廃業の相談先と事業再生の選択肢
- 中小企業活性化協議会は国が47都道府県に設置する公正中立な機関で、第一次(窓口相談)は無料、第二次で外部専門家を使う場合のみ活動費の一部を負担する(中小企業基盤整備機構)
- よろず支援拠点は国(中小企業庁)が設置する無料の経営相談所で、何度でも無料、電話・メール・オンラインにも対応する(中小企業基盤整備機構)
- 「廃業時における経営者保証ガイドラインの基本的考え方」は2022年3月に策定され2023年11月22日に改定、要件を満たせば一定期間の生計費相当額や華美でない自宅等も保証人の残存資産に含まれ得る(日本弁護士連合会)
- 経営者保証の相談窓口として日弁連の「ひまわりほっとダイヤル」(0570-001-240・平日10〜12時/13〜16時)がある(日本弁護士連合会)
- 日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金(再挑戦支援関連)は廃業歴等を有する個人・経営者の法人が対象で、融資限度額7,200万円、返済期間は設備資金20年以内・運転資金15年以内(いずれも据置5年以内)(日本政策金融公庫)
- 東京商工会議所の経営安定特別相談室は破産・倒産の不安を抱える中小企業向けの無料相談窓口で秘密厳守を掲げる(東京商工会議所)
この記事の内容
この記事は、資金繰りが行き詰まり「もう畳むしかないのでは」と考え始めた経営者・個人事業主に向けて書いています。 結論から言うと、廃業は一人で決める前に相談できる手続きです。国が設置した無料の窓口があり、事業を続ける道が残っているかどうかも、畳むにしてもどう畳めば再スタートしやすいかも、そこで一緒に整理できます。自己判断で先に取引先や金融機関への連絡を進めてしまうと、後から使えたはずの選択肢が使えなくなることがあります。
- 資金繰りがこれ以上もたない気がしていて、頭の中で「廃業」の二文字がずっと消えない
- 誰に相談すればいいのか分からない。税理士や銀行に話すのが怖い
- もし畳むとしても、借金や保証をどうすればいいのか、次にまた事業ができるのか見当がつかない
結論:廃業は一人で決める前に相談できる手続き
「廃業」という言葉には、静かに一人で決めて終わらせるイメージがあるかもしれません。しかし実際には、廃業を決める前の段階で相談できる公的な窓口が複数あります。中小企業活性化協議会は事業を続ける道(収益力改善・事業再生)と、続けるのが難しいと判断した場合の再チャレンジ支援の両方を扱う機関で、国が47都道府県に設置しています(中小企業基盤整備機構)。相談自体は無料で、内容が取引先や金融機関に伝わることもありません。「畳むかどうか」を決める前に、まずここで状況を整理できます。
なぜ先に相談するのか|自己判断が選択肢を狭める理由
資金繰りが厳しくなると、経営者は自分の判断だけで「支払いを止める」「取引先に事情を話す」「金融機関への返済を延ばす」といった行動を先に取ってしまいがちです。これ自体が悪いわけではありませんが、順番を間違えると、後から専門家が入ったときに使えたはずの選択肢が狭まることがあります。
たとえば、経営者個人が会社の借入に連帯保証をしている場合、廃業の進め方によって保証人に残せる資産の範囲が変わってきます(後述の経営者保証ガイドラインの特則)。また、事業を続けられる余地があるかどうかも、資金繰り表や決算書を専門家が見て初めて分かることが多く、経営者本人の体感だけでは「もう無理」と「まだ手はある」の境目を正確に判断しにくいのが実情です。だからこそ、行動を起こす前に、無料で相談できる窓口へ先に連絡することが最初の一歩になります。
相談先の一覧表
廃業や事業再生に関わる主な公的相談先を整理すると、次の通りです。
| 相談先 | 何を相談できるか | 費用 |
|---|---|---|
| 中小企業活性化協議会 | 収益力改善・事業再生・再チャレンジ支援(廃業を含む) | 第一次(窓口相談)は無料。第二次で外部専門家を使う場合のみ活動費の一部を負担 |
| よろず支援拠点 | 資金繰り・経営改善など経営全般の相談窓口(何度でも利用可) | 無料 |
| 商工会議所・商工会 | 経営相談全般。破産・倒産の不安がある場合の専門相談窓口を設ける会議所もある | 原則無料(地域・会議所により対応が異なる) |
| 日弁連「ひまわりほっとダイヤル」 | 経営者保証の整理や弁護士への取り次ぎ | 電話相談は無料 |
| 税理士・弁護士(顧問がいる場合) | 決算・税務、法的な整理手続き(破産・特定調停等)の実務 | 有料(事務所により異なる) |
中小企業活性化協議会とは|3段階の支援
中小企業活性化協議会は、2022年4月1日に旧・中小企業再生支援協議会と経営改善支援センターが統合してできた、国設置の公正中立な機関です(中小企業庁「中小企業活性化パッケージ」2022年3月4日公表/中小企業基盤整備機構)。支援の内容は大きく3つに分かれます。
- 収益力改善支援 — 収益力が落ちている段階で、計画を作って立て直しを図る
- 事業再生支援 — 事業を続けながら金融機関の支援(返済条件の見直し等)を得て再建を図る
- 再チャレンジ支援 — 事業の継続が極めて難しいと判断された場合でも、円滑な廃業と経営者の再スタートを支援する
つまりこの協議会は「まだ続けられるか」を一緒に見極める段階から、「畳むと決めた後」の支援まで、両方をカバーしています。相談は都道府県ごとの窓口、または中小企業活性化全国本部(事業承継・再生支援部 事業再生支援課、電話03-5470-1477)で受け付けています(中小企業基盤整備機構)。
経営者に保証(連帯保証)があるとき|廃業時ガイドラインで何が変わるか
会社の借入に経営者個人が連帯保証をしている場合、廃業の進め方によって、保証人である経営者に残せる資産の範囲が変わります。ここを知らずに手続きを進めると、本来残せたはずの生活基盤まで失う可能性があります。
「廃業時における経営者保証ガイドラインの基本的考え方」は2022年3月に策定され、2023年11月22日に改定されています(日本弁護士連合会)。このガイドラインは、主たる債務者(会社)が廃業しても、保証人である経営者が個人破産を避けられる可能性があることを前提に、金融機関・保証人・弁護士等の支援専門家がそれぞれ取るべき対応を明確にしたものです。一定の要件を満たせば、一定期間の生計費に相当する額や、華美でない自宅等も保証人の残存資産に含まれる可能性があるとされています(日本弁護士連合会)。
このガイドラインを実際に使うには弁護士等の支援が必要になるため、日弁連は経営者保証に関する相談窓口として「ひまわりほっとダイヤル」(0570-001-240、平日10時〜12時・13時〜16時、祝日を除く)を設けています(日本弁護士連合会)。連帯保証がある状態で廃業を検討している場合、この特則の対象になるかどうかを早い段階で確認しておく価値があります。
廃業しても再挑戦できるか|日本政策金融公庫の再挑戦支援資金
一度廃業した経営者が再び事業を始める場合の資金調達手段として、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金(再挑戦支援関連)」があります。対象は「廃業歴等を有する個人、または廃業歴等を有する経営者が営む法人」で、次の条件をすべて満たす必要があります(日本政策金融公庫)。
- 新たに事業を始める方、または事業開始後おおむね7年以内の方
- 廃業時の負債が新事業に影響しない程度に整理される見込みであること
- 廃業の理由がやむを得ないものであること
融資限度額は7,200万円、返済期間は設備資金が20年以内(据置期間5年以内)、運転資金が15年以内(据置期間5年以内)です(日本政策金融公庫)。金利は基準利率が原則ですが、条件に該当する場合は特別利率が適用されることがあります(日本政策金融公庫)。この制度は「廃業したら二度と借りられない」わけではないことを示していますが、廃業時の負債整理の見込みが審査の前提になっている点は押さえておく必要があります。 つまり、廃業の進め方そのものが、次の資金調達のしやすさにも影響します。
どこに、いつ相談するか|順番の目安
相談先が複数あると、どこから動けばいいか迷うかもしれません。目安としては次の順番になります。
- 資金繰りに不安が出始めた段階 — よろず支援拠点、または商工会議所・商工会の経営相談へ。まだ「廃業」と決めていない段階でも相談できる
- 事業の継続が厳しいと感じ始めた段階 — 中小企業活性化協議会へ。収益力改善・事業再生の余地があるかを専門家と確認する
- 廃業を具体的に検討し始めた段階、かつ連帯保証がある場合 — 中小企業活性化協議会での相談と並行して、日弁連「ひまわりほっとダイヤル」で経営者保証ガイドラインの特則が使えるか確認する
- 廃業後、次の事業を考える段階 — 日本政策金融公庫の相談窓口で再挑戦支援資金の対象になるかを確認する
共通しているのは、どの段階も「動く前に相談する」ことです。 支払いを止める、取引先へ事情を話す、金融機関に連絡するといった行動は、専門家に状況を整理してもらってからのほうが、選べる選択肢を減らさずに済みます。
管理部門を統括していた立場から見えたこと
管理部門を統括する立場で資金繰りの数字を見ていると、「もう無理かもしれない」という空気は、実際に資金がショートするよりずっと前に、社内の会議の雰囲気として先に出てくることが多いと感じていました。その段階で外部の相談窓口の存在を知っているかどうかで、その後の選べる手段の幅がかなり変わります。調査した範囲では、廃業に関わる公的窓口はいずれも無料か低コストで利用でき、しかも「まだ続けられるか」の判断そのものを手伝ってくれる設計になっています。早めに一度、話だけでも聞きに行く価値はあります。
次にやること
まず、資金繰りに不安がある時点で、最寄りのよろず支援拠点か中小企業活性化協議会の都道府県窓口に電話をかけてください。 どちらも無料で、相談したこと自体が取引先や金融機関に伝わることはありません。経営者個人が連帯保証をしている場合は、あわせて日弁連「ひまわりほっとダイヤル」(0570-001-240)で経営者保証ガイドラインの特則が使えるかを確認しておくと、廃業を選ぶことになった場合でも、残せる資産の範囲を早い段階から把握できます。
※本記事は2026年9月時点で確認できた中小企業庁・中小企業基盤整備機構・日本政策金融公庫・日本弁護士連合会・東京商工会議所の公表情報をもとにした一般的な整理です。個別の状況によって使える制度や手続きは異なるため、実際の相談・手続きは各窓口や顧問税理士・弁護士に直接確認してください。
出典(2026年9月確認) - 中小企業活性化協議会の概要・支援内容(3段階支援、第一次相談無料、相談窓口):独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小企業活性化協議会による支援」(smrj.go.jp/sme/succession/revitalization/index.html) - 中小企業活性化協議会の設置経緯(旧・中小企業再生支援協議会と経営改善支援センターの統合、2022年4月1日):中小企業庁「中小企業活性化パッケージ」2022年3月4日公表(chusho.meti.go.jp/kinyu/2022/220304.html)。中小企業庁サイトへの直接アクセスは確認時点でブロックされたため、内容の一致は宇都宮市公式サイトの解説(city.utsunomiya.lg.jp)で確認 - よろず支援拠点の概要(国設置・無料・何度でも利用可):独立行政法人中小企業基盤整備機構「よろず支援拠点全国本部」(smrj.go.jp/supporter/yorozu/index.html) - 「廃業時における経営者保証ガイドラインの基本的考え方」の策定・改定時期(2022年3月策定、2023年11月22日改定)、残存資産の考え方、ひまわりほっとダイヤルの連絡先:日本弁護士連合会「『廃業時における経営者保証ガイドライン』の基本的考え方が改定されました」(nichibenren.or.jp/ja/sme/topics/20240208-2.html) - 新規開業・スタートアップ支援資金(再挑戦支援関連)の対象者・融資限度額・返済期間・金利:日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金(再挑戦支援関連)」(jfc.go.jp/n/finance/search/05_rechallenge_m.html) - 経営安定特別相談室(破産・倒産危機回避の無料相談、秘密厳守):東京商工会議所「破産・倒産危機回避の無料相談」(tokyo-cci.or.jp/soudan/antei/)