廃業にかかる費用
- 個人事業主の廃業届(開業・廃業等届出書)の税務署提出は無料で、提出期限は廃業した年分の所得税の確定申告期限まで(国税庁)
- 株式会社の任意清算では解散登記の登録免許税3万円・清算人選任登記9,000円・清算結了登記2,000円の法定費用がかかる
- 解散時の官報公告費用は3〜4万円程度が目安(全国官報販売協同組合の掲載単価をもとにした試算、SGホールディングス司法書士法人の実例)
- 司法書士報酬は15〜30万円、清算確定申告の税理士報酬は20〜50万円が目安で、法人の任意清算は合計40万〜90万円程度が相場とされる(SGホールディングス司法書士法人)
- 法人破産では東京地裁の管財事件で予納金は最低20万円(東京地裁民事第20部の公式資料)、4回までの分納については複数の法律事務所解説が一致しているが裁判所公式資料に明記はない
- 弁護士費用(着手金)は中小企業で50〜100万円程度が目安で、事案によっては150万円を超えることもある(千代田中央法律事務所)
- 中小企業活性化協議会・よろず支援拠点は廃業の相談も無料で受け付けている(中小企業基盤整備機構)
この記事の内容
この記事は、資金繰りが厳しく「もう会社(または個人事業)をたたむしかないかもしれない」と考えている経営者・個人事業主に向けて書いています。 結論から言うと、廃業は無料ではありません。個人事業主の廃業届そのものは無料ですが、法人を畳む場合は登記費用・官報公告費用・専門家報酬がかかり、任意清算で数十万円、破産になると予納金と弁護士費用で数十万〜百万円規模になります。「お金が無いから畳む」のに「畳むのにもお金がいる」という構造を先に知っておくことが、動き出す前の最初の一歩になります。
- 資金繰りがもたず、廃業を考え始めている。でも畳むのにもお金がかかると聞いて動けずにいる
- 個人事業主として廃業するのと、法人をたたむのとで、費用がどれくらい違うのか分からない
- 廃業費用すら払えない場合、誰に相談すればいいのか見当がつかない
結論:たたむにもお金がかかる。金額は「個人事業か法人か」「任意清算か破産か」で決まる
廃業にかかる費用は、事業の形態と畳み方によって大きく3段階に分かれます。
- 個人事業主が廃業届を出す — 税務署・都道府県税事務所への提出はどちらも無料です(弥生株式会社/freee)
- 法人が任意清算する(資産が負債を上回り、債務を払いきれる場合) — 登記の法定費用・官報公告費用・司法書士や税理士への報酬がかかり、合計40万〜90万円程度が相場とされています(SGホールディングス司法書士法人)
- 法人が破産する(債務超過で払いきれない場合) — 裁判所への予納金と弁護士費用がかかり、少額管財でも合計70万〜120万円程度、事案によっては170万円程度になります(後述)
「廃業=お金がかからない」というイメージは、個人事業主が届出だけで済ませられる場合に限った話です。 法人を畳むときは、会社を作るときと同じように、登記や公告といった手続きそのものにお金がかかります。
なぜ廃業にお金がかかるのか
会社は登記によって「法人格」という法律上の人格を持っています。設立するときに登記でこの人格を作ったのと同じように、消すときにも登記の手続きが必要で、登記には登録免許税という法定の税金がかかります。さらに、会社を畳むことを債権者に知らせるための官報公告にも掲載料が発生します。
つまり、法人の廃業費用は「会社を消すための行政手続きの実費」です。誰かに利益が出るお金ではなく、法律で決まった手続きを踏むために発生するコストだと考えると、金額の内訳が見えやすくなります。
個人事業主の廃業|届出自体は無料。かかるのは別のお金
個人事業主が事業をやめる場合、税務署へ「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出しますが、この提出自体に費用はかかりません。都道府県税事務所への事業廃止届出書(個人事業税の関係)も同様に無料ですが、こちらの提出期限は都道府県ごとに異なり、東京都は廃業日から10日以内とされています(弥生株式会社)。税務署への届出書の提出期限は、事業の開始等の事実があった日の属する年分の所得税の確定申告期限まで、つまり原則として廃業した年の翌年3月15日までです(国税庁)。
ただし、個人事業主の場合も「廃業届の提出」以外の部分でお金がかかることがあります。
- 事務所・店舗を借りている場合の原状回復費用、解約時の違約金
- リース契約(コピー機・車両など)の中途解約金
- 在庫や設備の処分費用(逆に売却できれば収入になる)
- 取引先への未払金の精算
- 顧問税理士がいる場合の廃業年度の確定申告報酬
「届出はタダ」でも、「事業をたたむ実作業」にはお金がかかります。 ここを混同すると、想定していた費用感とずれが出ます。
法人の任意清算にかかる費用
法人が資産超過(資産が負債を上回る)の状態で畳む場合は、株主総会での解散決議を経て清算人を選び、清算手続きを行う「任意清算」になります。かかる費用は大きく3つです。
法定費用(登記・官報公告)
- 解散登記の登録免許税:30,000円
- 清算人選任登記の登録免許税:9,000円
- 清算結了登記の登録免許税:2,000円
- 官報公告の掲載費用:3万〜4万円程度が目安。全国官報販売協同組合の公告単価は1行あたり税込3,947円で、解散公告は10〜12行程度になるケースが多く、司法書士事務所の実例でも約3.6万円とされています(全国官報販売協同組合/SGホールディングス司法書士法人)
法定費用の合計はおおむね7万円台になります。
専門家報酬
- 司法書士報酬(登記書類の作成・申請代行):15万〜30万円程度が目安(サイトによっては10万〜20万円程度とする例もある)
- 税理士報酬(清算確定申告など税務申告の代行):20万〜50万円程度が目安
自分で登記書類を作成すれば司法書士報酬は抑えられますが、清算確定申告は会社の規模や状況によって複雑になりやすく、税理士への依頼を検討するケースが多いようです。
法定費用・司法書士報酬・税理士報酬をすべて合わせると、任意清算の総額はおおむね40万〜90万円程度が相場とされています(SGホールディングス司法書士法人)。会社の規模や資産・負債の状況によって、この範囲を超えることもあります。
なお、残余財産が確定した場合は、その確定の日を含む事業年度終了の日の翌日から1か月以内に税務署へ「清算確定申告書」を提出する必要があります(法人税法第74条第2項)。この期限を踏まえてスケジュールを組む必要があります。
法人の破産にかかる費用
負債が資産を上回り、任意清算で債務を払いきれない場合は、裁判所を通す「破産」の手続きになります。破産は任意清算より費用が高くなりやすい手続きです。
予納金
破産を申し立てる際、裁判所に納める「予納金」が必要です。東京地方裁判所の場合、弁護士が代理人となる「少額管財」であれば、予納金は法人管財事件で最低20万円(ほかに実費として1件あたり14,786円程度)です(東京地方裁判所民事第20部「破産事件の手続費用一覧」)。少額管財を使わない通常の管財事件になると、負債総額が5,000万円未満でも法人は70万円、負債が大きくなるほど予納金も上がり、100億円以上では700万円程度になります(同資料)。なお、東京地裁の少額管財では予納金を4回まで分割して納められるという解説が複数の法律事務所サイトで一致していますが、裁判所の公式資料にはこの分納の回数についての明記は見当たりませんでした(2026年9月確認)。
弁護士費用
弁護士費用の中心となる着手金は、会社の財産状況や債権者数によって幅がありますが、中小企業の場合でおおむね50万〜100万円程度が目安とされ、事案によっては150万円を超えることもあります(千代田中央法律事務所)。同事務所によれば、法人破産では成功報酬(報酬金)が発生しない、または回収額がある場合に一定割合を報酬金とする程度にとどまる事務所が多いとされています。
その他の実費
登記関連費用や郵便切手代などの雑費が数万円程度かかりますが、予納金・弁護士費用に比べると金額は小さめです(法人破産サイト)。
少額管財を利用できたとしても、予納金20万円程度+弁護士費用(着手金)50万〜100万円程度で、合計70万〜120万円程度が目安になります。事案によっては着手金が150万円を超え、合計170万円程度になることもあります。「お金が無いから畳む」段階で、この金額をどう用意するかが最初のハードルになります。
費用の比較表
| 畳み方 | 主な費用 | 目安の合計額 |
|---|---|---|
| 個人事業主の廃業届 | 届出自体は無料。原状回復費・在庫処分費・確定申告報酬などは別途 | 届出は0円(別途費用は状況による) |
| 法人の任意清算 | 登記の登録免許税(合計41,000円)+官報公告(3〜4万円)+司法書士報酬(15〜30万円)+税理士報酬(20〜50万円) | 40万〜90万円程度 |
| 法人の破産(少額管財) | 予納金(最低20万円程度)+弁護士費用・着手金(50万〜100万円、事案により150万円超も)+実費数万円 | 70万〜120万円程度(事案により170万円程度) |
※金額はいずれも2026年9月時点で確認できた一般的な相場で、会社の規模・地域・依頼先によって変動します。実際の見積もりは司法書士・弁護士・税理士に直接確認してください。
廃業費用すら払えないとき、どう動くか
「廃業費用を用意する余裕すら無い」という状態は、決して珍しくありません。その場合にまず検討できることを整理します。
- 裁判所への分割納付を確認する — 東京地裁の少額管財では予納金の4回分納が認められているという解説が複数の法律事務所サイトで一致していますが、裁判所の公式資料には明記が見当たりません(2026年9月確認)。すべての裁判所・案件で使えるとは限らないため、申立て予定の裁判所・弁護士に確認が必要です
- 無料の公的相談窓口を先に使う — 中小企業活性化協議会(第一次相談は無料)やよろず支援拠点(何度でも無料)は、廃業の相談も受け付けています(中小企業基盤整備機構)。「畳み方」自体を専門家と一緒に整理することで、費用を抑えられる選択肢が見つかることがあります
- 経営者に連帯保証がある場合は先に確認する — 「廃業時における経営者保証ガイドライン」の特則が使えれば、保証人である経営者に一定の生活基盤を残せる可能性があります。日弁連「ひまわりほっとダイヤル」(0570-001-240)で相談できます
廃業の相談先については、廃業を考える前に|事業再生・再チャレンジの相談先でも整理しています。費用を理由に手続きそのものを先延ばしにすると、かえって選べる選択肢が狭まることがあります。 お金が無い段階だからこそ、先に無料の窓口へ相談する順番が有効です。
調査した範囲では、廃業費用そのものを立て替える公的な融資制度は見当たらなかった(2026年9月確認)。廃業前の資金調達については、税金を滞納していても使える手段や、資金繰り表での現状把握が先に必要になります。
次にやること
まず、自分の状況が「個人事業主」か「法人」か、法人なら「資産超過(任意清算)」か「債務超過(破産の可能性)」かを確認してください。 それによってかかる費用の桁が変わります。法人で判断に迷う場合や、費用そのものを用意する余裕が無い場合は、支払いや登記の手続きを自分だけで進める前に、中小企業活性化協議会かよろず支援拠点の無料相談へ先に連絡することが、費用と選択肢の両方を守る最初の一歩になります。
※本記事は2026年9月時点で確認できた各専門家事務所・公的機関の公表情報をもとにした一般的な整理です。費用は会社の規模・地域・依頼先によって変動するため、実際の手続き・見積もりは司法書士・弁護士・税理士、または中小企業活性化協議会などの公的窓口に直接確認してください。
出典(2026年9月確認) - 個人事業主の廃業届(税務署提出分)の提出費用(無料)・提出期限(廃業した年分の確定申告期限まで):国税庁「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」(nta.go.jp) - 都道府県税事務所への事業廃止届出書の提出期限が地域により異なる例(東京都は廃業日から10日以内):弥生株式会社「個人事業主の廃業届とは?提出期限や書き方を解説」(yayoi-kk.co.jp)、freee「個人事業主が開業届を提出する場合の費用は0円」(freee.co.jp) - 解散登記・清算人選任登記・清算結了登記の登録免許税(3万円・9,000円・2,000円):法務局申請書様式・登録免許税法別表第一に基づく各専門家サイトの解説(houmukyoku.moj.go.jp ほか) - 清算確定申告書の提出期限(残余財産確定を含む事業年度終了の日の翌日から1か月以内):法人税法第74条第2項 - 官報公告の掲載単価(1行税込3,947円):全国官報販売協同組合「官報公告掲載料金」(gov-book.or.jp)。解散公告の実例相場(約3.6万円):司法書士法人SGホールディングス「会社の廃業にかかる『費用と期間』」(sgho.jp) - 司法書士報酬(15万〜30万円)・税理士報酬(20万〜50万円)・任意清算の総額相場(40万〜90万円程度):司法書士法人SGホールディングス「会社の廃業にかかる『費用と期間』」(sgho.jp) - 東京地裁の管財事件の予納金基準額(法人は最低20万円):東京地方裁判所民事第20部「破産事件の手続費用一覧」(courts.go.jp、2024年9月24日現在)。4回までの分納については法人破産サイト(nexpert-law.com)、東京新宿法律事務所(shinjuku-law.jp)など複数の法律事務所サイトの解説が一致しているが、裁判所の公式資料には明記が見当たらない - 中小企業の法人破産の弁護士費用(着手金)相場(50万〜100万円、事案により150万円超も):千代田中央法律事務所「法人破産の弁護士費用の相場はいくら?」(chiyodachuo-jurist.com) - 中小企業活性化協議会・よろず支援拠点の無料相談、経営者保証ガイドラインの特則、ひまわりほっとダイヤル:独立行政法人中小企業基盤整備機構、日本弁護士連合会(本サイト記事095と同出典)