リースバックとは
- リースバックは自社の不動産・設備を売却し、同時に賃貸借契約を結んで使用を継続する資金調達手法(民法上は売買契約+賃貸借契約の組み合わせ)
- 買取価格は仲介市場価格の6〜8割、年間賃料は買取価格の1割前後が相場という住宅リースバック業者の解説がある(2026年9月確認、国土交通省の資料や公的な統計には見当たらない)
- 2024年9月公表の新リース会計基準(企業会計基準第34号、2027年4月1日以後開始事業年度から適用)の適用指針第33号で、セール・アンド・リースバック取引を金融取引(借入扱い)にする条件が定められた
- 国民生活センターは2025年5月に強引な勧誘による住宅リースバック契約のトラブル、2026年8月にリフォーム代金絡みの契約や契約後の家賃値上げ・高額な買い戻し提示のトラブルを注意喚起している
この記事の内容
この記事は、資金繰りに詰まり、自社の工場・店舗・事業用不動産や設備・機械の現金化を検討している経営者・個人事業主に向けて書いています。 結論から言うと、リースバックとは自社が保有する資産を売却して現金化しながら、その資産を賃貸借契約で借り直し、そのまま使い続ける資金調達手法です。所有権は手放しますが、事業の継続に必要な工場・店舗・設備を止めずに資金を確保できる点が、他の資金調達手段との違いです。
- 銀行融資は難しいが、自社の不動産や設備を担保に資金を作れないか調べている
- 「リースバック」という言葉は聞いたことがあるが、住宅向けの話としか知らない
- 事業用の資産を売っても、その場所・設備を使い続けられるのか不安
結論:リースバックは「売って、借りて、使い続ける」資金調達
リースバック(セール・アンド・リースバック)とは、企業や個人が保有する不動産・設備などの資産をリースバック事業者やリース会社に売却し、同時にその資産を対象とした賃貸借契約(または再リース契約)を結んで、引き続き使用を継続する取引です。民法上は「売買契約」(民法555条)と「賃貸借契約」(民法601条)を組み合わせた仕組みにあたります。銀行融資のように審査に時間をかけて借入枠を作るのではなく、すでに保有している資産を現金化する点が、他の資金調達手段と根本的に異なります。
なぜ今、リースバックが検討されるのか
資金繰りが苦しくなったとき、まず検討されるのは銀行融資やファクタリングですが、どちらも「これから入ってくるお金」を前提にした調達方法です。一方でリースバックは、すでに自社が保有している不動産や設備という「今ある資産」を現金に変える手段です。決算が赤字続きで銀行融資の審査が厳しい局面や、税金の滞納で資金調達の選択肢が限られている局面でも、資産そのものに価値があれば検討できる余地がある点が、他の手段と違うところです。ただし、対象の不動産に抵当権や差押えの登記が付いていると、事業者の買取条件が変わります。【各自確認:自社の不動産に抵当権・差押えの登記が付いていないか。法務局で登記事項証明書を取って確認】
リースバックの仕組み:2つの契約が同時に成立する
リースバックは「売る」で終わりません。売却と同時に賃貸借契約を結ぶところまでが1セットです。 売るだけなら通常の資産売却であり、リースバックとは呼びません。
手続きの流れは、おおむね次の順に進みます。
- リースバック事業者・リース会社に相談し、対象資産の査定を受ける
- 買取価格・賃料(リース料)・契約期間の提示を受ける
- 売買契約と賃貸借契約を同時に締結する
- 決済日に所有権が事業者側に移転し、同日から賃貸借(リース)が始まる
- 契約期間中は賃料を支払いながら、これまでと同じ場所・設備を使用し続ける
不動産のリースバックでは、家を売却する「不動産売買契約」と「賃貸借契約」の2つを結びます(国土交通省「住宅のリースバックに関するガイドブック」令和4年6月発行、2026年9月22日確認。住宅向けの資料で、事業用不動産の契約書について同様の公的資料は見当たらない)。設備・機械の場合は、東京センチュリーの公式ページに「リース契約」の取引と書かれています(2026年9月22日確認)。【各自確認:検討中の事業者に契約書の雛形を見せてもらい、売買契約書と賃貸借(リース)契約書が別々にあるか、契約期間・賃料の改定条件がどう書かれているか】
対象になる資産:不動産・設備・機械・車両
リースバックの対象は住宅に限りません。事業者向けでは、次のような資産が対象になります。
- 事業用不動産:工場・店舗・オフィス・倉庫など
- 機械装置:生産設備・事務用機器など
- 船舶・車両・運搬具:社用車、営業車、配送用トラック、船舶など
- 器具備品:什器・備品など
(不動産以外の対象資産は、東京センチュリー株式会社公式サイトで「機械装置、船舶・車両・運搬具・器具備品など」が対象物件の一例として挙げられている。個別の機種名や不動産の記載は同サイトにはない。2026年9月22日確認)
事業用不動産は、セゾンファンデックスの公式ページが、本社ビル・オフィス・工場・店舗などを対象に挙げ、売却金の使いみちに制約はなく、運転資金・設備投資・納税・借入返済などに使えると案内しています(2026年9月22日確認)。設備・機械については、東京センチュリーの公式ページが、物件を使い続けながら「手元資金を確保」できる取引と説明しています。どちらも事業者1社の案内であり、他社も同じ条件とは限りません。【各自確認:検討中の事業者が、自社の資産の種類(工場・店舗・機械など)を対象にしているか、資金使途に条件があるか。各社の公式ページか見積もりで確認】
比較表:リースバック・不動産担保ローン・ファクタリング
| 項目 | リースバック | 不動産担保ローン | ファクタリング |
|---|---|---|---|
| 対象 | 保有する不動産・設備 | 保有する不動産(担保として提供) | 売掛金(請求書) |
| 所有権 | 事業者に移転する | 自社に残る(担保設定のみ) | 対象外(売掛金を譲渡) |
| 資産の使用継続 | 賃料を払って使用継続できる | 使用継続できる(自社所有のまま) | 資産の使用とは無関係 |
| 資金化のスピード | 査定・現地確認が必要。最短2週間で契約とする事業者の例がある※1 | 審査・登記手続きが必要なため日数がかかる | 最短50分〜2時間と案内する業者の例がある※2 |
| 返済・支払いの形 | 契約期間中、賃料(リース料)を継続的に支払う | 元利均等など、決められた返済を継続する | 返済という概念がない(売却のため) |
| 向いている場面 | 資産を保有し続けたいが、まとまった現金が必要なとき | 資産を手放さずに借入をしたいとき | 手元の売掛金を早期に現金化したいとき |
※1 セゾンファンデックス公式(事業用リースバック)の「最短2週間でご契約」の記載(2026年9月22日確認)。1社の案内で、業界の平均ではありません。 ※2 株式会社ビートレーディング公式サイトの「最短50分」「スタッフ相談で最短2時間」の記載(2026年9月22日確認)。同ページは、午後の申込みは翌営業日になることがあるとも書いています。ファクタリング全体の所要日数を示す公的な統計は見当たりません。
リースバックは「所有権を手放す代わりに一括で現金を得て、使用は継続する」という点で、担保に入れて借りる不動産担保ローンとも、売掛金を売るファクタリングとも性質が異なります。どれが適しているかは、資産を将来買い戻したいか、月々の支払いをどこまで許容できるかによって変わります。
買取価格と賃料の相場
買取価格は仲介市場価格の6〜8割程度、年間賃料は買取価格の10%前後(7〜10%とする記事もある)が目安になるという説明が、複数の住宅リースバック業者・不動産会社の解説記事に出ています(2026年9月22日、検索で確認)。ただし、これは住宅向けの記事に多い数字で、事業用の工場・店舗・設備の相場を示す公的な資料や業者の公表資料は見当たりませんでした。国土交通省のガイドブックにも、買取価格や賃料の割合の記載はなく、「相場から大きく外れていないか、事業者に根拠を聞き、複数の事業者に確認する」よう求めています(2026年9月22日確認)。セゾンファンデックスの事業用ページも、価格は査定・現地確認のうえで個別に示すとしています。
業者の解説記事では、買取価格が市場価格より低くなる理由を、買い取る側が投資として利回りを見込むためと説明しています。「相場より安く売り、その分の賃料を払い続ける」構造になっていることを、契約前に理解しておく必要があります。
会計・税務の扱い
会計処理は、取引の実質によって「売買処理」か「金融処理(借入とみなす処理)」かが変わります。企業会計基準委員会(ASBJ)の企業会計基準適用指針第33号(2024年9月13日公表)は、セール・アンド・リースバック取引について、次のどちらかに当たるときは、資産の譲渡とリースバックを一体の取引とみて金融取引(借入扱い)として処理するとしています(第55項、2026年9月22日、原文PDFで確認)。
- 資産の譲渡が、収益認識会計基準などに従うと損益を認識する「売却」に当たらないとき
- 「売却」には当たるが、リースバックによって、売り手が資産からもたらされる経済的利益のほとんどすべてを享受でき、かつ資産の使用に伴うコストのほとんどすべてを負担することになるとき
どちらにも当たらなければ、資産の譲渡は売却として損益を認識し、リースバックは借り手のリースとして処理します(第56項)。売却価格が明らかに時価でない場合や、賃料が明らかに市場の水準でない場合は、時価や市場水準で損益を計算し直す定めもあります(第57項)。どちらの処理になるかは契約内容の実質判断によるため、個別の取引については顧問税理士・会計士に確認してください。
会計基準そのものも変わります。ASBJは2024年9月13日、新しいリース会計基準(企業会計基準第34号)を公表しました。2027年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用され、2025年4月1日以後開始する事業年度の期首からの早期適用も認められています(企業会計基準第34号第58項、2026年9月22日、原文PDFで確認)。なお、売却益の扱いについて、国際基準(IFRS第16号)のように売却益の一部だけを認識する方式が日本の新基準にもあると説明する記事がありますが、適用指針第33号の原文にはそのような定めは見当たらず、原文は「IFRS第16号と異なる会計処理を定めている」と書いています。
【各自確認:自社の決算で新しいリース会計基準をどう扱うか。顧問税理士・会計士に】
税務上は、資産の売却が売買として扱われれば、譲渡益・譲渡損が計上される可能性があります。一方、譲渡とリースバックの一連の取引が実質的に金銭の貸借と認められる場合は、資産の売買はなかったものとされ、受け取った金額は借入金として扱われます。消費税も同じ考え方で、譲渡代金の支払いの時に金銭の貸付けがあったものとして取り扱われます(リース事業協会「リース取引の税務上の取扱いに関するQ&A【消費税編】」が、法人税基本通達12の5−2−2・消費税法基本通達5−1−9を挙げて説明。2026年9月22日、原文PDFで確認)。金額規模が大きい取引になりやすいため、税務上の扱いも事前に税理士へ相談したうえで契約してください。
メリットとデメリット
メリット
- まとまった資金を一括で得られる。売却金の使いみちに制約はないと案内する事業者がある(セゾンファンデックス公式、2026年9月22日確認)
- 固定資産税は、毎年1月1日時点の所有者に課される税のため(総務省の説明で確認)、売却後は買主側の負担になる。ただし賃料にどう反映されているかは事業者ごとに違うので、見積もりで確認する
- 事業に必要な場所・設備を、賃料を払いながらそのまま使い続けられる
デメリット
- 資産の所有権を失う。将来値上がりしても利益を得られない
- 買取価格が市場価格より低く設定される傾向がある(前述)
- 賃料の支払いが契約期間中続く。総支払額が売却額を上回ることもある
- 契約期間終了後の扱い(再契約・買い戻し・退去)を事前に取り決めておく必要がある
注意点:強引な勧誘とトラブル事例
国民生活センターは、住宅のリースバックをめぐる相談が寄せられているとして、2025年5月21日と2026年8月4日に注意喚起を発表しています。2026年8月4日の発表では、リフォーム工事代金の支払いに困って住宅のリースバックを契約した事例、契約から数年後に家賃の大幅な値上げを求められ応じなければ退去するよう迫られた事例、買い戻しを希望したところ当初の売却額を大きく上回る金額を提示された事例が報告されています(独立行政法人国民生活センター発表資料で確認、2026年9月確認)。これは住宅向けの事例ですが、「相場を知らないまま契約すると不利な条件を押し付けられる」という構図は事業用資産のリースバックでも同じです。
不動産の売買契約には、宅地建物取引業法上のクーリング・オフ(37条の2)が適用されません。これは、宅建業者が売主となって買主を保護する制度であり、リースバックでは資産の所有者側が売主、リースバック事業者側が買主になるため、この制度の保護対象に当たらないためです。国民生活センターの2025年5月21日の発表も「自宅を不動産業者に売却した場合、クーリング・オフはできません」と明記し、国土交通省のガイドブックも、宅建業者への売却にはクーリング・オフが適用されず、違約金が設定されているケースも多く、解約に多額のお金がかかることがあると注意しています(いずれも2026年9月22日確認、住宅向けの資料)。契約前に、複数の事業者から買取価格・賃料・契約期間の見積もりを取り、比較検討することが最低限のリスク対策になります。
実体験:資産を圧縮する判断を見てきた立場から
正直に書きます。私自身がリースバックを利用者として契約した経験はありません。前職では執行役員として管理部門を統括する立場にいましたが、担当していたのはEC事業であり、工場や大型設備のリースバックを検討する場面には直接関わっていません。
ただ、資金繰りが厳しい局面で「保有資産をどこまで圧縮するか」という議論には何度も立ち会いました。資産を持ち続けることが安心材料になる一方で、その資産が現金を生んでいない(むしろ税金・保険料というコストを生んでいる)状態は、資金繰りを圧迫する要因にもなります。リースバックは、この「持ち続けるコスト」と「手放して得られる現金」を天秤にかける判断そのものだと感じています。判断の軸自体は、資産の種類が不動産でも設備でも変わりません。
契約前チェックリスト:見積もりを比べるときに確かめる項目
事業者から見積もりが出たら、次の項目を1つずつ確かめてください。□ は、確かめたら自分で印を付けてください。
□ 買取価格の根拠(査定書や算出の考え方)を書面でもらった □ 買取価格を、複数の事業者の見積もりと並べて比べた(国土交通省のガイドブックも、複数の事業者への確認を勧めている) □ 賃料の月額と、契約期間中に賃料が改定される条件(値上げのルール)が契約書に書いてある(国民生活センターの2026年8月4日の発表に、契約後の家賃値上げの相談事例がある) □ 契約期間と、期間終了後の扱い(再契約・退去・買い戻し)が書いてある □ 買い戻しができる場合、その価格の決め方が書いてある(同発表に、買い戻し額を高く提示された事例がある) □ 中途解約の違約金の有無と金額が書いてある(国土交通省のガイドブックが、違約金の設定に注意するよう求めている) □ 「賃料×契約期間」の総額を出し、受け取る売却額と並べて見た □ 固定資産税・修繕費・保険料を、契約後にどちらが負担するかが書いてある □ 会計・税務の処理について、契約前に顧問税理士へ相談した
出どころ: 国土交通省「住宅のリースバックに関するガイドブック」、国民生活センター2026年8月4日発表(どちらも住宅向けの資料。事業用の契約にも同じ確認が役立つ、というのは本記事の整理です)。
次にやること
まず、自社が売却を検討している資産(不動産・設備)について、複数のリースバック事業者・リース会社から買取価格と賃料の見積もりを取ってください。 そのうえで、契約期間終了後の扱い(再契約・買い戻しの条件)を確認し、会計・税務上の処理について契約前に顧問税理士に相談してから判断してください。
※本記事は2026年9月時点の調査に基づく情報整理です。買取価格・賃料の相場は業者情報であり、公的な統計による裏付けではありません。制度・会計基準の詳細は各公式サイトで最新情報をご確認ください。個別の法的・税務的判断については、弁護士・税理士などの専門家にご相談ください。
出典 - 民法第555条(売買)・第601条(賃貸借)(2026年9月6日、条文原文で確認) - 住宅のリースバックに関するガイドブック|国土交通省(令和4年6月発行) https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001489269.pdf(2026年9月22日、PDF原文で確認) - セール・アンド・リースバック|東京センチュリー株式会社 https://www.tokyocentury.co.jp/jp/business/service/lease/leaseback.html(2026年9月22日確認) - 事業用リースバック|株式会社セゾンファンデックス https://www.fundex.co.jp/business/leaseback/(2026年9月22日確認) - 即日ファクタリング|株式会社ビートレーディング https://betrading.jp/contents/factoring-basic/factoring-sameday/(2026年9月22日確認) - 企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」(企業会計基準委員会、2024年9月13日公表) https://www.asb-j.jp/jp/accounting_standards/y2024/2024-0913.html (第58項の適用時期は、原文PDFで2026年9月22日確認) - 企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」(企業会計基準委員会、2024年9月13日公表) https://www.asb-j.jp/jp/wp-content/uploads/sites/4/lease_20240913_04.pdf (第53〜58項・BC96・IFRS第16号との相違の記載を、原文PDFで2026年9月22日確認) - 固定資産税|総務省 https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/150790_15.html (所有者に課税・賦課期日1月1日。2026年9月22日、検索結果の記載で確認。条文番号の原文確認は未実施) - 自宅の「リースバック」トラブルにご注意!|独立行政法人国民生活センター(2026年8月4日発表) https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20260804_1.html(2026年9月6日確認) - 強引に勧められる住宅のリースバック契約にご注意!(独立行政法人国民生活センター、2025年5月21日発表) https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20250521_1.html(2026年9月6日確認) - 宅地建物取引業法第37条の2(クーリング・オフ、宅建業者が自ら売主となる場合の買受けの申込みの撤回等)(2026年9月6日、条文原文で確認) - リース取引の税務上の取扱いに関するQ&A【消費税編】|公益社団法人リース事業協会 https://www.leasing.or.jp/studies/docs/shohizeiQA.pdf(2026年9月22日、PDF原文で確認。同資料自体は平成20年7月25日公表・平成21年12月14日最終改正の古いQ&Aだが、消費税の取扱いの考え方部分は現行掲載中のものを確認)