の出どころを説明できます。前述の「創業計画書セルフチェックリスト」には「事業開始後の運転資金(半年程度の赤字補てん資金など)について検討していますか?」という項目があり、公庫側は目安の一つとして「半年程度」を例示しています。ただしこれも「など」を含む例示であり絶対の基準ではないため、根拠なく「とりあえず半年分」とするより、自分の事業で売上が立ち上がるまでの見込み期間から逆算するほうが、説明の一貫性が保てます。
調達方法の欄では、必要な資金の合計額に対して、自己資金でいくら・借入でいくら賄うかを記入します。ここは金額の内訳が「必要な資金の合計」と一致している必要があり、内訳の合計と総額がずれていると、その時点で計画の精度を疑われかねません。記入後に一度、電卓で合計を検算しておくことをおすすめします。
事業の見通しの根拠:売上高を「単価×数量×日数」に分解する
「事業の見通し(月平均)」欄でもっとも根拠を問われやすいのが売上高です。公庫が公式に配布している「売上高等の計算方法について」という参考資料には、業種の特性に応じた4パターンの計算式が示されています(https://www.jfc.go.jp/n/service/pdf/kaigyourei08_121115.pdf、2026年9月1日確認)。
| 業種の特性 | 算式 | 該当業種の例 |
|---|---|---|
| 設備が直接売上に結びつく | 設備の生産能力×設備数 | 部品製造業、印刷業、運送業 |
| 店舗売りのウェイトが大きい | 1㎡(または1坪)当たりの売上高×売場面積 | コンビニエンスストアなど |
| 飲食・理美容などサービス業 | 客単価×設備単位数(席数)×回転数×稼働日数 | 飲食店営業、理容業、美容業 |
| 労働集約的な業種 | 従業者1人当たり売上高×従業者数 | 自動車販売業、化粧品販売業、ビル清掃業 |
たとえば理髪店の例では「客単価3,950円×椅子2台×回転数4.5回転×月25日稼動=88万円」という形で計算されています(同資料より)。この資料には、店舗販売業以外の物販業(小売業)そのものを対象にした算式は示されていません。物販業の売上を「商品の平均単価×1か月あたりの平均販売数」のように分解する考え方は、公庫の一次資料ではなく解説記事側の記載です(創業融資ガイド「物販向けの創業計画書の記入例と書き方を解説」https://jfc-guide.com/financing-guide/20987/、2026年9月1日確認)。自分の業種がどのパターンに近いかを確認したうえで、当てはまらない場合は、公式の算式を参考にしつつ自分の業態に合わせて分解するとよいでしょう。
ここで重要なのは式の形そのものより、それぞれの数字の出どころを説明できるかという点です。「客単価3,000円」であれば、それが自分の商品構成から積み上げた金額なのか、近隣の同業店舗の相場を参考にした金額なのかを言えるようにしておきます。前述の参考資料は、同業他社の実績値の調べ方として「小企業の経営指標」(日本政策金融公庫総合研究所編)という統計を明示しており、1㎡当たりの売上高や従業者1人当たりの売上高はここから調べられるとされています。同業他社の実績値や業界の統計を根拠にする場合は、その出典(どの調査・どの統計か)まで示せると、説明の裏付けが強くなります。
複数の解説記事が共通して指摘しているのは、「個人的な期待や経験だけを根拠にした売上高は、楽観的な見積もりになりやすく、審査担当者にそう受け取られやすい」という点です【一次情報なし:公庫が実際にどこまでこの観点で審査しているかを示す一次資料はありません】。ただし前述の参考資料にも「業界平均に地域事情などを考慮するなどして多角的に売上高を予測することが大切」という記載があり、単一の期待値だけに頼らない予測が推奨されている点は一次資料からも読み取れます。「絶対にこれだけ売れる」という書き方は避け、根拠となった数字(単価・客数・営業日数など)を並べたうえで、その積み上げとして売上高を示す書き方のほうが、計画としての一貫性を示しやすいといえます。
公庫が公式に用意している2つの参考資料
日本政策金融公庫の創業計画書のダウンロードページには、様式そのものや業種別の記入例(8業種:洋風居酒屋・美容業・中古自動車販売業・婦人服や子供服の小売業・ソフトウェア開発業・内装工事業・学習塾・歯科診療所)に加えて、「売上高等の計算方法について」という参考資料と「創業計画書セルフチェックリスト」という2つの補助資料がリンクされています(2026年9月1日、公式ダウンロードページで確認)。
「売上高等の計算方法について」は本文の中身を確認済みで、前述の業種別4パターンの算式のほか、支払利息の計算方法(借入金残高×金利(年利)÷12か月)、売上原価の考え方(一般的には売上高×原価率)、人件費の扱い(個人営業の場合、経費の人件費に事業主分は含めないが家族分は含める)まで解説されています。「創業計画書セルフチェックリスト」も中身を確認済みで、「創業の動機」から「事業の見通し」まで各項目のチェック観点が15項目にまとめられており、そのうち「必要な資金」の項目には「見積金額が適切か、相場を調べたり、相見積もりを取得するなどして、検証していますか?」というチェックがあります。申込みを検討している場合は、この記事の整理を参考にしつつ、必ず公庫のダウンロードページから最新の参考資料そのものを確認してください。同様に、業種別の記入例(自分の業種に近いもの)を1つ見ておくと、数字の分解の仕方の実例として参考になります。
やってはいけない数字の作り方
- 売上高を先に「これくらい欲しい」という希望額で決めて、あとから単価や客数を逆算でこじつける
- 設備資金の見積もりを取らずに、相場感だけで金額を記入する
- 必要な資金の内訳の合計と、調達方法の内訳の合計が一致しているか検算しない
- 運転資金の「何か月分見込むか」に根拠がなく、他の記入例をそのまま真似た月数を使う
- 同業他社の実績値を根拠にする際、その出典(どの調査・統計か)を自分で説明できない状態にしておく
実体験:管理部門を統括する立場から見ていた「数字の作り方」
正直に書きます。私自身はまだ独立準備の段階で、日本政策金融公庫に創業計画書を提出した経験はありません。前職では執行役員として管理部門を統括する立場にいたため、この記事は「融資を申し込む側」の体験ではなく、「社内の予算・見込み数字を確認する側」として見てきた事実に基づいています。
新規事業の売上見込みを稟議で確認する際、いちばん差し戻しになりやすかったのは「単価×件数」のような分解ができておらず、月商の総額だけが一行で書かれている計画でした。逆に、単価の根拠(過去の類似案件の実績、または競合の価格帯)、件数の根拠(既存の見込み客リストの人数、または過去の問い合わせ転換率)まで分解されている計画は、数字自体が保守的でも通りやすい傾向がありました。見られているのは数字の大きさではなく、その数字をどこまで分解して説明できるかだった、というのが管理部門側から見ていた実感です。公庫の創業計画書についても、この記事で紹介した「単価×数量×稼働日数」という分解の考え方は、社内稟議で求められていたものと近いと感じています。
次にやること
まず、「事業の見通し(月平均)」欄の売上高を、単価・数量・稼働日数など2〜3個の数字に分解し、それぞれの数字の出どころを1行で書き出してください。 出どころが「自分の期待」しかない数字があれば、同業他社の実績や業界統計など、外部の根拠に置き換えられないかを確認します。設備資金については、金額を確定させる前に見積もりを取り、運転資金については「月あたりの支出額×何か月分」という形で説明できるようにしておいてください。それができたら、公庫の公式ダウンロードページで「売上高等の計算方法について」と「創業計画書セルフチェックリスト」を実際に開き、自分の数字と照らし合わせることをおすすめします。
※本記事は2026年9月時点の調査に基づく情報整理です。創業計画書の様式・項目構成、「売上高等の計算方法について」「創業計画書セルフチェックリスト」の本文は、いずれも公庫の公式PDFを直接確認したうえで整理しています。ただし「審査担当者が実際にどこまで根拠の有無を重視するか」という審査運用の内側までは公式に明文化されておらず、その部分は複数の解説記事の記載に基づくものとして、本文中にと明記しています(審査運用の内側は公庫が公表していない情報です)。個別の資金計画・数字の作り方については、公庫の公式資料および税理士・中小企業診断士など専門家にご確認ください。
出典 - 日本政策金融公庫「創業計画書」ダウンロードページ(様式・業種別記入例8種・「売上高等の計算方法について」「創業計画書セルフチェックリスト」の存在) https://www.jfc.go.jp/n/service/dl_kokumin.html(2026年9月1日確認) - 日本政策金融公庫「創業計画書」様式PDF(10項目の構成) https://www.jfc.go.jp/n/service/pdf/kaigyou00_190507b.pdf(2026年9月1日、本文を直接確認) - 日本政策金融公庫「売上高等の計算方法について」 https://www.jfc.go.jp/n/service/pdf/kaigyourei08_121115.pdf(2026年9月1日、本文を直接確認。業種別4パターンの算式・支払利息の計算式・売上原価の考え方・人件費の扱いを参照) - 日本政策金融公庫「創業計画書セルフチェックリスト」 https://www.jfc.go.jp/n/finance/sougyou/pdf/sougyou_selfchecklist_2023.pdf(2026年9月1日、本文を直接確認。見積もり検証・運転資金(半年程度)のチェック項目を参照) - マネーフォワード クラウド会社設立「日本政策金融公庫の創業計画書とは?書き方を注意点とあわせて解説」 https://biz.moneyforward.com/establish/basic/77134/(2026年9月1日、本文を直接確認。設備資金の見積書、調達方法の内訳一致の記載を参照) - 創業融資ガイド「日本政策金融公庫の創業計画書の書き方と記入例を解説」 https://jfc-guide.com/financing-guide/16950/(2026年9月1日、本文を直接確認。売上高の分解式(客単価×席数×回転数×稼働日数)の記載を参照) - 創業融資ガイド「物販向けの創業計画書の記入例と書き方を解説」 https://jfc-guide.com/financing-guide/20987/(2026年9月1日、本文を直接確認。物販業の売上分解式(商品の平均単価×1か月あたりの平均販売数)の記載を参照。公庫の一次資料には無い記載のため区別して引用) - 創業融資代行サポート(コマサポ)「創業計画書の運転資金は何か月分?計算方法と日本政策金融公庫の記入例を徹底解説」 https://www.sogyo-support.biz/sogyo-yushi/untensikin/(2026年9月1日、本文を直接確認。運転資金=1か月の経費合計×必要な月数、目安3〜6か月の記載を参照、一次確認未了) - 実体験部分は運営者本人が前職(執行役員・管理部門統括)で見てきた事実に基づく