資金繰り表の作り方
- 月次資金繰り表は3〜6ヶ月先の見通しを立てる表、日繰り表は毎日の入出金を1日単位で管理する表で、見ている粒度がそもそも違う
- 月次では黒字に見える月でも、月の途中で入金より支払いが先に来ると一時的に資金がマイナスになることがあり、これは月次表では見えず日繰り表でしか発見できない
- 資金繰りが安定している間は月次表で十分だが、支払いが数日後に迫っている・資金繰りが読めなくなってきたと感じたら日繰り表に切り替える
この記事の内容
この記事は、月次の資金繰り表を作っているのに「今月は大丈夫」と思っていた月の途中で支払いに詰まりかけた事業者に向けて書いています。 結論から言うと、資金繰り表には「月次」と「日繰り(日次)」の2種類があり、見ている粒度がそもそも違います。月次表は3〜6ヶ月先までの見通しを立てるための表、日繰り表は毎日の入出金を1日単位で管理するための表です。月次表だけを見ていると、月末の残高はプラスでも、月の途中で一時的にマイナスになる日を見落とすことがあります。
- 月次の資金繰り表は作っているが、月の途中で急に支払いに詰まりそうになった
- 「日繰り表」という言葉を聞いたことはあるが、月次表と何が違うのか分からない
- 資金繰りが厳しくなってきて、月1回の確認では間に合わない気がしている
結論:見ている「粒度」が違う2種類の表
資金繰り表には主に2種類あります。1つは月単位で数ヶ月先までの現金残高の推移を見る「月次資金繰り表」、もう1つは1日単位で入出金を見る「日繰り表(日次資金繰り表)」です。この2つは対立するものではなく、役割が違うという理解が正確です。
月次表は「この先どの月が危ないか」という大きな流れをつかむための表で、日繰り表は「今週・来週、実際にどの日にお金が足りなくなるか」を秒単位ならぬ日単位で見るための表です。月次表を作っただけで満足せず、資金繰りが厳しくなってきたと感じたタイミングで日繰り表に切り替えられるかどうかが、資金ショートを防げるかの分かれ目になります。
まず、月次表を作っているだけで一歩進んでいるという事実
「月次表を作っていたのに詰まりかけた」ことを責める必要はありません。月次表は本来、月の途中の凹凸まで見るための道具ではありません。 見えなかったのは表の作り方が悪かったからではなく、月次表の役割の範囲を超えた場面に直面しただけです。
心身に不調が出るほど資金繰りに追い詰められている場合は、この記事の情報より先に、医師や産業医への相談を優先してください。ここから先は、2種類の表の使い分けという手段の整理です。
月次資金繰り表とは何か
月次資金繰り表は、月ごとの「収入合計・支出合計・残高」を並べ、3〜6ヶ月先までの現金の推移を見る表です。J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト]は、過去の資金繰り実績を基に「3〜6か月先の資金状況を予見できる資金繰り表を作成してみるとよい」としています(2026年9月1日、公式ページで確認)。「前月末残高+当月収入合計-当月支出合計」で当月末残高を出し、それを翌月に繰り越していく作り方は、一人社長・個人事業主であれば3列の簡易フォーマットで足ります。作り方の具体的な手順と3ヶ月分の記入例は、別記事(資金繰り表の作り方|一人社長は3列で足りる)で詳しく整理しています。
月次表の強みは、数ヶ月先まで見通せることです。消費税の中間申告や所得税の予定納税のように「たまにしか来ないが金額が大きい」支出も、月単位で並べておけば事前に気づけます。一方で弱みは、月の中でお金がどう動くかまでは見えないことです。月初に大きな支払いがあり、月末近くにまとまった入金があるような会社では、月末残高だけを見ると黒字でも、月の途中で一時的に現金が底をつくことがあります。
日繰り表(日次資金繰り表)とは何か
日繰り表は、1日単位で「前日残高・入金・出金・当日残高」を積み上げていく表です。月次表が「月」を単位にするのに対し、日繰り表は「日」を単位にします。マネーフォワード クラウド会計の解説記事は、日繰り表(日次資金繰り表)について「勘定科目や現金回収などの項目を日々の取引ごとで把握することを目的に作成する書類」と説明し、作成することで将来の資金の流れをある程度予測できるようになり、「資金ショートを未然に防ぎやすくなります」としています(2026年9月1日、公式ページで確認)。
日繰り表が本領を発揮するのは、支払日が入金日より先に来るケースです。たとえば、月の前半に外注費や仕入代金の支払いが集中し、月の後半にまとまった売上入金がある場合、月次表の月末残高はプラスでも、月の前半だけを見ると現金がマイナスになる日が存在することがあります。月次表ではこの月中の凹凸は表示されないため、日繰り表を作って初めて「何日にいくら足りなくなるか」が具体的に見えます。
比較表:月次資金繰り表と日繰り表
| 項目 | 月次資金繰り表 | 日繰り表(日次資金繰り表) |
|---|---|---|
| 見る単位 | 月 | 日 |
| 見通せる期間 | 3〜6ヶ月先 | 数日〜1ヶ月程度 |
| 主な用途 | 融資の申込書類、中長期の見通し | 目先の支払いに間に合うかの確認 |
| 更新の頻度 | 月1回 | 毎日、または数日おき |
| 向いている場面 | 資金繰りが比較的安定している | 支払いが数日後に迫っている、資金繰りが読めなくなってきた |
| 弱点 | 月の中の凹凸が見えない | 数ヶ月先までの見通しには向かない |
どちらを使うべきか:判断の分かれ目
資金繰りが安定して回っている間は、月次表だけで十分です。 毎日1日単位で数字を追う必要はありません。日繰り表への切り替えを検討すべきなのは、次のような兆候が出てきたときです。
- 月次表の残高はプラスなのに、実際の口座残高がヒヤヒヤする月が増えてきた
- 支払日と入金日の間隔が、月をまたぐほど開いている取引先がある
- 数日後に控えている支払いに、今の手元資金で足りるか自信が持てない
- 銀行やファクタリング会社など、外部からの資金調達を検討し始めている
これらに1つでも当てはまる場合は、月次表と並行して、直近1〜2週間分だけでも日繰り表を作ることを勧めます。数ヶ月分をいきなり日単位で作る必要はなく、資金が心配な期間だけに絞って作れば十分です。
日繰り表の作り方
- 現時点の現金残高を確認する:事業用口座の残高と、手元にある現金の合計を、作り始める日の時点で確定させます。
- 確定している入金予定日と金額を日付ごとに書き出す:請求書の入金予定日など、金額と日付が確定しているものから埋めます。
- 確定している支払予定日と金額を日付ごとに書き出す:家賃・仕入・外注費・借入金の返済・税金の支払いなど、日付が決まっているものを漏れなく並べます。
- 前日残高に当日の入金を足し、当日の支出を引いて当日残高を出す:これを対象期間の最終日まで積み上げます。1日でもマイナスになる日が出たら、その日が資金ショートの候補日です。
月次表の「向こう3ヶ月の入金・支出予定を洗い出す」というステップ(別記事018を参照)で使った数字を、日付単位に分解し直すだけなので、月次表を先に作っている場合はゼロから作り直す必要はありません。
エクセルで作るときのポイント
日繰り表をエクセル(表計算ソフト)で作る場合、行に日付を1日ずつ並べ、列に「前日残高・入金・出金・当日残高」を置く形が一般的です。「当日残高」の列には、前の行の当日残高を参照する数式(前日残高+当日入金-当日出金)を入れておけば、途中の1日分を修正しても、それ以降の残高が自動で再計算されます。
日本政策金融公庫は、公式サイトの書式ダウンロードページで資金繰り表の様式(簡易版・詳細版)を公開しています(2026年9月1日、公式ページで確認)。中小企業庁も「中小企業の会計」の中で資金繰り表の様式例を示しています(2026年9月1日、公式ページで確認)。いずれも月次表を主眼にした様式ですが、列の構成(前月末残高・収入・支出・当月末残高)を「月」から「日」に読み替えれば、そのまま日繰り表の土台として使えます。ゼロから項目を考えるより、既存の様式を流用するほうが早く着手できます。
実体験:管理部門を統括した立場から見た「月次では見えなかったもの」
正直に書きます。私自身が一人社長として日繰り表を作った経験はまだありません。前職では執行役員として管理部門を統括する立場にいたため、この記事は経理担当者が作成した月次資金繰り表を毎月確認していた側の経験に基づいて書いています。
月次の残高だけを見ていると「今月は問題なさそうだ」と判断してしまう場面が実際にありました。しかし取引先ごとの支払いサイトと入金サイトを日付単位で並べ直すと、月の前半に支払いが集中し、まとまった入金は月の後半という構造になっている月があり、月次の数字だけでは見えない「月中のヒヤリとする数日間」が存在することに気づかされました。資金繰りに余裕があるうちは月次表だけで判断が回りますが、支払いが近づいてから慌てて日単位に分解するのではなく、余裕があるうちに一度、日付単位でお金の動きを並べ直しておくと、いざというときの判断が早くなります。
次にやること
まず、直近2週間分の入金予定と支払予定を、日付ごとに1行ずつ書き出してください。 前日残高に入金を足し支払いを引いて当日残高を出す作業を最終日まで積み上げれば、それだけで簡易的な日繰り表になります。マイナスになる日が1日でも見えたら、その日が来る前に入金を早める交渉や支払いの調整に動き出してください。
※本記事は2026年9月時点の一般的な整理に基づく情報です。個別の資金繰りの判断については、顧問税理士など専門家にご相談ください。
出典 - 中小企業庁「中小企業の会計 ツール集(平成21年度指針改正対応版)」内、資金繰り表の様式例(出典、2026年9月1日確認) - 日本政策金融公庫「各種書式ダウンロード(中小企業の方)」内、資金繰り表(簡易版・詳細版)(出典、2026年9月1日確認) - マネーフォワード クラウド会計「日繰り表で日次の資金管理をするには?テンプレをもとに作り方を解説」(出典、2026年9月1日確認) - J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト]「資金繰り表を活用する」(出典、2026年9月1日確認)