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事業性評価融資とは

この記事の結論
  • 事業性評価融資は融資商品の名前ではなく、決算書の数字だけでなく事業の中身や将来性を見て判断する融資の考え方で、金融庁は2013年9月のモニタリング基本方針以降、金融機関に求めてきた(金融庁資料、2026年9月21日確認)
  • 金融庁の共通ベンチマークには「担保・保証依存の融資姿勢からの転換」があり、選択項目の表現は「過度に依存しない」で、担保ゼロを意味しない
  • 経営者保証は法人と経営者の分離・財務基盤・情報開示の3要件で見られ、金融庁の事例集には事業性評価を考慮して保証を求めなかった事例が2件ある(評価は各金融機関の見解)
  • 2026年5月25日施行の企業価値担保権は別の制度で、借り手は株式会社・持分会社に限られる
  • 相談前に「事業の説明メモ」を1枚用意する
この記事の内容
  1. 結論:事業性評価融資は「融資商品」ではなく「銀行の見方」の名前
  2. 決算書の数字が弱いと感じている人へ
  3. 事業性評価では何を見るのか
  4. なぜ銀行はこの見方を求められているのか
  5. 「担保に頼らない」は「担保がゼロ」ではない
  6. 経営者保証との関係
  7. 2026年5月に始まった「企業価値担保権」は別の制度
  8. 文例:担当者に送る相談メールと事業の説明メモ
  9. チェックリスト:相談前に用意する6つのこと
  10. 次にやること
  11. 参考にした公式ページ

この記事は、決算書の数字に自信がなく、銀行で「担保は? 保証人は?」と聞かれるのが不安な個人事業主・小さな会社の経営者に向けて書いています。 結論から言うと、事業性評価融資とは「決算書の数字だけでなく、事業の中身と将来性を見て判断する融資」という考え方の名前です。担保や保証が一切いらなくなる特別な融資商品ではありません。金融庁の資料をもとに、考え方と、相談の前に自分で用意できるものを整理します。

こんな状態ではありませんか
  • 赤字や債務超過の決算で、銀行に相談しても門前払いになりそうで怖い
  • 「担保に頼らない融資がある」と聞いたが、自分が使えるのか分からない
  • 経営者個人の保証を付けずに借りる道があるのか知りたい

結論:事業性評価融資は「融資商品」ではなく「銀行の見方」の名前

金融庁の資料では、この言葉は「事業性評価に基づく融資」という形で使われています。金融庁が2016年9月に公表した「金融仲介機能のベンチマーク」は、金融機関が自分たちの取り組みを点検する物差しで、共通の項目の1つが「担保・保証依存の融資姿勢からの転換」です。中身は、金融庁の2019年3月の講演資料の一覧によると「事業性評価に基づく融資を行っている与信先数・融資額」を測るものです(金融庁、2026年10月5日確認)。

つまり、「事業性評価融資という商品をください」と申し込むものではありません。同じ融資の相談でも、決算書の数字に加えて事業の中身まで見てもらえるよう、こちらから材料を渡していく、という考え方です。

決算書の数字が弱いと感じている人へ

ここが要点

決算書の数字が弱いとき、「自分は融資に値しない」と感じてしまうのは自然なことです。でも、数字は事業の一部を切り取ったものにすぎません。数字が弱いことと、事業に将来がないことは、同じではありません。

金融庁の2016年の文書には、企業から「金融機関は、相変わらず担保・保証に依存しているなど対応は変わっていない」という声が聞かれる、という記述があります(金融庁「金融仲介機能のベンチマークについて」2016年9月)。同じ文書は、金融機関が「取引先企業の事業の実態をよく理解し、融資やコンサルティングに取り組むこと」が、企業の価値向上や金融機関自身の経営の安定にもつながるとしています。

ただし、見てもらえば借りられる、という話ではありません。融資を出すかどうかは各金融機関が決めます。この記事が扱うのは「見てもらうための準備」で、審査の結果は約束できません。

事業性評価では何を見るのか

決算書中心の見方 事業性評価を加えた見方
見る資料 決算書・試算表・担保の価値 左に加えて、商品・お客様・強み・今後の計画
知りたいこと 過去の数字はどうか これから返済できる力があるか
確かめ方 書類を読む 経営者との対話、工場や店の見学、取引先への聞き取り

金融庁の「経営者保証に関するガイドライン」活用事例集に、実際の見方が2件載っています(事例集は各金融機関の提出資料をもとにしており、評価は各金融機関の見解で金融庁の見解ではない、と断り書きがあります。2026年9月21日確認)。

  • 食肉加工業:赤字と債務超過を抜けて間もなく、財務にはやや不安があった。銀行が定期的な訪問と対話を重ね、独自の製造ノウハウ、小ロット・短納期の強み、介護向けの新商品への設備投資を確認し、将来の返済に問題はないと判断した
  • ガラス加工業:決算資料の開示が乏しく、管理面にも不安があった。銀行は工場だけでなく、了解を得て得意先も訪ね、業界の動きや会社の評判・強みを聞き取り、その結果をもとに既存の保証契約を解除し、無保証で融資した

どちらも銀行の側が事業の中身を確かめに動いた事例です。「数字が弱くても借りられる」という証拠ではなく、事業の中身が判断材料になりうる例、という受け取り方が正確です。

なぜ銀行はこの見方を求められているのか

金融庁の2019年3月の講演資料によると、2013年9月の金融モニタリング基本方針で事業性評価にかかるモニタリングが始まり、2015年9月の金融行政方針でも事業性評価が挙げられ、2016年9月に「金融仲介機能のベンチマーク」(共通5項目・選択50項目)が公表されました。

銀行は、事業性評価に基づく融資をどれだけ行っているかを自分で点検し、開示する立場にあります。銀行にとっても、事業を見て貸すことは「やるべきこと」の1つです。

同じ資料の融資の流れの図では、銀行が「事実情報を集める」段階と、評価を「お客様に返して認識をそろえる」段階があります。こちらの出番は、事実を渡すことと、銀行の見立てを聞いてずれを直すことの2か所です。

「担保に頼らない」は「担保がゼロ」ではない

金融庁のベンチマークの選択項目には「担保・保証に過度に依存しない融資」と書かれています。担保や保証を使うこと自体が禁止されているわけではありません。事業性評価をしても、結果は金融機関ごと・案件ごとに違います。

  • 担保も保証も付かない融資になる
  • 担保は付くが、金額や範囲が小さくなる
  • これまでどおりの担保・保証が付く

「担保なしで借りられる」と期待して行くと、条件が出てからがっかりします。「担保や保証の付き方を、事業の中身も含めて相談したい」という伝え方のほうが、実際の話の進み方に合っています。

経営者保証との関係

経営者本人が会社の借金の保証人になる「経営者保証」については、2013年12月(平成25年12月9日)に「経営者保証に関するガイドライン」が公表されています(金融庁、2026年9月21日確認)。金融庁の事例集で、保証を求めないと判断するときに確認されている点は3つです。

見方 中身
法人と経営者の分離 会社と個人の資産・お金のやり取りが、明確に区分されている
財務基盤 会社だけの資産や収益力で返済できる
情報開示 財産状況などが、適時適切に銀行へ開示されている

先ほどの食肉加工業は、財務基盤が十分とは言えなかったものの、事業性評価で将来の返済に問題ないと判断され、保証なしになりました。残り2つ(分離・情報開示)は満たされていました。事業性評価は、財務基盤の弱さを補う材料として使われたと読むのが正確です。

今日からできる準備は2つです。事業用の口座と個人の口座を分けること。毎月の売上と資金繰りを、銀行に見せられる形で残しておくこと。

2026年5月に始まった「企業価値担保権」は別の制度

「担保に頼らない融資」で検索すると、もう1つ新しい制度が出てきます。2026年5月25日に施行された「事業性融資の推進等に関する法律」です。金融庁のページには、企業価値担保権が「事業の将来性に基づく融資を進めるにあたっての有用な選択肢」として導入されると書かれています。事業性評価とは別物なので、混ぜないでください。

事業性評価に基づく融資 企業価値担保権
位置づけ 銀行の見方・進め方 2026年5月25日に始まった法律上の担保権
担保にするもの 融資ごとに異なる(担保なしの場合もある) 総財産(ノウハウ・顧客基盤などの無形資産を含む事業全体)
借りられる人 制限なし(銀行が判断) 株式会社・持分会社(個人事業主は対象外)
経営者保証 案件ごとに判断 粉飾などがあった場合を除き、利用が制限される

(金融庁「事業性融資の推進等に関する法律説明資料」、2026年9月21日確認)

想定されている利用例は、有形資産に乏しいスタートアップ、経営者保証で事業承継をためらう事業者、事業再生に取り組む事業者です。実際にどこまで使われているかは、今回は確認していません。個人事業主の方はこの制度の対象外なので、まずは前の章までの「事業性評価に基づく融資」が現実的な入り口です。

文例:担当者に送る相談メールと事業の説明メモ

決算書で伝わらない部分は、自分で紙にして渡すのがいちばん早い方法です。【 】を埋めて、そのまま使ってください。

① 面談をお願いするメール

件名:融資のご相談と事業内容のご説明(【会社名または屋号】)

【金融機関名】【支店名】
【担当者名】様

いつもお世話になっております。【会社名または屋号】の【氏名】です。

【使いみち(例:仕入れ資金、設備の入れ替え)】のために、
【金額】円ほどの融資をご相談したく、面談のお時間をいただけないでしょうか。

決算書の数字だけでは伝わりにくい点があるため、
事業の内容を1枚にまとめました。面談の前にお読みいただければ幸いです。

日程は【候補日を2〜3つ】でいかがでしょうか。
よろしくお願いいたします。

【氏名】【電話番号】

② 事業の説明メモ(A4・1枚)

1. 何を売っているか:
2. 主なお客様(売上の割合の目安):
3. 他と違う点(技術・仕入れ・対応の早さなど):
4. 直近の数字が今の状態になっている理由:
5. これからの計画(3年ほどの見通し):
6. 借りたお金の使いみちと、返済のもとになるお金:
7. 会社と個人のお金を分けるために、していること:

4番は、赤字や売上減の理由を正直に書く欄です。書けないところは空けたままで構いません。空欄を持って行き、面談で一緒に埋める形でも問題ありません。

チェックリスト:相談前に用意する6つのこと

□ 事業の説明メモ(上の②)を、書ける範囲で書いた
□ 直近2〜3期分の決算書と、直近数か月の売上が分かる資料を出した
□ 借りたい金額・使いみち・返済のもとを、数字で1行ずつ書いた
□ 事業用と個人の口座を分けているか、分ける予定を書いた
□ 主なお客様・仕入先・強みを、3分で話せるようにした
□ 「担保や保証の付き方も含めて相談したい」と最初に伝えると決めた

事業の整理には、経済産業省の「ローカルベンチマーク」も使えます。金融庁の講演資料でも、事業性評価の結果やローカルベンチマークを見せて対話している取引先の数が、選択項目に挙がっています。経営者・事業・関係者・内部管理体制の4つの視点で整理するもので、全部を埋められなくても、書ける分だけ持って行けば十分です。

次にやること

今日やることは1つだけです。上の②の1番「何を売っているか」と2番「主なお客様」だけを、紙に書く。 2行で構いません。書けたら、取引のある銀行か信用金庫の担当者に、①のメールを送ってください。取引がなければ、電話で「事業の内容も含めて融資の相談をしたい」と伝えるところから始めます。

この記事の内容は2026年9月21日に確認したものです。制度や運用は見直されることがあるため、相談の前に最新の公式ページで確かめてください。融資の可否や、担保・保証が必要かどうかは金融機関が個別に判断します。この記事は、その個別の判断をするものではありません。

参考にした公式ページ

  • 「金融仲介機能のベンチマーク」について|金融庁 https://www.fsa.go.jp/benchmark/index.html (2026年9月21日確認)
  • 金融仲介機能のベンチマークについて(2016年9月公表)|金融庁 https://www.fsa.go.jp/news/28/sonota/20160915-3.html (同)
  • 地域金融機関の金融仲介と事業性評価(2019年3月25日 金融庁講演資料)|財務省九州財務局掲載 https://lfb.mof.go.jp/kyusyu/content/000230157.pdf (同)
  • 「経営者保証に関するガイドライン」の活用に係る参考事例集(令和元年8月改訂版)|金融庁 https://www.fsa.go.jp/status/hoshou_jirei.pdf (同)
  • 経営者保証に依存しない融資慣行の確立に向けた施策等について|金融庁 https://www.fsa.go.jp/policy/hoshou_jirei/index.html (同)
  • 事業性融資の推進(企業価値担保権等)|金融庁 https://www.fsa.go.jp/policy/kigyoukachi-tanpo/index.html (同。令和8年5月25日施行の記載)
  • 事業性融資の推進等に関する法律説明資料|金融庁 https://www.fsa.go.jp/news/r6/sonota/20240719/02.pdf (同)
  • ローカルベンチマーク|経済産業省 https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/sangyokinyu/locaben/ (2026年10月5日、ページ本体には自動取得で到達できず(403)。4つの視点は同ページの検索結果上の掲載内容で確認)

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