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特定調停とは

この記事の結論
  • 特定調停は、返せなくなるおそれのある人が簡易裁判所に申し立て、調停委員が間に入って債権者と返済の条件を話し合う手続きで、個人・法人・事業者を問わず使える(東京簡易裁判所、2026年9月21日確認)
  • 個人が申し立てる場合の東京簡裁の案内は、収入印紙が相手方1社500円、郵便切手が1社500円分で、期間はおおよそ2か月・出向くのは2回程度
  • 取立ては自動では止まらず、裁判所が申立てにより民事執行(差押えなど)の手続の停止を命じることができる(特定調停法7条、e-Gov法令検索、2026年10月7日確認)
  • 合意が調書に載ると裁判上の和解と同一の効力を持ち、守らないと強制執行の根拠になり得る(民事調停法16条・民事執行法22条7号)
  • 今日は借入先ごとの残高と毎月の返済額を1行ずつ書く
この記事の内容
  1. 結論:特定調停は「裁判所の中で行う、返済条件の話し合い」
  2. 返済が苦しいのは、あなたひとりの問題ではありません
  3. 誰が使えるのか:個人も法人も、事業者も対象
  4. どこに、何を出して申し立てるのか
  5. 費用の計算例:債権者が5社の場合
  6. 流れと期間:2か月ほど、出向くのは2回ほど
  7. 取立ては止まるのか:自動では止まらない
  8. 合意できたらどうなる?できなかったら?
  9. 計算例と文例:毎月返せる額と、調停委員に話す経緯メモ
  10. チェックリスト:申し立てる前に確かめる5つのこと
  11. 次にやること
  12. 参考にした公式ページ

この記事は、借入の返済が苦しくなってきた個人事業主・小さな会社の経営者に向けて書いています。 結論から言うと、特定調停とは「簡易裁判所で、調停委員に間に入ってもらい、債権者と返済の条件を話し合う手続き」です。借金が自動で減る制度ではなく、話し合いがまとまって初めて条件が変わります。裁判所の公式ページと条文をもとに、費用・期間・流れ・取立てへの影響を整理します。

こんな状態ではありませんか
  • 毎月の返済が資金を圧迫していて、このままだと払えなくなりそうで怖い
  • 裁判所と聞くと大ごとに感じるが、どんな手続きなのか知りたい
  • 費用がどれくらいかかるのか、取立ては止まるのかを先に知りたい

結論:特定調停は「裁判所の中で行う、返済条件の話し合い」

特定調停は、特定調停法(正式名称は「特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律」)で決められた手続きです。返せなくなるおそれのある人の「経済的再生に資するため」に、金銭債務の利害関係を調整することが目的だと、第1条に書かれています(e-Gov法令検索、2026年9月21日確認)。

調整の対象は「金銭債務の内容の変更、担保関係の変更その他の金銭債務に係る利害関係の調整」です(同法2条2項)。話し合いは調停委員が間に入って行い、申立人が相手方と直接交渉することはありません(日本調停協会連合会の案内)。調停委員会が当事者に示す調停条項案は、債務者の経済的再生に資するという観点から「公正かつ妥当で経済的合理性を有する内容」でなければならないと、同法15条に定められています。また同法18条は、そうした内容の合意が成立する見込みがないときなどに、調停委員会が特定調停を成立しないものとして終了させられると定めています。

つまり、特定調停は「裁判所を会場にした、返済計画の相談」です。減額や免除が約束されるものではありません。

返済が苦しいのは、あなたひとりの問題ではありません

夜に通帳の残高を見て、月末の引き落としを数えている。督促の電話が鳴るたびに、心臓が縮む。そういう状態で「裁判所」という言葉を見ると、それだけで体が固まると思います。

売上が落ちる、取引先の入金が遅れる、仕入れが値上がりする。返済が苦しくなる理由は、本人の頑張りや人柄と関係なく起きます。

ただ、返済の条件を組み直す話し合いは、払えなくなってからより、払えるうちのほうが選べる道が多くなります。特定調停は、その道の1つとして条文に用意されています。使うかどうかは、内容を知ってから決めれば構いません。眠れない日が続くなら、お金の整理と並行して、医師や産業医にも相談してください。

誰が使えるのか:個人も法人も、事業者も対象

東京簡易裁判所のページには、対象者は「債務の返済ができなくなるおそれのある債務者(特定債務者)」で、「法人か個人か、あるいは事業者か否かを問わず幅広く利用することができます」とあります(2026年9月21日確認)。

条文の定義(特定調停法2条1項)を日常語に直すと、次のとおりです。

対象 日常語では
支払不能に陥るおそれがある人 このままだと返せなくなりそう
事業の継続に支障を来さずに、期日が来た債務を弁済することが困難な人 事業を続けながらだと、期日どおりに払えない
債務超過に陥るおそれがある法人 負債が資産を上回りそう

申し立てたら全件が特定調停として進む、というわけではありません。調停委員会は、申立人が特定債務者と認められないときや、性質上ふさわしくない事件のとき、特定調停をしないものとして事件を終わらせることができます(同法11条)。自分が対象になるかは、裁判所の受付や専門家に確かめてください。

どこに、何を出して申し立てるのか

申立先は、原則として、相手方(債権者)の住所・居所・営業所・事務所の所在地を受け持つ簡易裁判所です。当事者が合意で定める裁判所も認められています(民事調停法3条1項)。特定調停では、債権者を「相手方」と呼びます。

東京簡易裁判所の個人申立ての案内では、出す書類は次の4点です。

  • 特定調停申立書(正本・副本の2部)
  • 財産の状況を示す明細書、その他特定債務者であることを明らかにする資料(特定調停法3条3項)
  • 関係権利者一覧表(お金を請求する権利を持つ人と、担保を持つ人の一覧。同法2条4項・3条3項)
  • 資格証明書

同じページには、契約書の写しや取引履歴に基づく、利息制限法の利率での引き直し計算書の提出を依頼している、との記載もあります。借入先ごとの契約書と返済の記録を、先に集めておくと慌てません。法人・事業者の書類は、個人と分けた記載を確認できませんでした。申立先の受付に確認してください。

費用の計算例:債権者が5社の場合

東京簡易裁判所の案内(個人が申し立てる場合)では、収入印紙が相手方1社につき500円、郵便切手が1社につき500円分(100円切手4枚、10円切手10枚)です。5社なら、こうなります。

項目 計算 金額
収入印紙 500円 × 5社 2,500円
郵便切手 500円 × 5社(100円切手20枚、10円切手50枚) 2,500円
合計 5,000円

前提:個人として申し立てる場合の金額です。1社に対する債務額によっては印紙の追納が要り、切手も手続きの途中で追加を求められることがあります。事業者や法人として申し立てる場合は、債務額が大きいことが多く算出が複雑なため、裁判所の調停受付に問い合わせる案内になっています(東京簡易裁判所の特定調停申立てQ&A。検索結果上の掲載内容で確認)。弁護士・司法書士に頼む場合の報酬は、これとは別です。

流れと期間:2か月ほど、出向くのは2回ほど

東京簡易裁判所のページでは、申立ての後、次の順に進むと説明しています。

  1. 事情聴取期日 — 調停委員が、生活状況や収入、今後の返済方法などを聞く
  2. 調整期日 — 調停委員が相手方と、返済方法を調整する
  3. 成立または終了 — 合意できれば調書に記載。折り合わなければ、合意のないまま終了

期間は「通常、申立てからおおよそ2か月程度」、出向くのは「2回程度」です。裁判所や案件で違うため、目安として受け取ってください。相手方が来ないときは、調停委員が電話で調整し、合意した内容で「特定調停に代わる決定」がなされることがあるとも書かれています。

取立ては止まるのか:自動では止まらない

誤解が多いところなので、条文で確認します。特定調停法7条は、特定調停で解決することが相当だと裁判所が認め、かつ調停の成立を難しくするおそれなどがあるとき、申立てにより、特定調停が終わるまでの間、特定調停の目的となった権利に関する民事執行(差押えなど)の手続の停止を命じることができる、と定めています。理由を示す(疎明する。同条3項)必要があり、担保を立てさせる場合も、立てさせない場合もあります。

読み取れることは3つです。

  • 申立てをしただけで、差押えなどが自動で止まるとは、条文に書かれていない
  • 止めるには、停止を求める申立てが別に要り、裁判所が判断する
  • 給料・賃金・賞与・退職手当・退職年金、およびこれらの性質を持つ給与の債権に基づく執行は、停止の対象から外れている(同条1項ただし書)

3つ目は、従業員への未払いの給料がある事業者にとって重要です。従業員の賃金の債権に基づく差押えは、この条文では止められません。すでに差押えや訴訟の通知が届いているなら、日にちの余裕が少ないことがあります。申立ての前に、弁護士・司法書士か裁判所の受付に、状況を伝えてください。

合意できたらどうなる?できなかったら?

合意できた場合。 合意が調書に記載されると調停が成立し、その記載は裁判上の和解と同一の効力を持ちます(民事調停法16条)。東京簡易裁判所のページには「確定判決と同一の効力がある」とあります。「確定判決と同一の効力を有するもの」は、強制執行の根拠(債務名義)として民事執行法22条7号に挙がっています。成立した約束を守れなくなると、債権者が強制執行に進む根拠になり得ます。 だから成立の前に、毎月の額を払い続けられるか、数字で確かめておく必要があります。

決裂しそうな場合。 裁判所が調停に代わる決定をすることがあります(民事調停法17条)。告知を受けた日から2週間以内に異議を申し立てれば、決定は効力を失い、異議がなければ裁判上の和解と同一の効力を持ちます(同法18条)。

成立しなかった場合。 合意のないまま手続きが終わります(東京簡易裁判所のページ)。その後の返済がどうなるかは、債権者との契約とその後のやり取りによります。

特定調停は、債務を整理する方法の1つにすぎません。ほかの方法との向き不向きは、この記事では判断できないため、費用と併せて弁護士・司法書士に相談するのが確実です。

計算例と文例:毎月返せる額と、調停委員に話す経緯メモ

① 毎月返済に回せる額の計算例

事情聴取では、今後の返済方法を聞かれます。先に数字を出しておきます。

項目 金額(仮の数字)
月の事業の入金 60万円
仕入れ・家賃・経費など −35万円
生活費(税・保険料を含む) −20万円
返済に回せる額 5万円

前提:数字はすべて仮のものです。借入の合計を240万円とすると、利息を除いた単純計算で、240万円 ÷ 5万円 = 48か月(4年)です。実際の条件は、債権者との話し合いで決まります。返済額は、最大にするより、続けられる額に置くほうが、成立後に苦しくなりません。

② 調停委員に話す経緯メモ(文例)

【返済が難しくなった経緯メモ】

1. 事業の内容:
2. 主な収入(月ごとの入金額の目安):
3. 主な支出(仕入れ・家賃・人件費など):
4. 返済が難しくなった時期と理由:
5. 借入先ごとの状況:
   ・名前: 残高: 毎月の返済額: 契約書:あり/なし
   ・名前: 残高: 毎月の返済額: 契約書:あり/なし
6. 毎月返済に回せると考えている額:  円
7. 差押え・訴訟・督促の状況(届いた書類の日付も):
8. 今後の見通し(売上を戻すためにしていること):

分からない欄は空けたまま、聴取の場で一緒に埋めても構いません。

チェックリスト:申し立てる前に確かめる5つのこと

□ 借入先ごとに、名前・残高・毎月の返済額を紙に書き出した
□ 契約書と、取引の履歴(返済の記録)を、手元に集めた
□ 毎月返済に回せる額を、上の計算例の形で数字にした
□ 差押え・訴訟の通知が届いているかを確かめ、届いていれば日付を控えた
□ 弁護士・司法書士か裁判所の受付に、相談する日を決めた

次にやること

今日やることは1つだけです。借入先ごとに「名前・残高・毎月の返済額」を、紙に1行ずつ書く。 通帳と返済予定表を見ながら、書けるところだけで構いません。書けたら、その紙を持って、弁護士・司法書士か、申立先になりそうな簡易裁判所の受付に相談する日を決めてください。

この記事の内容は2026年9月21日に確認し、条文は2026年10月7日に原文で再確認したものです。制度や運用、裁判所ごとの案内は見直されることがあるため、申立ての前に最新の公式ページで確かめてください。特定調停を使うべきか、成立の見込みがあるかは、個別の事情で決まります。この記事は、その個別の判断をするものではありません。

参考にした公式ページ

  • 特定調停|東京簡易裁判所 https://www.courts.go.jp/tokyo-s/saiban/tokubetutyoutei/index.html (2026年9月21日確認、2026年10月7日に費用・期間・書類の記載を再確認)
  • 特定調停申立てQ&A|東京簡易裁判所 https://www.courts.go.jp/tokyo-s/saiban/l3/l4/Vcms4_00000346.html (同。2026年10月7日もページ本体には取得できず(404)、検索結果上の掲載内容で確認)
  • 特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律|e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/411AC1000000158 (2026年10月7日、条文原文で1・2・3・7・11・15・18条を確認)
  • 民事調停法|e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC1000000222 (同。3・16・17・18条を確認)
  • 民事執行法|e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004 (同。22条7号を確認)
  • 特定調停の流れ|公益財団法人 日本調停協会連合会 https://www.choutei.jp/tokutei/flow/index.html (同。申立人が相手方と直接交渉しない旨の記載を原文で確認)

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