経営者保証ガイドラインの使い方
- 経営者保証ガイドラインは法的拘束力のない自主的な準則で、保証を「免除してもらう権利」ではなく、金融機関に「保証を求めない可能性を検討してもらう手順」を定めたもの(全国銀行協会掲載の原文2項、2026年9月21日確認)
- 適用されるのは、主たる債務者が中小企業、保証人が個人の経営者、双方が弁済に誠実で財産状況を適時開示し、反社会的勢力でない場合(同3項)
- 金融機関は、法人と個人の資産・経理の分離、資金のやりとりが社会通念上適切、法人のみの資産・収益力での返済可能、財務情報の適時提供、十分な物的担保の5点を見て検討する(同4項(2))
- 既存の保証も、経営の改善を理由に解除等を申し入れると、金融機関は真摯かつ柔軟に検討し結果を丁寧かつ具体的に説明することとされている(同6項(1))
- 保証を残す場合も、金額を融資額と同額にせず、履行請求は基準日時点の保証人の資産の範囲内とする旨を契約に定めるとされている(同5項)
- 今日は法人と経営者の間の貸付金・仮払金の残高を1行書き出す
この記事の内容
この記事は、融資のたびに経営者保証(社長個人の連帯保証)を求められている、あるいは昔結んだ保証がそのまま残っている中小企業の経営者に向けて書いています。 結論から言うと、経営者保証に関するガイドラインは「保証を免除してもらう権利」ではなく、「金融機関に、保証を求めない可能性を検討してもらうための手順書」です。原文(全国銀行協会掲載)の項番号に沿って、対象の条件、銀行が見る点、申し入れの手順と文例、断られたときの次の手を整理します。
- 会社の借入なのに、自分の家まで巻き込まれているようで落ち着かない
- ガイドラインという言葉は聞くが、何をどう言えば使えるのか分からない
- 保証を外してほしいと切り出して、銀行との関係が悪くなるのが怖い
結論:ガイドラインは「検討してもらう手順」
経営者保証に関するガイドライン(平成25年12月策定、令和4年6月改訂)は、日本商工会議所と全国銀行協会が共同で設置した研究会がまとめた準則です。法的拘束力はなく、主たる債務者・保証人・対象債権者(金融機関)によって「自発的に尊重され遵守されることが期待されている」ものと書かれています(原文2項(1)、2026年9月21日確認)。盾にして「外せ」と迫るものではありません。
使い方は3ステップです。
- 自分が対象かを確かめる(3項)
- 銀行が見る点に沿って材料をそろえる(4項)
- 材料を添えて申し入れ、検討結果の説明を聞く(5項・6項)
「保証免除」という言葉は、2つの場面で使われます。この記事の中心は「保証を付けない・外す」(4〜6項)で、「会社が行き詰まったあと保証債務を減らす」(7項)は後半で短く触れます。
保証がずっと頭から離れない夜は、あなたの落ち度ではありません
残高を見るたびに、自分の家や家族の顔が浮かぶ。新しい設備や人を入れたいのに、失敗したら個人で背負うのかと思うと足が止まる。経営者保証を求められた人が、そう感じるのは自然なことです。
ガイドライン自身が、経営者保証には「経営への規律付けや信用補完として資金調達の円滑化に寄与する面がある一方、経営者による思い切った事業展開や、(略)早期の事業再生を阻害する要因」になる面もある、と両面を認めています(原文「はじめに」)。慎重になるのは臆病だからではなく、そういう性質の契約だからです。
外せるかどうかを運や相性に任せず、材料をそろえて検討してもらう。そのための道が用意されています。眠れない日が続くなら、お金の整理と並行して、医師や産業医にも相談してください。なお、この記事は保証を外した体験談ではなく、原文を読んで手順に直したものです。
自分は対象になるのか:適用の4要件
ガイドラインが適用されるのは、次の4つをすべて満たす保証契約です(原文3項)。
| 要件 | 日常語では |
|---|---|
| 主たる債務者が中小企業 | 借りているのは中小企業・小規模事業者 |
| 保証人が個人で、その会社の経営者 | 保証しているのは社長個人 |
| 双方が弁済に誠実で、請求に応じて財産状況(負債を含む)を適時適切に開示している | 返す姿勢があり、聞かれた数字を隠さず出している |
| 反社会的勢力ではなく、そのおそれもない | — |
実質的な経営権を持つ人、営業許可名義人、共に事業に従事する配偶者などが保証人の場合も対象に含まれます(3項(2))。
銀行は何を見ているのか:検討される5つの点
4項(2)は、法人と経営者の分離が進んでいる(または進めようとしている)会社について、次の要件が将来にわたって満たされると見込まれるなら、経営状況・資金使途・回収可能性等を総合的に判断する中で、保証を求めない可能性を検討する、と定めています。
| 銀行が見る点(原文の要件) | 自分で確かめること |
|---|---|
| 法人と経営者個人の資産・経理が明確に分離されている | 法人経費に私的な支出が混ざっていないか。口座を使い分けているか |
| 資金のやりとりが社会通念上適切な範囲を超えない | 役員報酬・賞与・配当・貸付が会社の規模に見合うか。貸付金・仮払金が残っていないか |
| 法人のみの資産・収益力で返済可能と判断し得る | 利益と返済額のバランス。個人資産をあてにしなくても返せる形か |
| 法人から適時適切に財務情報が提供されている | 試算表・資金繰り表を、聞かれる前から出せるか |
| 経営者等から十分な物的担保の提供がある | 保証の代わりに担保を求められる可能性がある |
最後の行は見落とされがちです。「保証なし」の中身は、条件を聞いてから比べてください。保証の代わりに、停止条件付・解除条件付の保証契約、ABL(売掛金や在庫を担保にする融資)、金利の一定の上乗せといった手法が示されることもあります(4項(2))。ここまでは「検討する」の話で、外すと約束されるものではありません。3要件の読み方は[融資の連帯保証|経営者保証を外す条件]にまとめています。
手順:申し入れまでの5ステップ
- 5つの点を自己点検する。 上の表を、直近の決算書と試算表を見ながら埋めます。
- 法人と個人のお金を整える。 貸付金・仮払金の整理、私的支出の切り分け。原文は、この整備状況を公認会計士・税理士などに検証してもらい、結果を金融機関に開示することが望ましい、としています(4項(1)①)。
- 出せる資料をそろえる。 原文は、資産負債の状況(経営者のものを含む)、事業計画や業績見通しとその進捗状況を、正確に開示・説明することを求めています(4項(1)③)。実務では、直近2期の決算書、月次の試算表、資金繰り表がその材料になります(この資料の例は原文の列挙ではなく、この記事の整理です)。
- 申し入れる。 新規なら申込時に、既存の保証なら見直しの申入れとして。原文は、申入れに先立ち、上の経営状況を将来にわたって維持するよう努めるとしています(6項(1)①)。
- 検討結果の説明を聞く。 金融機関は真摯かつ柔軟に検討し、結果を丁寧かつ具体的に説明することとされています(6項(1)②)。
文例:保証の見直しを申し入れるメール
〇に自社の数字を入れ、決算書と試算表を添付して使ってください。
件名:経営者保証の見直しに関するご相談(〇〇株式会社)
〇〇銀行〇〇支店
融資ご担当 〇〇様
いつもお世話になっております。〇〇株式会社の〇〇です。
ご融資中の〇〇(残高〇〇円)について、経営者保証の見直しを
ご検討いただきたく、ご連絡いたしました。
「経営者保証に関するガイドライン」6項(1)に基づく
解除等の申入れとして、以下をご説明させてください。
・資産・経理の区分:法人口座と個人口座を分けており、
私的な支出の法人経費への計上はありません
・資金のやりとり:役員報酬〇〇円/月、貸付金・仮払金の残高〇〇円
・返済能力:直近期の経常利益〇〇円、年間返済額〇〇円
・情報開示:試算表を毎月〇日までにご提出できます
添付:直近2期の決算書、直近月の試算表、資金繰り表
ご検討のうえ、結果とその理由を具体的にご説明いただけますと
幸いです。面談の日程は、ご都合をお知らせください。
〇〇株式会社 代表取締役 〇〇(連絡先:〇〇)
面談では、原文5項(1)が銀行の説明事項として挙げる3点を聞けます。①保証が必要な理由(どこが足りないか)、②履行を求めるときは全額を一律ではなく、そのときの資産状況を踏まえて範囲を決める理解でよいか、③必要性がなくなったら変更・解除を見直してもらえるか。
断られたとき・保証が残ったときに確かめること
保証が残った場合。 原文は、保証金額を形式的に融資額と同額にせず、資産・収入の状況、物的担保の設定状況などを総合的に見て決めるとしています。また、履行請求額を、期限の利益を喪失した日などの基準日の保証人の資産の範囲内とし、以降の収入を含まない旨を契約に規定するとしています(5項(2))。契約書を出して、保証金額と履行請求の範囲がどう書かれているか読んでください。
断られた場合の次の手は2つです。
- 信用保証協会付き融資の特例。 2024年3月15日から、保証料率の上乗せを条件に、経営者保証を提供しないことを選べます(事業者選択型経営者保証非提供制度。全国の信用保証協会が取り扱いを開始。全国信用保証協会連合会の2024年3月15日付お知らせと2024年2月発行のリーフレットで確認、2026年10月8日)。要件は、過去2年間の決算書等の提出、直近の決算で代表者への貸付金等(事業に必要なものや少額のものを除く)がなく役員報酬・賞与・配当などが社会通念上相当な額を超えないこと、財務要件、そして申込後も決算書の提出と貸付金・役員報酬の管理を続けると誓約する書面の提出です。財務要件は、債務超過でないこと、直近2期連続で減価償却前経常利益が赤字でないこと。両方満たすと上乗せは0.25%、一方だけ満たす場合(設立後2事業年度の決算がない法人も)は0.45%です。対象は、原則として無担保保険などが付く保証です。上乗せ率は2024年のリーフレットの数字なので、申し込む時点の料率は申込先の信用保証協会で確かめてください。費用の見方は[信用保証料はいくらかかるか|料率区分と計算のしかた]を見てください。
- 金融庁の専用窓口。 2023年4月から、保証を求める際の説明がない、といった相談を受ける窓口があります(経営者保証改革プログラム、2022年12月23日公表。原文を2026年10月8日に確認)。同じプログラムで、金融機関には、何が不十分で保証が必要なのか、どう改善すれば変更・解除の可能性が高まるのかを個別具体的に説明することも求められています。
断られても関係が終わるわけではありません。「どこを直せばよいか」を聞き出せたなら、次の申し入れの材料はもう手元にあります。
会社が行き詰まったあと:保証債務の整理
7項は、会社の返済が立ち行かなくなったとき、保証人が保証債務の整理を申し出る場合の準則です。主たる債務も、破産・民事再生などか、第三者が関与する私的整理(中小企業活性化協議会の再生支援スキーム、事業再生ADR、特定調停など)の手続に乗っていること、金融機関にも経済合理性があること、免責不許可事由がないことなどが要件です(7項(1))。
「全額免除」ではなく、手元に残せる資産(一定期間の生計費相当額や華美でない自宅などを含めて検討)を除いて処分・換価して弁済し、残りの免除を受ける形です。弁済計画は原則5年以内で(7項(3)③④)、整理の事実は信用情報登録機関に報告・登録されません(8項(5))。早めの着手を経済合理性のあるものとして扱う定めもあります(7項(3)③)。個別の判断は弁護士や中小企業活性化協議会に相談してください。特定調停は[特定調停とは|裁判所を使う話し合いの手続き]で書いています。
チェックリスト:申し入れる前に確かめる5つのこと
□ 法人口座と個人口座を分けて使っており、私的な支出が法人経費に混ざっていない □ 法人と私の間の貸付金・仮払金の残高を、直近の試算表で確認した □ 役員報酬・賞与・配当が、会社の利益や規模に見合っている □ 直近2期分の決算書と直近月の試算表を、すぐ出せる状態にしてある □ 申入れ後に計画や見通しが変わったら、自分から報告する
空いた項目は、次の申し入れまでの宿題です。全部埋まるまで動けないわけではなく、埋まっていない点を伝えたうえで「どう直せばよいか」を聞く形でも、申し入れは成り立ちます。
次にやること
まず、直近の試算表を開いて、法人と経営者の間の貸付金・仮払金の残高を1行書き出してください。 その数字は、文例の「貸付金・仮払金の残高〇〇円」にそのまま入ります。残高があるなら、いつまでにどう整理するかも1行添えてください。それが最初の申し入れの材料になります。
※本記事は2026年9月時点の調査に基づく情報整理です。ガイドラインは法的拘束力のない準則で、保証を外せるかどうかは金融機関ごと・案件ごとの判断です。個別の契約や債務整理は、取引金融機関、信用保証協会、弁護士・税理士などの専門家にご確認ください。
出典 - 全国銀行協会掲載「経営者保証に関するガイドライン」(平成25年12月、令和4年6月改訂)https://www.zenginkyo.or.jp/fileadmin/res/abstract/adr/sme/guideline.pdf(2026年9月21日確認) - 全国信用保証協会連合会「保証料の上乗せという経営者保証の機能を代替する手法を活用した制度等の取り扱いを開始します」(2024年3月15日)https://www.zenshinhoren.or.jp/news/4262/(2026年10月8日確認。開始日) - 全国信用保証協会連合会「事業者選択型経営者保証非提供制度のお知らせ」(2024年2月発行)https://www.zenshinhoren.or.jp/jfg/wp-content/uploads/2024/03/01oudan20240315.pdf(2026年10月8日確認。要件・上乗せ率0.25%/0.45%) - 東京信用保証協会「『経営者保証に関するガイドライン』等に係るご説明」(2024年3月)https://www.cgc-tokyo.or.jp/institution/guideline_2024/index.files/cgc_guidelines_R6-2.pdf(2026年10月8日確認。要件) - 中小企業庁「保証料率の上乗せにより経営者保証を提供しないことを選択できる信用保証制度等を開始します」(2024年3月15日)https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/2024/240315.html(2026年10月8日、ページ本体は403で開けず。内容は上記の信用保証協会側の資料で確認) - 経済産業省・金融庁・財務省「経営者保証改革プログラム」(2022年12月23日)https://www.fsa.go.jp/news/r4/ginkou/20221223-3/01.pdf(2026年10月8日、原文を読んで公表日・専用窓口(2023年4月〜)・説明義務の記述を確認)