小さな会社の資金繰りガイド 苦しくなる前の備えから、危機のときの順番まで
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月末の支払いが足りないとき、今日からできる順番

この記事の結論
  • 支払いが足りないと分かった日にまずやるべきは資金調達の申込みではなく「何にいつまでいくら払うか」の棚卸しと優先順位付け
  • 優先順位は金額の大きさではなく止まったときの被害の大きさ(取引停止・信用毀損)で決める
  • 複数の業者に同時に審査を申し込むと信用情報に響く場合があり、順番を守らないと選択肢そのものが狭まる
この記事の内容
  1. 結論:今日やるのは調達より先に「棚卸しと優先順位」
  2. なぜ手当たり次第に動くと状況が悪化するのか
  3. 今日中にやる3つのチェック
  4. 比較表:支払い手段別の対応速度とリスク
  5. 絶対にやってはいけない2つのこと
  6. それでも間に合わないときの連絡の仕方
  7. 実体験:優先順位を金額でなく「止まったときの被害」で決めていた
  8. 次にやること

この記事は、月末が近づいているのに支払いに充てる現金が足りないと気づいた小規模事業者・一人社長に向けて書いています。 結論から言うと、この状況で最初にやるべきことは資金調達の申込みではなく、「何に・いつまでに・いくら払う必要があるか」を今日中に洗い出し、止まったときの被害が大きいものから順に手を打つことです。焦って複数の手段に同時に手を出すと、かえって選択肢を狭めてしまう場合があります。

こんな状態ではありませんか
  • 月末の支払いに現金が足りないと気づいたが、何から手をつけていいか分からない
  • とりあえず色々な業者に同時に申し込めば、どれかは間に合うだろうと思っている
  • 取引先への連絡を後回しにして、ぎりぎりまで自分でなんとかしようとしてしまう

結論:今日やるのは調達より先に「棚卸しと優先順位」

月末の支払いに現金が足りないと分かったとき、多くの人が最初にファクタリングやビジネスローンの申込みに動きます。しかし本当に最初にやるべきなのは、「今月・来月にいつ・誰に・いくら払う必要があるか」を全部書き出し、その中で止まったときの被害が大きいものから優先順位をつける作業です。

被害の大きさは金額の大小だけでは決まりません。金額が小さくても取引が止まる支払い(仕入先への買掛金など)は優先度が高く、金額が大きくても分割や猶予の相談余地がある支払い(税金・社会保険料など)は、資金調達より先に相談という選択肢が残っています。この順番を先に決めてから、足りない差額をどう埋めるかを考えるほうが、結果として選べる手段が多く残ります。

なぜ手当たり次第に動くと状況が悪化するのか

支払いが足りないと分かった瞬間に、複数のファクタリング業者やビジネスローンに同時に申し込んでしまうケースがあります。気持ちは理解できますが、これにはいくつかの落とし穴があります。

まず、審査には時間と手間がかかるため、同時に何社も対応すると必要書類の準備が分散し、結局どこも間に合わないという事態が起こりえます。また業者によっては、短期間に複数の申込み履歴があることを審査上マイナスに見る場合があるとされています(金融庁・消費者庁など公的機関がこの点を統一的に案内した資料は見当たらず、複数のファクタリング専門メディアの解説に共通する説明です)。さらに、「今日中に絶対に現金化できる」「審査なしで必ず通る」といった言葉を強調する業者ほど、手数料が不透明だったり、償還請求権(支払いが滞った場合に自社に返済義務が戻ってくる契約条件)の説明が曖昧だったりする傾向があるとされており、悪質業者の見分け方は別記事で詳しく扱っています。

焦っているときほど、一度立ち止まって優先順位を決めることが、結果的に一番早い解決につながります。

今日中にやる3つのチェック

ここが要点

順番を間違えないために、今日中に次の3つを確認してください。①今月・来月の支払い予定を全部書き出す ②それぞれ「止まったときの被害」で優先順位をつける ③一番優先度が高い支払いについて、期日までにいくら足りないかを確定させる。この3つが終わってから、埋め方を検討します。

1つ目は、今月・来月に発生する支払いをすべて書き出すことです。家賃・仕入代金・外注費・給与・税金・社会保険料・借入の返済など、漏れなく一覧にします。

2つ目は、それぞれの支払いが遅れた場合に何が起きるかを整理し、優先順位をつけることです。給与の遅配は従業員との信頼関係に直結し、仕入先への支払い遅延は今後の取引条件に影響します。一方で税金・社会保険料は、後述するとおり分割や猶予の相談窓口が用意されている場合があります。

3つ目は、一番優先度の高い支払いについて、期日までに実際いくら不足するのかを金額で確定させることです。「なんとなく足りない」ではなく「◯月◯日までに◯万円」まで具体化して、初めて埋め方の検討に進めます。資金繰り表を使ってこの棚卸しをする方法は、別記事(資金繰り表の作り方)で扱っています。

比較表:支払い手段別の対応速度とリスク

手段 対応速度の目安 主なリスク・注意点
取引先・仕入先への支払い猶予の相談 即日〜数日 今後の取引条件に影響する可能性がある。早い相談ほど選択肢が残るとされる
税金・社会保険料の猶予制度への相談 相談自体は即日可能 猶予が認められるかは審査次第。放置すると差押えの対象になり得る(差押えの要件は国税徴収法47条)
ファクタリング(2社間) 最短即日〜数日とされる 手数料が発生し、繰り返すと手元に残る現金が目減りしていく
ビジネスローン(ノンバンク) 数日程度とされる 融資であり返済義務が発生する。金利水準は業者による
銀行融資・信用保証協会付き制度融資 数週間〜1か月程度とされる 審査に時間がかかり、月末の緊急対応には間に合いにくい

※2026年8月時点の調査。対応速度のうち日本政策金融公庫は「ご融資が決まるまでの平均所要日数は2週間程度」と公式に案内していますが、信用保証協会付き制度融資やファクタリング各社の対応日数を統一して定めた公的な基準資料は見当たりませんでした。上表の速度は業者・専門家の解説に共通する目安です。

絶対にやってはいけない2つのこと

1つ目は、給与ファクタリング(従業員個人の給料を担保にした個人向けの現金化)を事業の資金繰りに使うことです。これは事業者向けのファクタリングとは別物で、金融庁は「業として、個人(労働者)が使用者に対して有する賃金債権を買い取って金銭を交付し、当該個人を通じて当該債権に係る資金の回収を行うことは、貸金業に該当する」として注意を呼びかけています(金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」)。事業の資金繰りには使わないでください。

2つ目は、支払いが止まりそうな相手への連絡を先延ばしにすることです。連絡が遅れるほど相手の心証は悪くなり、次回以降の取引条件が厳しくなる可能性があります。間に合わないと分かった時点で、できるだけ早く連絡することが、結果的に関係を守ります。

それでも間に合わないときの連絡の仕方

優先順位をつけ、埋め方を検討してもなお不足が残る場合は、支払い期日より前に相手へ連絡することが基本です。伝える内容は「いつまでに」「いくら」「なぜ遅れるか」「いつなら支払えるか」の4点で、あいまいな謝罪だけで終わらせないことが重要です。交渉の具体的な進め方は、支払いを待ってもらう交渉の仕方の記事で扱っています。

税金・社会保険料については、税務署や年金事務所の徴収担当窓口に早めに相談すれば、納税の猶予(国税通則法46条)や換価の猶予(国税徴収法151条・151条の2)といった制度の対象になる場合があります。滞納したまま資金調達だけを進めても、滞納そのものへの対処にはならない点に注意してください。

実体験:優先順位を金額でなく「止まったときの被害」で決めていた

私の場合

前職で執行役員として管理部門を統括していたとき、月末の支払いが一時的にひっ迫した場面が何度かありました。そのときに現場で優先していたのは、金額の大きさではなく「止まったときに何が壊れるか」でした。

例えば、金額としては税金のほうが大きくても、税務署には分割相談の窓口があるため優先度を下げ、金額は小さくても継続的に付き合いのある仕入先への支払いを優先する、という判断をしていました。全部を同時に何とかしようとするのではなく、先に一覧にして順位をつけたことで、どこに資金を回し、どこを相談で待ってもらうかの判断がぶれずに済んだという実感があります。

次にやること

まず今日中に、今月・来月の支払いを全部書き出し、「止まったときの被害」で優先順位をつけてください。 そのうえで、一番優先度の高い支払いについて期日までの不足額を確定させ、埋め方(交渉・猶予相談・ファクタリングなど)を検討する順に進めてください。複数の業者へ同時に申し込む前に、この棚卸しを済ませることが、結果的に一番早く状況を安定させます。

ラボル


※本記事は2026年8月時点の調査に基づく情報整理です。条文は国税庁・金融庁の公式資料で確認済みです。タグを付けた記述(業者の審査傾向・比較表の対応速度)は、公的機関・運営元による統一した公式資料が見当たらなかったため、複数の専門メディア解説に共通する目安として記載しています。個別の資金繰り・支払いの判断については、税理士・税務署・各金融機関の公式情報をご自身でご確認ください。

出典 - 納税の猶予: 国税通則法46条(国税庁「法令解釈通達」第46条関係 https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/tsusoku/04/01/46.htm で確認) - 換価の猶予: 国税徴収法151条・151条の2(国税庁「法令解釈通達」第151条関係・第151条の2関係で確認) - 差押えの要件: 国税徴収法47条(国税庁「法令解釈通達」第47条関係 https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/chosyu/05/01/01/047/01.htm で確認) - 給与ファクタリングに関する金融庁の注意喚起: 金融庁公式サイト「ファクタリングの利用に関する注意喚起」(https://www.fsa.go.jp/user/factoring.html)、「給与の買取りをうたった違法なヤミ金融にご注意ください!」(https://www.fsa.go.jp/ordinary/chuui/kinyu_chuui2.html)で確認 - ファクタリングの複数申込みが審査に与える影響、および比較表の対応速度は、公的機関・運営元の統一した公式資料が見当たらず、複数の専門メディア解説に共通する目安

当サイト運営者

執行役員として、会社の管理部門を統括していました

執行役員として6年、会社の管理部門を統括する立場にいました。資金繰りの意思決定を経営の側から見てきた経験をもとに書いています。このサイトで紹介するのは手数料の上限を公式に明記している業者だけです。「審査なし」「誰でも通る」を売りにする業者は、載せません。

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