2社間と3社間ファクタリングの違い
- 2社間ファクタリングは利用者とファクタリング会社の2者、3社間はそこに取引先(売掛先)が加わる3者で契約する仕組み
- 違いを生むのは「取引先が契約に関与するかどうか」で、これがファクタリング会社の回収リスクの大きさを左右する
- 手数料相場は2社間8〜20%程度・3社間1〜9%程度とされる(複数の解説記事が一致・公式統計はなし)
- 同じ売掛金でも数万〜十数万円の手取り差が出るため、金額で比較してから選ぶ
この記事の内容
この記事は、ファクタリングの見積もりや業者の説明で「2社間」「3社間」という言葉が出てきたものの、何がどう違うのか、なぜ手数料の桁が変わるのかが分からず不安な小規模事業者・一人社長に向けて書いています。 結論から言うと、2社間ファクタリングは利用者とファクタリング会社の2者だけで契約が完結する形態、3社間はそこに取引先(売掛先)も加わり3者で契約する形態です。この「取引先が関与するかどうか」の違いが、そのままファクタリング会社が負うリスクの大きさに直結し、手数料の差になって表れます。
- 「2社間」「3社間」という言葉の意味が分からないまま見積もりを見ている
- 同じ売掛金なのに業者によって手数料が数倍違い、何が正しいのか判断できない
- 取引先に知られたくないが、手数料はできるだけ抑えたい。両方は無理なのか知りたい
結論:関与するのが2者か3者かで、負うリスクが変わる
ファクタリングは、まだ入金されていない売掛金(請求書)をファクタリング会社に買い取ってもらい、早期に現金化する仕組みです。融資ではなく「債権の譲渡」であるため、借入とは法的な性質が異なります(民法466条:債権の譲渡性)。
この債権譲渡に、取引先(売掛先)が関わるかどうかで名前が分かれます。
- 2社間ファクタリング:利用者とファクタリング会社の2者だけで契約する。取引先には知られない
- 3社間ファクタリング:利用者・ファクタリング会社・取引先の3者で契約する。取引先の承諾が前提になる
取引先が関与しない2社間は、ファクタリング会社にとって「取引先が本当に支払ってくれるか」を直接確認できない取引になります。この確認できないリスクの分だけ、手数料が上乗せされる、というのが差が生まれる理由の骨格です。
まず、言葉の意味が分からないまま契約しかけるのは危険信号ではない
「2社間」「3社間」という言葉は、日常でまず使う機会がありません。見積書や営業担当者の説明で初めて聞き、意味が分からないまま話を進めてしまいそうになるのは、知識不足というより専門用語の壁が高すぎるだけです。分からない言葉が出てきた時点で一度止まって確認しようとしていること自体が、正しい防衛行動です。
心身に不調が出るほど資金繰りに追い詰められている場合は、この記事の情報より先に、医師や産業医への相談を優先してください。ここから先は、2社間・3社間という区分そのものを具体的に整理する内容です。
比較表:2社間ファクタリングと3社間ファクタリング
| 項目 | 2社間ファクタリング | 3社間ファクタリング |
|---|---|---|
| 契約の当事者 | 利用者・ファクタリング会社の2者 | 利用者・ファクタリング会社・取引先の3者 |
| 取引先への通知・承諾 | 原則なし | あり(取引先の承諾が前提) |
| 取引先に知られる可能性 | 低い(設計上、通知経路がない) | ある(取引先が直接関与するため必ず知られる) |
| 売掛金の入金の流れ | 取引先→利用者→ファクタリング会社 | 取引先→ファクタリング会社(直接) |
| 手数料相場 | 8%〜20%程度 | 1%〜9%程度 |
| ファクタリング会社が確認できる信用力 | 主に利用者(自社)の状況 | 主に取引先(売掛先)の状況 |
| 向いているケース | 取引先に知られたくない・急いでいる | 手数料を抑えたい・取引先の理解を得られる |
※手数料相場の数字は、金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」・中小企業庁の公表資料のいずれにも契約形態別の統計が見当たらず(2026年9月1日確認)、複数の解説記事に共通する目安として記載しています。この相場の詳細と根拠の確認範囲は、別記事(ファクタリング手数料の相場)でより詳しく扱っています。
なぜ手数料に差が出るのか:リスクを誰が負うか
手数料の差を突き詰めると、「ファクタリング会社が回収できないリスクをどれだけ負うか」の差です。
2社間ファクタリングでは、取引先が契約の存在を知らないため、売掛金の支払いは一度利用者(自社)の口座に入り、そこからファクタリング会社へ送金する流れになります。この間、次のようなリスクをファクタリング会社が単独で抱えることになります。
- 利用者が受け取った資金を、送金前に他の支払いに使ってしまうリスク
- 利用者自身の資金繰りが悪化し、送金が遅れる・できなくなるリスク
- 取引先の経営状況を、ファクタリング会社が直接確認できないリスク
3社間ファクタリングでは、取引先が直接ファクタリング会社に支払うため、利用者を経由する過程がなくなります。ファクタリング会社は取引先の信用力を見て審査でき、上記のリスクの多くが構造的に消えます。
つまり、「2社間は高い・3社間は安い」ではなく、「取引先の信用を直接確認できるかどうか」の差が手数料に転嫁されていると理解すると、見積もりの数字に納得しやすくなります。取引先に知られない利便性は、ファクタリング会社が負うリスクの高さと表裏一体です。
なお、2社間ファクタリングでも「動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律」第4条に基づく債権譲渡登記を利用することがあります。この登記がされると、民法467条が定める確定日付のある証書による通知があったものとみなされ、取引先以外の第三者への対抗要件を備えたことになります。登記の有無で手数料や条件が変わる業者もあるため、契約前に確認が必要です。この登記の仕組み自体は、別記事(2社間ファクタリングの仕組み)で扱っています。
同じ売掛金でいくら差が出るか:100万円で試算
相場の数字だけでは実感が湧きにくいため、100万円の売掛金を例に、手数料が実際の手取り額にどう影響するかを単純計算で示します(以下は上記の相場を用いた試算であり、実際の見積もりとは異なります)。
| 契約形態 | 手数料率(例) | 手数料額 | 手取り額 |
|---|---|---|---|
| 2社間(相場の下限側) | 8% | 8万円 | 92万円 |
| 2社間(相場の上限側) | 20% | 20万円 | 80万円 |
| 3社間(相場の下限側) | 1% | 1万円 | 99万円 |
| 3社間(相場の上限側) | 9% | 9万円 | 91万円 |
同じ100万円の売掛金でも、2社間の上限側(20%)と3社間の下限側(1%)を比べると、手取り額の差は19万円にもなります。「手数料〇%」という数字だけで判断せず、必ず「手取りでいくら残るか」を金額で計算してから比較してください。
どちらを選ぶべきか:3つの判断軸
相場や仕組みを理解した上で、実際にどちらを選ぶかは次の3点で考えると整理しやすくなります。
- 取引先に知られてよいか:知られたくない事情(関係悪化への懸念、社内事情など)が明確にあるなら2社間、特に問題ないなら3社間を優先的に検討する
- 急いでいるか:3社間は取引先の承諾を得る手間が発生するため、支払いまでの日数に余裕があるかどうかも判断材料になる
- 手数料差を払ってでも守りたいものがあるか:2社間を選ぶ場合、その手数料差(前章の試算のような金額)を払ってでも取引先に知られたくない理由を、自分の言葉で説明できるかを確認する
3点目が特に重要です。「なんとなく知られたくない」で2社間を選ぶと、3社間なら浮いたはずの手数料差を、明確な理由なく払うことになります。
手数料の数字だけで即決しない
相場の範囲に収まっているかどうかより、次の2点のほうが資金繰りへの影響は大きい場合があります。
- 償還請求権の有無:売掛先が倒産するなどして回収できなかった場合に、ファクタリング会社が利用者に返済を求められる権利(償還請求権)があるかどうか。「償還請求権なし(ノンリコース)」でなければ、実質的に借入と同じリスクを負うことになります(詳細は別記事:償還請求権とは)
- 見積書に記載のない追加費用の有無:契約書作成費用・登記費用・振込手数料などが手数料とは別に発生する業者もあると複数の解説記事に書かれています。ただしこれは業者ごとに異なる実務であり、金融庁・中小企業庁の公式資料に統一的な記載は見当たりませんでした
手数料率が相場内に収まっていても、これらが上乗せされれば実質的な負担は増えます。契約前に見積書の内訳を1行ずつ確認してください。
実体験:管理部門を統括した立場から見た「どちらを使うか」の相談
正直に書きます。私自身がファクタリングを利用者として契約した経験はありません。前職では執行役員として管理部門を統括する立場にいたため、この記事は「利用者として体験した」視点ではなく、資金調達の選択肢や取引条件を検討する側として見てきた事実に基づいています。
社内で「2社間にするか3社間にするか」という話が出たとき、決め手になっていたのは手数料率の数字そのものではなく、「その手数料差を金額に直したらいくらか」と「その金額を払ってでも避けたい事態は具体的に何か」を並べて考えることでした。パーセントのまま比較すると、8%と20%の差は感覚的にしか捉えられませんが、金額に直すと判断がはっきりします。数字を率のまま見るか、金額に直して見るかで、同じ情報でも判断のしやすさがまったく変わる、というのが管理部門側から見ていた実感です。
次にやること
まず、今回の見積もりが2社間か3社間かを確認し、その手数料率を今回の売掛金の金額に掛けて「実際に手元にいくら残るか」を計算してください。 その上で、取引先に知られてよいかどうかと、その手数料差を払う理由を自分の言葉で説明できるかを確認してください。率のまま比較するより、金額に直してから選ぶほうが、後悔の少ない判断になります。
ラボル
※本記事は2026年9月時点の調査に基づく情報整理です。2社間8〜20%・3社間1〜9%の手数料相場、および試算表中の手数料率は、金融庁・中小企業庁の公式資料に契約形態別の統計が見当たらないためタグを付け、複数の解説記事に共通する目安を用いた単純計算として記載しています。個別の契約判断については、各社公式ページと契約書の内容をご自身でご確認ください。
出典 - 民法466条(債権の譲渡性)・467条(債権譲渡の対抗要件): e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089 (2026年9月1日確認) - 動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律(平成10年法律第104号)第4条(債権譲渡登記の効力): e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/410AC0000000104 (2026年9月1日確認) - 金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」https://www.fsa.go.jp/user/factoring.html (契約形態別の手数料相場を示す統計の記載は無いことを2026年9月1日確認) - 2社間8〜20%・3社間1〜9%の手数料相場は、金融庁・中小企業庁の公式資料に契約形態別の統計が見当たらず、複数の解説記事の記載に基づく(一次情報なし)