資金繰り改善計画書の作り方
- この記事では資金繰り改善計画書を「資金繰り表(実績+今後の見通し)」「損益計画」「アクションプラン」「借入一覧」の4点セットで整理(統一された公式書式はなく、日本政策金融公庫の様式では資金繰り表の添付は必須ではない。提出先に確認)
- 金融機関が条件変更に応じやすいのは「実現可能性の高い抜本的な経営改善計画(実抜計画)」に該当する計画で、中小企業の場合は概ね5年以内(5〜10年で概ね計画どおり進捗していれば可)で正常先に戻る計画とされている(金融庁「貸出条件緩和債権関係Q&A」問28で2026年9月21日確認)
- 計画策定には認定支援機関の力を借りる「経営改善計画策定支援事業(405事業)」があり、専門家への支払費用の3分の2(協議会の負担上限は通常枠300万円、中小版GL枠700万円)を中小企業活性化協議会が負担する制度がある
この記事の内容
この記事は、銀行から「返済条件の見直しには計画書が要ります」と言われて、何を書けばいいか分からず手が止まっている経営者に向けて書いています。 結論から言うと、この記事では資金繰り改善計画書を「資金繰り表」「損益計画」「行動計画(アクションプラン)」「借入一覧」の4点をセットにして、金融機関が納得できる数字で組み立てる形で整理します(統一された公式書式はなく、4点という切り分けはこの記事の整理です)。
- 銀行から「経営改善計画書を出してほしい」と言われたが、何を書けばいいか分からない
- 資金繰り表は作ったことがあるが、それだけで通るのか不安
- リスケ(返済条件の変更)をすると、その後の取引にどう響くのか知りたい
結論:資金繰り改善計画書は4点セットで出す
「資金繰り改善計画書」という名前の統一された書式があるわけではありません。この記事では、①資金繰り表(実績と今後の見通し)、②損益計画(5年程度)、③行動計画(何をいつまでにやって利益を改善するか)、④借入一覧表、の4点をセットにして金融機関に出す形で説明します。金融機関はこの4点を突き合わせて、「この会社は本当に返済を続けられるか」を判断します。
公的な様式との対応は次のとおりです(2026年10月3日確認)。日本政策金融公庫国民生活事業の「経営改善計画書策定の手引」では、経営改善計画書は「5年程度」の予想損益計算書で、売上・粗利益率・経費・借入金の返済を数値に落とし込み、「借入金内訳」の表も付ける形です。同じ手引の注記で、公庫への提出では資金繰り表の添付は必須ではないとされています。一方、中小企業庁の経営改善計画策定支援(405事業)の説明では、アクションプラン、損益などの計数計画、資金繰表(実績・計画)が計画書の構成に挙げられています(中小企業庁のページ本体は403エラーで開けず、検索結果の抜粋で確認)。つまり、4点のうち資金繰り表は提出先によって必須かどうかが変わります。【各自確認:提出先の金融機関が求める様式と添付書類。取引金融機関の担当者に、様式の指定があるかを聞いて確認】
「計画書を出せと言われた=もう終わりだ」ではありません。計画書は、金融機関が条件変更に応じるかを判断するための材料を整える書類です。
資金繰り表と何が違うのか
資金繰り表は「今後の現金の出入りを一覧にしたもの」で、これ単体でも作成できます(作り方は「資金繰り表の作り方」の記事を参照してください)。資金繰り改善計画書は、その資金繰り表に加えて「なぜ資金繰りが苦しくなったのか」「どう改善するのか」という損益面・行動面の説明を数値でセットにしたものです。
なぜ計画書が必要になるのか:条件変更(リスケ)の場面
計画書の提出が求められる典型的な場面は、既存の借入について「毎月の元金返済額を減らしてほしい」「一定期間、元金の返済を止めて金利だけ払わせてほしい」という条件変更(リスケジュール、通称リスケ)を申し出るときです。条件変更は、金融機関にとって、金融庁「貸出条件緩和債権関係Q&A」でいう「貸出条件緩和債権」に該当するかどうかの判断を伴います。
金融機関が納得する計画とは:実抜計画・合実計画の考え方
金融機関側の判断基準として、「実現可能性の高い抜本的な経営改善計画(実抜計画)」という考え方があります。金融庁「貸出条件緩和債権関係Q&A」(問28)によれば、「抜本的な」の要件は、概ね3年(債務者企業の規模や事業の特質を考慮した合理的な期間の延長を排除しない)後に債務者区分が正常先となることとされ、中小企業の場合はこの基準が緩和され、概ね5年以内(5〜10年で概ね計画どおり進捗している場合を含む)で、計画終了後に正常先となる計画であれば認められます(2026年9月21日、金融庁公式ページで確認)。
これより柔軟な基準として「合理的かつ実現可能性の高い経営改善計画(合実計画)」もあり、同じ問28の注記で、金融機関の再建支援を要せず自助努力により事業の継続性を確保できる場合は、計画終了時点の債務者区分が要注意先でも差し支えないとされています(2026年9月21日、同ページで確認)。つまり、計画は「正常先まで戻せる形」を目指すのが理想ですが、中小企業向けにはそこまで届かない計画でも一定の柔軟性が用意されている、という位置づけです。
計画書に必要な4つの要素
| 要素 | 内容 | 期間の目安 |
|---|---|---|
| 資金繰り表 | 過去の実績+今後の現金の出入り見通し | 提出先の指定に合わせる |
| 損益計画 | 売上・原価・経費・利益の年度別見通し | 5年程度 |
| 行動計画(アクションプラン) | 利益を改善するために何を・いつ・誰がやるか | 損益計画と同期間 |
| 借入一覧表 | 借入先ごとの残高・返済条件・担保・保証の状況 | 現時点の一覧 |
損益計画の「5年程度」は、日本政策金融公庫国民生活事業「経営改善計画書策定の手引」の「5年間を目安に作成」によります(2026年10月3日確認)。同じ手引は、計画終了時の目標の目安として、最終利益の黒字化・資産超過・債務償還年数10〜15年程度を挙げています。405事業の計画要件は、i-smeadviser.go.jp の説明で「5年以内の実質的な債務超過解消」「3年以内の黒字化」「計画最終年度の有利子負債の対キャッシュフロー比率10倍以内」とされています。なお損益計画の5年は、金融庁Q&Aの「概ね5年以内」とは別の話です。
売上を伸ばす計画なら、行動計画には、何にいくら投資して、誰が何をするのかまで書いておきます。
計算例:リスケで資金繰りがどう変わるかを数字で見る
次の前提で、条件変更(元金据置・金利のみの支払いに変更)の効果を計算します。
- 借入残高4,800万円、毎月の元金返済80万円(4,800万円÷60回)、金利は年2%(月あたり概算8万円=4,800万円×2%÷12。残高は減らない前提の概算)
- 毎月の営業キャッシュフロー(本業で稼ぐ現金)は月10万円
改善前:毎月の返済負担は元金80万円+金利8万円=88万円。営業CFが10万円しかないため、毎月78万円の資金不足が発生します。
改善後(条件変更で元金1年間据置):毎月の返済負担は金利分の8万円のみ。営業CFの10万円から8万円を払っても、毎月2万円が手元に残る計算になります。
据置期間1年間(12ヶ月)で猶予される元金相当額は、80万円×12ヶ月=960万円です(据置中に払う金利は8万円×12ヶ月=96万円)。この960万円が、行動計画を実行して利益を立て直すための猶予期間の原資になります。計画書には、この猶予期間中に何をして、据置が終わる時点でどこまで返済力を回復させるかまで書く必要があります。
提出までの手順:相談から合意まで
- 自社の資金繰り表を作る:直近6ヶ月の実績と、今後1年分の見通しをまず数字で出す
- 顧問税理士か認定経営革新等支援機関に相談する:計画書は自力で作ることもできます。認定経営革新等支援機関に頼む場合は、費用の一部を負担してもらえる405事業があります(下の節)
- 損益計画と行動計画を数値で作る:「頑張って利益を出す」ではなく、根拠のある数字に落とし込む
- メインバンク(取引額が一番大きい金融機関)に事前相談する:いきなり全行に出すのではなく、まずメインバンクの反応を見ます
- 借入のあるすべての金融機関に同時期に計画を示す
- 各行から合意書(条件変更の同意)を受け取る:口頭の了承だけでなく、書面での合意を残します
なお、計画書を準備している間も、支払いは止まりません。計画策定中の一時的な資金不足には、売掛金を早期に現金化するファクタリングをつなぎとして使う選択肢もあります(ラボル)。あくまで計画実行までの一時しのぎであり、計画そのものの代わりにはならない点は押さえておいてください。
使える公的支援:経営改善計画策定支援事業(405事業)
計画書の作成には専門家の力を借りる方法がありますが、費用がかかります。この費用を国が支援する制度が「経営改善計画策定支援事業(405事業)」です。認定経営革新等支援機関(中小機構のページでは、商工会・商工会議所などの中小企業支援機関のほか、金融機関、税理士、公認会計士、弁護士が挙げられています)が中小企業と連名で中小企業活性化協議会に相談・利用を申し込み、計画策定の支援を受けます(中小機構公式ページ、2026年10月3日確認)。
独立行政法人中小企業基盤整備機構の公式ページによれば、専門家に支払う費用の3分の2を中小企業活性化協議会が負担し、中小企業側の自己負担は3分の1です。協議会の負担の上限は、通常枠で300万円、「中小版GL枠」で700万円です。通常枠の内訳としては、DD・計画策定支援費用の上限200万円、伴走支援費用の上限100万円、金融機関交渉費用の上限10万円(任意)が挙げられています。この10万円が300万円に含まれるのか別枠なのかは、同ページに明記がありません。中小版GL枠の内訳は、DD費用の上限300万円、計画策定支援費用の上限300万円、伴走支援費用の上限100万円です(2026年9月21日、中小機構公式ページで確認)。
提出前のチェックリスト
- □ 資金繰り表・損益計画・行動計画・借入一覧の4点が揃っているか
- □ 数字の前提(売上の伸び率、経費削減額など)に根拠を説明できるか
- □ 借入のあるすべての金融機関に、同時期に同じ内容の計画を示せているか
- □ 行動計画に「誰が・いつまでに・何をするか」まで書かれているか
- □ 計画期間終了時点の返済力(債務者区分がどこまで戻るか)を意識した年数になっているか
出す前に見直したい計画書
- 売上の伸び率だけを高く見積もり、根拠となる行動計画が書かれていない計画
- 一部の金融機関にだけ条件変更を依頼し、他の金融機関には知らせていない計画
- 資金繰り表の数字と、損益計画の数字が整合していない計画(利益が出ている計画なのに、資金繰り表では現金が減り続けているなど)
- 「頑張ります」「必ず立て直します」といった精神論だけで、数値の裏付けがない計画
次にやること
まず、直近6ヶ月分の資金繰り表を実績ベースで作ってください。 それができたら、顧問税理士か認定経営革新等支援機関に「条件変更の相談をしたい」と伝え、損益計画と行動計画の作成に進みます。計画が数字で整うまでは、他の金融機関への相談を急がず、まずメインバンクとの事前相談から始めてください。
※本記事は2026年9月時点の調査に基づく情報整理です。実抜計画・合実計画の定義は金融庁公式ページ(問28)、経営改善計画策定支援事業(405事業)の負担割合・上限額は独立行政法人中小企業基盤整備機構公式ページで一次確認しています(いずれも2026年9月21日確認、10月2日・10月3日に再確認)。個別の交渉・計画内容については、顧問税理士や取引金融機関にご確認ください。
出典 - 金融庁「貸出条件緩和債権関係Q&A 各論(実現可能性の高い抜本的な経営再建計画、その他)」問28 https://www.fsa.go.jp/common/law/guide/q_and_a/04.html(2026年9月21日確認) - 独立行政法人中小企業基盤整備機構「経営改善計画策定支援事業」 https://www.smrj.go.jp/supporter/revitalization/improvement.html(2026年9月21日確認) - 日本政策金融公庫国民生活事業「経営改善計画書策定の手引」 https://www.jfc.go.jp/n/service/pdf/keieikaizentebiki_230403n.pdf(2026年10月3日確認) - 中小企業庁 認定支援機関ポータル「経営改善計画策定支援事業(405事業)」 https://i-smeadviser.go.jp/plan/(2026年10月3日確認) - 中小企業庁「経営改善計画策定支援」 https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/saisei/05.html(2026年9月21日・10月3日とも403エラーで到達できず未確認。負担割合・上限額は上記中小機構ページの記載で確認)