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売掛金の回収が遅い取引先への対応

この記事の結論
  • 督促は「電話・メールでの確認→書面での催告→内容証明郵便→法的手続き」の順に強さを上げていくのが基本の型
  • 内容証明郵便による催告は時効の完成猶予(6か月)を生むが、更新にはならないためその間に次の手を打つ必要がある(民法150条)
  • 売掛金の消滅時効は原則5年(民法166条1項)
  • 少額な金額なら支払督促(民事訴訟法382条)、60万円以下なら少額訴訟(同法368条)が弁護士なしでも使える選択肢になる
この記事の内容
  1. 結論:督促は4段階で強さを上げる
  2. まず、催促していいのか迷うのは当然
  3. 比較表:督促の4段階と法的な効果
  4. そもそも論:締めと請求書の運用を見直す
  5. 期日を過ぎたら、まず何をするか
  6. 内容証明郵便を送るタイミングと効果
  7. それでも払われない場合:支払督促と少額訴訟
  8. 消滅時効に注意する
  9. 実体験:督促の進め方を管理部門側から見てきたこと
  10. 次にやること

この記事は、取引先からの入金が期日を過ぎても止まらず、催促していいものか迷っている小規模事業者・一人社長に向けて書いています。 結論から言うと、督促は「事実確認の連絡→書面での催告→内容証明郵便→法的手続き」の順に、段階を踏んで強さを上げていくのが基本の型です。いきなり内容証明郵便や裁判を持ち出すのではなく、まず期日と金額を確認する連絡から始め、応答がなければ次の段階に進む、という順番を守ることが、関係を保ちながら回収する近道になります。

こんな状態ではありませんか
  • 取引先への入金確認の連絡を、催促と受け取られないか気を遣ってしまう
  • 何度も催促しているのに、いつまで待てばいいのか分からない
  • 法的な手続きを考えているが、弁護士に頼むほどの金額でもない気がする

結論:督促は4段階で強さを上げる

売掛金の回収が遅れたとき、多くの人が悩むのは「どの段階で、どこまで強く言っていいのか」です。強すぎる対応は取引関係を壊し、弱すぎる対応は放置につながります。基本の型は次の4段階です。

  1. 事実確認の連絡(電話・メール):行き違いや請求書の未達を疑い、催促ではなく確認として連絡する
  2. 書面での催告(メール・普通郵便):支払期日と金額を明記し、いつまでに支払うかの回答を求める
  3. 内容証明郵便:記録に残る形で正式に督促し、時効の完成を一時的に止める効果も持たせる
  4. 法的手続き(支払督促・少額訴訟・通常訴訟):裁判所を介して強制力のある手段に進む

段階を飛ばすこと自体に法律上の制約はありませんが、いきなり強い手段に出ると関係修復が難しくなり、逆に弱い連絡だけを繰り返すと時効が近づいても気づけません。この記事では、それぞれの段階で何をすべきかを具体的に見ていきます。

まず、催促していいのか迷うのは当然

ここが要点

「請求した以上、期日通りに払ってもらうのは当然の権利」だと頭では分かっていても、実際に取引先へ催促の連絡を入れるとなると、今後の取引が続けにくくなるのではという不安がつきまとうのは自然な反応です。催促を先延ばしにすること自体が悪いわけではなく、「どう伝えれば関係を壊さずに済むか」を考えている時点で、すでに適切な対応の入り口に立っています。

資金繰りが厳しく心身に不調が出ている場合は、この記事の情報より先に、医師や産業医への相談を優先してください。ここから先は、具体的な進め方を段階ごとに見ていきます。

比較表:督促の4段階と法的な効果

段階 手段 法的な効果 使うタイミングの目安
1. 事実確認 電話・メール なし(あくまで確認) 支払期日を過ぎて数日以内
2. 書面での催告 メール・普通郵便 送った事実の記録は弱い(相手が受領を否認できる) 期日を過ぎて1〜2週間
3. 内容証明郵便 郵便局の内容証明サービス 時効の完成猶予(6か月、民法150条)。送付事実・内容を郵便局が証明する 期日を過ぎて2週間〜1か月、または時効が近づいている場合
4. 法的手続き 支払督促・少額訴訟・通常訴訟 債務名義を取得でき、強制執行が可能になる 内容証明後も応答がない場合

※内容証明郵便は「送った」という事実と内容を郵便局(日本郵便)が証明するものであり、それ自体に相手へ支払いを強制する法的効力はありません。心理的な圧力と、時効を止める効果が主な役割です。

そもそも論:締めと請求書の運用を見直す

督促の話に入る前に、回収が遅れる原因が取引先側だけでなく、自社の請求書運用にある場合も少なくありません。締め日と請求書送付日がずれている、請求書の送付方法が取引先の経理フローと合っていない、支払期日が請求書に明記されていない、といった状態は、単純な支払い漏れを招きやすくなります。

  • 締め日から請求書送付までの日数を固定し、毎月同じタイミングで送る
  • 請求書に支払期日を数字で明記する(「翌月末」だけでなく「2026年10月31日」のように)
  • 取引先の経理担当者が変わっていないか、送付先メールアドレスが有効かを定期的に確認する

これらは督促の技術ではなく予防の話ですが、「そもそも催促する必要のある状況を減らす」という意味で、回収が遅い取引先への対応の一部です。

期日を過ぎたら、まず何をするか

支払期日を過ぎても入金が確認できない場合、最初に行うのは「催促」ではなく「確認」です。請求書が届いていない、経理処理のタイミングがずれている、といった単純な理由であることも多いため、まずは事実確認として連絡します。

  • 電話またはメールで、請求書番号・金額・支払期日を明記して確認する
  • 「催促」という言葉を使わず、「ご確認いただけますでしょうか」という形で伝える
  • 返答があれば、いつまでに支払うかの具体的な日付を聞き、メールなど記録が残る形で回答をもらう

ここで曖昧な返事(「近いうちに」など)しか得られない場合や、連絡そのものに応答がない場合は、次の段階として書面での催告に進みます。書面では、支払期日・金額・振込先を改めて明記し、支払いの回答期限(たとえば1週間以内)を設けます。

内容証明郵便を送るタイミングと効果

書面での催告にも応答がない場合、内容証明郵便を検討する段階です。内容証明郵便は、日本郵便が「いつ、誰が、誰に、どのような内容の文書を送ったか」を証明するサービスで、裁判になった場合の証拠として使えます。

内容証明郵便を送るもう一つの意味は、消滅時効との関係です。民法150条は、催告があったときは、その時から6か月を経過するまでの間は時効が完成しないと定めています(時効の完成猶予)。ただし、これはあくまで時効の進行を一時的に止めるだけで、時効期間をゼロに戻す「更新」の効果はありません。内容証明郵便を送ったあと、その6か月の間に次の対応(支払督促や訴訟の提起など)を取らなければ、時効の完成猶予の効果は失われます。

内容証明郵便を送る際は、次の内容を明記します。

  • 請求書番号・取引の内容・金額
  • 支払期日と、期日を過ぎている事実
  • 支払いの回答期限(通常1〜2週間程度)
  • 期限内に支払いがない場合は法的手続きを検討する旨

「法的手続きを検討する」という一文を入れるかどうかは、実際にその後の段階に進む意思があるかを踏まえて判断してください。書くだけ書いて実行しない対応を繰り返すと、以降の督促の実効性が下がります。

それでも払われない場合:支払督促と少額訴訟

内容証明郵便を送っても支払いがない場合、裁判所を通じた法的手続きに進む選択肢があります。弁護士に依頼せず自分で申し立てられる手続きとして、支払督促と少額訴訟の2つがあります。

手続き 対象 特徴 相手が争った場合
支払督促(民事訴訟法382条〜391条) 金銭その他の代替物・有価証券の給付を目的とする請求(金額の上限なし) 相手の住所地を管轄する簡易裁判所の書記官に申し立てる。手数料は訴え提起の手数料の2分の1(民事訴訟費用等に関する法律別表第一)。2週間以内に相手が異議を申し立てなければ仮執行宣言が付き、強制執行が可能になる 異議が出ると通常の訴訟手続きに移行する
少額訴訟(民事訴訟法368条) 60万円以下の金銭の支払請求のみ 原則1回の期日で審理・判決が出る。同じ簡易裁判所で年10回までしか利用できない(民事訴訟規則223条、事業者の乱用を防ぐための回数制限) 通常の訴訟(または相手の申し出により通常訴訟)に移行する場合がある

どちらも弁護士なしで申し立てられる制度として設計されていますが、相手が異議や応答をしてきた場合は通常訴訟に発展する可能性があります。金額が大きい、相手が争う姿勢を見せている、といった場合は、この段階で一度弁護士に相談することをおすすめします。

法的手続きを検討している間の資金繰りをつなぐ手段として、他の取引先に対する売掛金をファクタリングで早期に現金化する事業者もいます。ファクタリングは滞っている売掛金そのものを回収する手段ではなく、あくまで別の健全な売掛金を資金化する仕組みである点は分けて理解しておく必要があります。少額の売掛金から利用できるサービスの例としてラボルがあります(手数料一律10%・少額1万円から利用可能と公式サイトに明記。※2026年8月時点の調査)。

消滅時効に注意する

督促を続けている間も、消滅時効の進行は止まりません。民法166条1項により、売掛金のような債権は、債権者が権利を行使できることを知った時から5年、または権利を行使できる時から10年のいずれか早い方が経過すると、時効によって消滅します。通常の売掛金取引では、支払期日を過ぎた時点でその両方を知っている状態にあるため、実務上は5年が基準になることが一般的です。

時効を止める手段には、内容証明郵便による催告(6か月間の完成猶予、民法150条)のほか、相手が債務を承認する(一部でも支払う、支払う旨を書面やメールで伝える)ことによる時効の更新(民法152条)があります。取引先から「支払う意思はある」という回答を得られた場合は、その内容をメールなど記録に残る形で残しておくことが、時効管理の観点でも意味を持ちます。

実体験:督促の進め方を管理部門側から見てきたこと

私の場合

正直に書きます。私自身が自分の事業として取引先に督促の連絡を入れた経験はありません。前職では執行役員として管理部門を統括する立場にいたため、この記事は「督促した側」の当事者としての体験ではなく、社内の未回収案件を確認・判断する立場として見てきた事実に基づいています。

未回収の請求が発生したとき、担当者が一番迷っていたのは「いつ、どの強さの連絡に切り替えるか」というタイミングの判断でした。曖昧なまま連絡を先延ばしにして時効が近づいてから慌てるケースと、逆に早すぎる段階で強い言い方をして関係が悪化するケースの両方を見てきました。効果があったのは、督促の各段階に「いつまで待って、応答がなければ次に進む」という期限をあらかじめ決めておき、感情ではなく期限で機械的に段階を上げるやり方です。曖昧なまま様子を見続けることが、結果的に一番回収を遠ざけるという実感があります。

次にやること

まず、未回収の売掛金について、請求書番号・金額・支払期日・これまでの連絡履歴を一覧にしてください。 そのうえで、支払期日からどれだけ経過しているかを確認し、経過期間に応じて「事実確認の連絡」「書面での催告」「内容証明郵便」のどの段階に進むべきかを判断します。内容証明郵便を送っても応答がない場合は、金額と相手の対応状況を踏まえて、支払督促・少額訴訟の利用、または弁護士への相談を検討してください。


※本記事は2026年8月〜9月時点の調査に基づく情報整理です。個別の債権回収・法的手続きの要否については、弁護士・簡易裁判所の窓口にご相談ください。

出典(2026年8月〜9月確認) - 民法150条(催告による時効の完成猶予) - 民法152条(承認による時効の更新) - 民法166条1項(債権の消滅時効、権利行使できることを知った時から5年・権利行使できる時から10年) - 裁判所「支払督促」(courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/minzi_25_22/index.html。申立先・異議申立期間(2週間)・仮執行宣言までの流れを確認) - 民事訴訟法368条(少額訴訟、60万円以下の金銭支払請求に限る)・382条〜391条(支払督促の手続き) - 民事訴訟規則223条(少額訴訟の同一簡易裁判所での年間利用回数を10回までとする規定) - 法定利率は、2026年4月1日から2029年3月31日までの3年間、年3%のまま据え置かれることが確定している(法務省「令和8年4月1日以降の法定利率について」moj.go.jp/MINJI/minji07_00366.html)。契約に遅延損害金の定めがある場合はその定めが優先されるため、契約書を確認してください - 民事訴訟費用等に関する法律 別表第一(第3条・第4条関係)(支払督促の申立て手数料が訴え提起の手数料の2分の1である旨) - ラボル公式「ファクタリングの手数料はいくら?」(labol.co.jp/insight/factoring-commission/。手数料一律10%・少額対応を確認。※2026年8月時点の調査) - 実体験部分は運営者本人が前職(執行役員・管理部門統括)で見てきた事実に基づく

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執行役員として6年、会社の管理部門を統括する立場にいました。資金繰りの意思決定を経営の側から見てきた経験をもとに書いています。このサイトで紹介するのは手数料の上限を公式に明記している業者だけです。「審査なし」「誰でも通る」を売りにする業者は、載せません。

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