経営者保証を外す条件
- 経営者保証に関するガイドライン(平成25年12月、日本商工会議所・全国銀行協会が共同設置した研究会が策定)は、法的拘束力のない自主的な準則だが、①法人と経営者の関係の明確な区分・分離、②財務基盤の強化、③適時適切な情報開示による経営の透明性確保、という3要件を満たせば経営者保証を求めない可能性を金融機関が検討するとしている(ガイドライン原文、全国銀行協会公式サイトで確認)
- 既存の保証契約についても「解除等の申入れ」ができ、対象債権者は真摯かつ柔軟に検討し結果を説明することとされている(同ガイドライン6項)
- 2022年12月23日公表の「経営者保証改革プログラム」により、金融機関には保証を求める際の理由を個別具体的に説明する義務が課された(金融庁公式サイトで確認)
- 信用保証協会には2024年3月15日から、保証料率0.25%または0.45%の上乗せで経営者保証を不要にできる特例制度がある(中小企業庁・各地信用保証協会公式サイトで確認)
この記事の内容
この記事は、銀行融資や信用保証協会付き融資で経営者保証(代表者の連帯保証)を求められている、あるいはすでに提供している経営者保証を外したいと考えている法人経営者に向けて書いています。 結論から言うと、経営者保証を外せるかどうかは「経営者保証に関するガイドライン」が定める3つの条件——法人と経営者のお金の分離、法人単独での返済能力、正確な情報開示——を満たせているかで決まります。このガイドラインに法的な強制力はありませんが、金融機関が自主的に尊重・遵守するものとして運用されており、既存の保証契約についても「見直しの申入れ」という形で外せる可能性があります。
- 融資を受けるたびに、当たり前のように経営者保証(連帯保証)を求められる
- 会社の業績は安定してきたのに、以前結んだ保証契約がそのまま残っている
- 保証を外してほしいと言っても銀行に応じてもらえるのか、何を準備すればいいのか分からない
結論:3要件を満たせば、新規も既存も保証を外せる可能性がある
「経営者保証に関するガイドライン」(平成25年12月、日本商工会議所と全国銀行協会が共同で設置した研究会が策定)は、中小企業団体・金融機関団体が共通で自発的に尊重・遵守する自主的な準則です(同ガイドライン2項)。法律のように強制力があるわけではありませんが、全国銀行協会・日本商工会議所という業界を代表する団体が共同で策定し、金融庁も金融機関ごとの活用実績を半期ごとに公表して普及を後押ししているため、実務上は多くの金融機関が判断基準として使っています(金融庁公式サイト「経営者保証に関するガイドライン」等の活用実績について、で確認)。
このガイドラインは、経営者保証を求めずに資金調達することを希望する場合、主たる債務者(会社)に次の3つの経営状況が求められるとしています(同ガイドライン4項(1))。
- 法人と経営者との関係の明確な区分・分離
- 財務基盤の強化
- 財務状況の正確な把握・適時適切な情報開示による経営の透明性確保
新規の融資はもちろん、すでに結んでいる保証契約についても、主たる債務者及び保証人は「既存の保証契約の解除等の申入れ」を行うことができ、対象債権者(金融機関)は申入れがあった場合、真摯かつ柔軟に検討し、その結果を丁寧かつ具体的に説明することとされています(同ガイドライン6項(1))。つまり「昔結んだ保証契約だから変えられない」というものではなく、経営の改善を理由に見直しを申し入れること自体は、ガイドライン上想定されている手続きです。
そもそも経営者保証(連帯保証)とは何か
経営者保証とは、中小企業・小規模事業者等の経営者が、会社の借入について個人として連帯保証人になる契約のことです(ガイドライン「はじめに」)。会社が返済不能になった場合、経営者は自分の個人資産(自宅・預金など)を使ってでも返済する責任を負います。
ガイドラインは、経営者保証について「経営への規律付けや信用補完として資金調達の円滑化に寄与する面がある一方、経営者による思い切った事業展開や、保証後において経営が窮境に陥った場合における早期の事業再生を阻害する要因となっているなど、企業の活力を阻害する面もある」と両面性を明記しています(同「はじめに」)。経営者保証があること自体が悪いわけではなく、会社の状況によっては合理性・必要性が認められる場合もある、というのがガイドラインの立場です。
保証を外すための3要件
ガイドライン原文(4項(1))の3要件を、実務でチェックすべき内容に落とし込むと次のようになります。
| 要件 | ガイドラインの記載 | 実務でチェックすること |
|---|---|---|
| ①法人と経営者の区分・分離 | 法人の業務、経理、資産所有等に関し、法人と経営者の関係を明確に区分・分離し、法人と経営者の間の資金のやりとり(役員報酬・賞与・配当・オーナーへの貸付等)を社会通念上適切な範囲を超えないものとする体制を整備する | 会社の経費に経営者の個人的な支出が混ざっていないか。経営者への貸付金・仮払金が残っていないか |
| ②財務基盤の強化 | 財務状況及び経営成績の改善を通じた返済能力の向上等により信用力を強化する | 法人単独の資産・収益力で借入を返済できると判断できる状態か。自己資本・利益水準は十分か |
| ③経営の透明性確保 | 資産負債の状況(経営者のものを含む)、事業計画や業績見通し及びその進捗状況等について、正確かつ丁寧に信頼性の高い情報を開示・説明する | 試算表・資金繰り表などを求められたら適時に出せる状態か。開示した数字と実態にズレがないか |
ガイドラインは、この体制整備の状況について外部専門家(公認会計士・税理士等)による検証を受け、その結果を金融機関に開示することが望ましいとも述べています(同4項(1)①)。3要件は同時にすべて満たす必要があり、どれか1つが欠けている段階では、保証を求めない判断には至りにくいと考えておく必要があります。
金融機関側から見ると、①〜③はどれも「この会社は経営者個人の信用に頼らなくても、会社単独で返済できる」と判断するための材料です。決算書の数字を良くすることだけでなく、日頃から経営者個人と会社のお金をきっちり分けておくことが、保証を外す準備の土台になります。
比較表:新規融資と既存の保証、外し方の違い
| 場面 | ガイドライン上の位置づけ | 実際の動き方 |
|---|---|---|
| これから融資を申し込む(新規) | 4項(2)に基づき、対象債権者が経営者保証を求めない可能性・代替手法(ABL、金利上乗せ等)を検討 | 申込時に3要件の状況を試算表・事業計画とあわせて自ら提示し、保証なしでの調達を希望する意向を伝える |
| すでに結んでいる保証を見直したい(既存) | 6項(1)に基づき、主たる債務者・保証人から解除等の申入れが可能。対象債権者は真摯かつ柔軟に検討し結果を説明 | 経営改善(黒字化・自己資本の積み上げなど)を材料に、取引金融機関へ見直しの申入れを行う |
| 経営者が交代する(事業承継) | 6項(2)に基づき、前経営者の保証を後継者に当然には引き継がせず、必要性を改めて検討 | 後継者は新規契約として3要件を、前経営者は解除の申入れをそれぞれ別個に進める |
いずれの場面でも、金融機関側が一方的に判断するのではなく、経営者側から状況を具体的に説明し、申し入れることが起点になります。何もしなければ、既存の保証契約は自動的には見直されません。
信用保証協会の「経営者保証免除特例制度」という選択肢
信用保証協会付き融資については、2024年3月15日から、保証料率の上乗せを条件に経営者保証を提供しないことを選べる制度が始まっています(中小企業庁2024年3月15日付発表、および東京信用保証協会・愛知県信用保証協会など各地の信用保証協会公式サイトで確認)。
上乗せされる保証料率は、直近の決算で債務超過でなく(純資産の額が0以上)、かつ直近2期の決算で減価償却前経常利益が連続して赤字でない(経常利益と減価償却費の合計が0以上)という2つの要件をいずれも満たす場合は0.25%、いずれか一方のみを満たす場合や設立後2事業年度の決算がない場合は0.45%とされています(愛知県信用保証協会公式サイトで確認)。ガイドラインの3要件を完全には満たせていない段階でも、保証料の上乗せという形でコストを払うことで、経営者保証なしの融資を選べる余地があるということです。さらに、この上乗せ保証料の一部には国による時限的な補助があり、2025年3月31日までの保証申込分は0.15%、2025年4月〜2026年3月の申込分は0.10%、2026年4月〜2027年3月31日の申込分は0.05%が補助される仕組みになっています(中小企業庁公式サイトで確認)。
このほか、銀行のプロパー融資(保証協会の保証がついていない融資)を、経営者保証なしの保証付き融資に借り換える「プロパー融資借換特別保証制度」(取扱期間:2024年3月15日〜2027年3月31日、千葉県信用保証協会公式サイトで確認)や、事業承継を予定・実施した会社向けの「事業承継特別保証」も用意されています。事業承継特別保証は、通常の保証料率(年0.45%〜1.90%)が、中小企業活性化協議会・事業承継/引継ぎ支援センターによる確認を受けると年0.20%〜1.15%に軽減される制度です(埼玉県信用保証協会・静岡県信用保証協会・全国信用保証協会連合会公式サイトで確認)。なお、この軽減後の保証料率に、上記の経営者保証免除特例制度のような国の補助が別途付くという記載は、全国信用保証協会連合会・各地の信用保証協会の公式ページには見当たりません(2026年9月5日確認)。軽減の仕組みは専門家確認による料率引き下げであり、適用後に実際に負担する料率は、申込先の信用保証協会に直接確認してください。
対象となるのは、①保証の申込日から3年以内に事業承継を予定する計画がある法人(未承継)、②2020年1月1日〜2025年3月31日(令和2年1月1日〜令和7年3月31日)に事業承継を実施し、承継日から3年を経過していない法人、のいずれかです(埼玉県信用保証協会・静岡県信用保証協会公式サイトで確認)。②の対象期間について、全国信用保証協会連合会の公式ページは2026年9月5日時点でも「令和2年1月1日から令和7年3月31日までに事業承継を実施した場合に限る」と記載しており、この期間が延長されたという記載はありません。つまり2025年4月以降に事業承継を実施した法人は、公式ページの記載上は②の対象に含まれていません(①の「申込日から3年以内に事業承継を予定する計画がある法人」には該当し得ます)。制度の細目は変わることがあるため、申込み前に必ず最寄りの信用保証協会に最新の受付状況を確認してください。
2023年から銀行に課された「説明義務」を利用する
2022年12月23日、経済産業省・金融庁・財務省は連携して「経営者保証改革プログラム」を策定・公表しました(経済産業省・金融庁・財務省連名の公表資料「経営者保証改革プログラム」原文で確認)。このプログラムは、①スタートアップ・創業、②民間金融機関による融資、③信用保証付融資、④中小企業のガバナンスの4分野を重点分野としています(同)。
この取り組みの一環として、2023年4月から、金融機関が経営者保証を求める場合には、どの部分が十分でないために保証契約が必要となるのか、どのような改善を図れば保証契約の変更・解除の可能性が高まるのかを、個別具体的に説明し、その結果などを記録することが求められるようになりました。金融庁は同じく2023年4月から経営者保証専用の相談窓口も設けており、「金融機関から経営者保証に関する適切な説明がない」といった相談を受け付けています(いずれも経済産業省・金融庁・財務省「経営者保証改革プログラム」原文で確認)。
つまり、融資の際に保証を求められたら「なぜ保証が必要なのか」「何を改善すれば保証なしにできるのか」を金融機関に質問する権利が、制度として後押しされています。曖昧な説明のまま契約書に署名する前に、この2点を具体的に聞いてみることが、次の見直しにつながる材料になります。
事業承継のときに保証はどうなるか
経営者が交代する事業承継の場面は、保証契約を整理する自然な区切りになります。ガイドラインは、主たる債務者が後継者による個人保証を提供することなしに資金調達を希望する場合、後継者にも4項(1)と同じ経営状況(3要件)が求められるとしています(同6項(2)①ロ)。
一方、前経営者との保証契約の解除については、対象債権者は前経営者が引き続き実質的な経営権・支配権を持っているかどうか、他の手段による既存債権の保全状況、法人単独の資産・収益力による返済可能性などを勘案し、適切に判断することとされています(同6項(2)②ロ)。事業を退いた後も前経営者の保証だけが残ってしまうケースもあるため、代表交代のタイミングで前経営者の保証契約の扱いを明確に取引金融機関と確認しておくことが重要です。
やってはいけない2つのこと
1つ目は、保証を外したい気持ちだけを伝え、3要件に沿った資料を示さずに交渉することです。金融機関は感情や希望では判断できません。試算表・資金繰り表・法人と経営者間の資金のやりとりの実態など、3要件に対応する材料を具体的に示すことで、初めて検討の土台に乗ります。
2つ目は、既存の保証契約を「変えられないもの」と思い込んで、見直しの申入れ自体をしないことです。ガイドライン上、申入れは経営者側から行うことが前提になっており、金融機関側から自発的に「保証を外しましょう」と提案してくることは多くありません。経営が改善したタイミングで、自分から申し入れることが出発点になります。
実体験:管理部門を統括した立場から見た保証契約
正直に書きます。私自身が経営者として自社の融資に経営者保証を提供した経験はありません。前職では執行役員として管理部門を統括する立場にいたため、この記事は「保証を求められた側」ではなく、会社として金融機関と融資条件を交渉する側で見てきた事実に基づいて書いています。
その立場で感じていたのは、金融機関との交渉で状況が動くのは、こちらが「お願いする側」から「材料を示す側」に変わったときだった、ということです。決算内容や資金繰りの状況を、聞かれる前からこちらから定期的に開示し、経営者個人の資金の動きについても整理して説明できる状態を作っておいたことで、条件面での相談がしやすくなった場面を何度か見てきました。保証を外す・条件を見直すという交渉は、一度の依頼で決まるものではなく、日頃の情報開示の積み重ねが土台になっているという実感があります。
次にやること
まず、自社が3要件——法人と経営者の資金の分離、法人単独での返済能力、正確な情報開示——のどこまで満たせているかを、直近の試算表を見ながら自分で確認してください。 経営者への貸付金・仮払金が残っていないか、法人と個人のお金が混ざっていないかは、今すぐ確認できます。すでに保証契約がある場合は、決算内容が改善したタイミングで、取引金融機関に「保証契約の見直しを申し入れたい」と直接伝えてください。信用保証協会付き融資であれば、保証料の上乗せで保証を不要にできる特例制度の対象になるかどうかも、あわせて窓口に確認することをおすすめします。銀行の金利や格付けの仕組みは[銀行融資の金利相場|プロパー・保証付き・ビジネスローンの差]、決算書の見られ方は[決算書のどこを銀行は見るか|自己資本と債務償還年数]でそれぞれ詳しく整理しています。
※本記事は2026年9月時点の調査に基づく情報整理です。事業承継特別保証のうち「事業承継を実施済みの法人」向けの対象期間は、2026年9月5日時点の全国信用保証協会連合会公式ページでも「令和2年1月1日〜令和7年3月31日に実施した場合に限る」と記載されており、延長の記載はありません。軽減後の保証料率への国の補助についても公式ページに記載はありません。個別の保証契約の見直し・融資条件については、取引金融機関・信用保証協会にご自身でご確認ください。
出典 - 経営者保証に関するガイドラインの策定主体(日本商工会議所・全国銀行協会が共同設置した「経営者保証に関するガイドライン研究会」)、策定日(平成25年12月)、法的拘束力の位置づけ、3要件(4項(1)、法人と経営者の区分・分離/財務基盤の強化/経営の透明性確保)、既存の保証契約の見直し(6項(1))・事業承継時の対応(6項(2))の各条文:全国銀行協会公式サイト掲載「経営者保証に関するガイドライン」原文 https://www.zenginkyo.or.jp/fileadmin/res/abstract/adr/sme/guideline.pdf - 金融機関ごとの活用実績を半期ごとに公表していること:金融庁公式サイト「『経営者保証に関するガイドライン』の活用実績等について」 https://www.fsa.go.jp/policy/hoshou_jirei/jisseki_kobetsu.html - 経営者保証改革プログラムの公表日(2022年12月23日)、策定主体(経済産業省・金融庁・財務省)、4つの重点分野、金融機関の説明義務(2023年4月〜)、経営者保証専用相談窓口(2023年4月〜):経済産業省・金融庁・財務省連名の公表資料「経営者保証改革プログラム」原文 https://www.fsa.go.jp/news/r4/ginkou/20221223-3/01.pdf - 信用保証協会の経営者保証免除特例制度(2024年3月15日開始)、保証料率上乗せ0.25%/0.45%の要件、上乗せ保証料への国の時限補助(2025年3月31日申込分まで0.15%、2025年4月〜2026年3月申込分0.10%、2026年4月〜2027年3月31日申込分0.05%):中小企業庁公式サイト https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/2024/240315.html 、東京信用保証協会公式サイト https://www.cgc-tokyo.or.jp/info/juyou/keieisyahosyouhuyou_0315.html 、愛知県信用保証協会公式サイト https://www.cgc-aichi.or.jp/guarantee/hojyo/ - プロパー融資借換特別保証制度(取扱期間2024年3月15日〜2027年3月31日):千葉県信用保証協会公式サイト https://www.chiba-cgc.or.jp/guarantee/puropa-karikae/ - 事業承継特別保証(保証料率年0.45%〜1.90%、専門家確認により年0.20%〜1.15%に軽減、対象要件2種類(申込日から3年以内に事業承継予定の計画がある法人/2020年1月1日〜2025年3月31日に事業承継を実施し承継日から3年以内の法人)):埼玉県信用保証協会公式サイト https://www.cgc-saitama.or.jp/system/system21.html 、静岡県信用保証協会公式サイト https://www.cgc-shizuoka.or.jp/hosyo/succession_tokubetsu.html 、全国信用保証協会連合会公式サイト https://www.zenshinhoren.or.jp/model-case/shokei/ (2026年9月5日再確認: ②の対象期間「令和2年1月1日から令和7年3月31日までに事業承継を実施した場合に限る」の記載が維持されており、延長・国の補助の記載なし)