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取引先が倒産したら売掛金はどうなるか

この記事の結論
  • 破産手続開始後、破産債権は破産手続によらなければ行使できない(破産法100条1項)ため、取引先が破産した売掛金は個別の取立てができず、裁判所が定める届出期間内に債権届出をして配当を待つのが基本(同111条1項)
  • 自社が取引先に対して債務(買掛金等)を負っていれば、破産手続開始の時に相殺適状であることを条件に、破産手続によらず相殺できる(同67条1項。ただし支払不能後に負担した債務等は71条・72条で相殺が制限される)
  • 自社が売った動産がまだ取引先の手元にあれば、動産売買の先取特権が及ぶ(民法321条)が、加工・転売済みだと行使が難しい
  • 支払不能を知った後に自社だけ担保を取ったり優先弁済を受けたりすると、後で破産管財人に否認される可能性がある(破産法162条1項)
  • 無担保の一般債権は配当がゼロか低率にとどまることが多いと業界解説記事で指摘されている(セカンド・オピニオン株式会社ブログ調べ・時点不明のため参考情報)
  • 会社更生法・民事再生法の認可決定等で切り捨てられた金額や、取引停止後1年以上弁済がない売掛債権は、法人税基本通達9-6-1・9-6-3に基づき貸倒損失として損金算入できる
この記事の内容
  1. 結論:個別の取立てはできないが、回収の余地が残る手段もある
  2. まず、動揺する前に確認すること
  3. 倒産手続きにはいくつかの種類がある
  4. 破産の場合、売掛金は「届出て配当を待つ」のが基本
  5. 相殺できる場合がある
  6. 動産売買の先取特権・所有権留保という手段
  7. 慌てて自社だけ回収しようとすると危険な理由
  8. 配当はどれくらい期待できるか
  9. 税務上の対応:貸倒損失として処理できる場合
  10. 取引先倒産に備える制度がある
  11. 次にやること

この記事は、取引先が倒産(破産・民事再生など)したという連絡を受け、自社の売掛金がどうなるのか分からず不安な一人社長・小規模事業者に向けて書いています。 結論から言うと、破産の場合は個別に取り立てることができず、裁判所が定める届出期間内に債権届出をして配当を待つのが基本ですが、相殺や動産売買の先取特権など、状況によっては回収の余地が残る手段もあります。この記事では、倒産手続きの種類ごとの違い、売掛金がどう扱われるか、回収の余地がある手段、慌てて動くと危険なこと、税務上の対応までを順番に説明します。

こんな状態ではありませんか
  • 取引先が倒産したと聞いたが、売掛金がどうなるのか、何をすればいいのか分からない
  • 全額回収できないとしても、少しでも回収できる方法があるなら知りたい
  • 焦って自社だけ何か動くと、かえって不利になるのではと不安がある

結論:個別の取立てはできないが、回収の余地が残る手段もある

取引先が破産手続開始決定を受けると、自社が持つ売掛金(破産債権)は、破産手続によらなければ行使できなくなります(破産法100条1項)。つまり、督促の電話をかけても、内容証明を送っても、法的な回収行為としては意味を持たなくなり、裁判所が定める債権届出期間内に届出をして、破産管財人による配当を待つのが基本の流れです。

ただし、状況によっては個別に回収できる余地が残っています。 自社が取引先に対して買掛金など何らかの債務を負っていれば相殺ができますし(同67条1項)、自社が売った商品(動産)がまだ取引先の手元に残っていれば、動産売買の先取特権(民法321条)を根拠に回収を図れる場合があります。どちらに当てはまるかを早い段階で確認することが、対応の分かれ目になります。

まず、動揺する前に確認すること

ここが要点

取引先の倒産は自社の落ち度ではありません。売掛金が全額戻らないとしても、それは経営判断のミスではなく、相手の資金繰りが破綻したことによる結果です。 まずは事実関係を落ち着いて確認することが、次の一手につながります。

資金繰りへの影響で心身に不調が出ている場合は、この記事の情報より先に、医師や産業医への相談を優先してください。ここから先は、制度としての整理です。

最初に確認すべきは次の3点です。

  • どの倒産手続き(破産・民事再生など)に入ったか、あるいはまだ手続き前(私的整理・任意整理)か
  • 手続きの代理人弁護士または破産管財人からの通知(受任通知、債権届出の案内)が届いているか
  • 自社の売っている商品が、まだ取引先の倉庫や店舗に残っている可能性があるか

倒産手続きにはいくつかの種類がある

「倒産」は法律用語ではなく、実務上の総称です。実際にどの手続きに入るかによって、売掛金の扱いは変わります。

手続き 性質 売掛金の扱い
破産 清算型(会社を清算して終了) 個別回収不可。債権届出をして配当を待つ(破産法100条1項・111条1項)
民事再生 再建型(事業を継続しながら再生) 再生計画認可決定により減額・分割弁済されることが多い
会社更生 再建型(主に大企業向け) 更生計画認可決定により減額・分割弁済されることが多い
私的整理(任意整理) 裁判所を介さない債権者との合意 債権者間の合意内容次第。強制力は弱いが柔軟

自社に届く通知にどの手続き名が書かれているかで、その後に取るべき対応が変わります。特に破産(清算型)と民事再生・会社更生(再建型)では、「事業が続くかどうか」自体が違うため、今後の取引継続の可否を考えるうえでも区別しておく必要があります。

破産の場合、売掛金は「届出て配当を待つ」のが基本

破産手続開始決定があると、破産債権(自社の売掛金を含む)は破産手続によらなければ行使できなくなります(破産法100条1項)。これは、特定の債権者だけが個別に取り立てて得をすることを防ぎ、債権者間の公平を保つための仕組みです。

破産手続に参加して配当を受けるには、裁判所が定めた債権届出期間内に、破産債権の種類・金額・発生原因などを裁判所に届け出る必要があります(同111条1項)。届出をしなければ、配当を受ける権利を含め、破産手続上の権限を得られません。届出をした債権は、破産管財人が認め、他の届出債権者からも異議が出なければ確定します(同124条1項)。

実務上は、破産管財人(代理人弁護士)から、破産手続開始決定と債権届出の案内が郵送で届きます。この通知が来たら、請求書・契約書・納品書など、債権の存在と金額を裏づける資料を揃えて、指定された期間内に届出書を提出してください。期間を過ぎると届出自体ができなくなることがあるため、通知が届いたら早めに準備を始める必要があります。

相殺できる場合がある

自社が取引先に対して何らかの債務(買掛金、預り金など)を負っている場合は、個別の取立てが禁止される原則の例外として、相殺によって事実上の回収を図れます。

破産債権者は、破産手続開始の時において破産者に対して債務を負担するときは、破産手続によらないで相殺をすることができます(破産法67条1項)。破産債権の個別的な権利行使が禁止される中で、相殺だけは例外的に認められている仕組みです。

ただし、相殺には制限もあります。取引先の支払不能を知った後に新たに負担した債務を相殺に使う場合など、一定のケースでは相殺が禁止されています(同71条・72条)。「倒産しそうだと分かってから、慌てて相殺できる状況を作る」行為は認められません。 相殺できるかどうかは、破産手続開始決定より前から存在していた債権債務の関係であることが前提になります。

動産売買の先取特権・所有権留保という手段

自社が取引先に商品(動産)を売っていて、その商品がまだ取引先の手元(倉庫・店舗など)に残っている場合は、動産売買の先取特権という担保権が使える可能性があります。動産の売買の先取特権は、動産の代価及びその利息に関し、その動産について存在します(民法321条)。つまり、売った商品そのものから優先的に代金を回収できる権利です。

また、契約時に所有権留保(代金完済まで商品の所有権は自社に残るという特約)を付けていた場合は、その商品は取引先の財産(破産財団)に属さないため、破産手続によらずに取り戻せる可能性があります(取戻権)。

いずれも、商品が加工されたり転売されたりしていると行使が難しくなるという限界があります。まだ商品が特定できる状態で残っているかどうかを、早い段階で確認する必要があります。契約書に所有権留保の条項があるかも、あわせて確認してください。

慌てて自社だけ回収しようとすると危険な理由

取引先の資金繰り悪化を察知して、他の債権者より先に、担保を取ったり優先的に弁済を受けたりしようとする対応は、後から破産管財人に取り消される(否認される)可能性があります。

破産者が支払不能になった後、または破産手続開始の申立てがあった後にした、既存債務についての担保の供与や債務消滅行為(弁済など)は、その債権者が支払不能または申立ての事実を知っていた場合、破産管財人による否認の対象になります(破産法162条1項1号)。「他の債権者より先に回収できてラッキー」という状態は、後で覆される可能性があるということです。

このため、取引先の経営状況が怪しいと感じた段階で焦って個別対応を進めるより、正規の届出・相殺・先取特権の行使といった、法的に認められた手段の範囲で動くことが、結果的にトラブルを避けることにつながります。

配当はどれくらい期待できるか

破産手続で無担保の一般債権(担保を持たない売掛金など)への配当は、優先的に支払われる税金・社会保険料・従業員の未払賃金などが多額になるケースが多いため、ゼロになるか、あっても低率にとどまることが少なくないと、複数の法律事務所・専門サイトの解説記事で指摘されています。

無担保の一般債権への配当率について、裁判所は公式な統計を公表していない(2026年9月確認)。複数の法律事務所の解説記事は、実務上の体感として「配当率はゼロ%〜5%程度にとどまることが多い」と紹介しているが、調査主体・調査時点・調査方法を明示した一次資料には確認できた範囲では行き着けなかった。あくまで実務家の体感値として参考程度に捉えてください。

いずれにせよ、破産の場合、売掛金の全額回収を前提に資金繰りを組むのは避けたほうがよいというのが実務上の共通した見方です。届出はしつつも、回収できない前提で資金繰りを立て直す動きを並行して進める必要があります。

税務上の対応:貸倒損失として処理できる場合

回収できなくなった売掛金は、一定の要件を満たせば、法人税の計算上、貸倒損失として損金に算入できます。国税庁の法人税基本通達では、主に次の3つの区分が示されています。

通達 内容
9-6-1(法律上の貸倒れ) 会社更生法の更生計画認可決定、民事再生法の再生計画認可決定などにより債権が切り捨てられた場合、切り捨てられた金額を貸倒れとして損金算入できる
9-6-2(事実上の貸倒れ) 法律上は債権が消滅していなくても、債務者の資産状況・支払能力などから見て全額回収できないことが明らかになった場合に、貸倒損失として処理できる
9-6-3(形式上の貸倒れ) 取引停止後1年以上弁済がない売掛債権について、備忘価額を控除した残額を貸倒れとして損金経理できる

取引先が破産して配当がまったく見込めない、あるいは民事再生の再生計画認可決定で債権の一部が切り捨てられたといった場合は、これらの通達に基づいて貸倒処理を検討することになります。どの区分に該当するか、いつの時点で計上すべきかは個別の事実関係によって判断が分かれるため、実際の処理は税理士に確認してください。

取引先倒産に備える制度がある

今回の取引先については届出・相殺・先取特権の範囲で対応するしかありませんが、今後また別の取引先が倒産した際に備える制度として、経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)があります。取引先が倒産した場合、無担保・無保証人で、回収困難となった売掛金債権等の額、または掛金総額の10倍(上限8,000万円)相当額のいずれか少ない方まで、共済金の貸付を受けられる制度です(中小企業基盤整備機構「経営セーフティ共済」2026年9月確認)。掛金の使い道が広がる一時貸付金の仕組みは059で扱っています。

今回の件で「取引先の倒産は自社の資金繰りに直結する」と痛感したのであれば、加入を検討する価値があります。

次にやること

まずは、取引先(代理人弁護士や破産管財人)からの通知を確認し、どの倒産手続きに入っているかと債権届出の期限を把握してください。あわせて、自社が取引先に対して負っている債務(相殺に使えるもの)がないか、まだ取引先の手元に残っている自社の商品がないかを、社内の帳簿・在庫記録で確認してください。この2つが分かれば、次に何ができるかがはっきりします。

当サイト運営者

執行役員として、会社の管理部門を統括していました

執行役員として6年、会社の管理部門を統括する立場にいました。資金繰りの意思決定を経営の側から見てきた経験をもとに書いています。このサイトで紹介するのは手数料の上限を公式に明記している業者だけです。「審査なし」「誰でも通る」を売りにする業者は、載せません。

この記事の作り方: 下書きにAIを使い、法令の条文と官公庁の公式ページに照らして事実確認したうえで公開しています。確認の取れない記述が残る記事は公開せず、一次資料が見つからない箇所は本文にそう書いています。確認の手順を見る →

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