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借入金月商倍率の目安

この記事の結論
  • 借入金月商倍率(ヶ月)=借入金残高÷平均月商で計算する経営指標
  • 税理士 松波竜太著『借入は減らすな!』を引用する解説記事では「3〜4ヶ月程度が安全」「月商の6倍(年商の1/2)で注意」「12ヶ月以上は危険水域」という目安が紹介される一方、別の税理士事務所では「6ヶ月超で危険」とするなど事務所によって線引きに幅があり、公的機関による統一基準ではない(2026年9月確認)
  • ザイマニがEDINET開示の上場企業約3,700社のデータから算出した2025年の中央値は全業種1.9ヶ月、業種により卸売業1.0ヶ月〜電気・ガス業9.9ヶ月まで差がある
  • TKC経営指標(BAST)に業種別・黒字企業/欠損企業別の「借入金対月商倍率」データが掲載されている(2026年9月確認、本記事では個別の数値は未取得)
この記事の内容
  1. 結論:借入金月商倍率は「借入金が月商の何か月分か」を表す指標
  2. なぜこの指標が重要なのか:銀行が最初に見る数字のひとつ
  3. 計算式:借入金残高÷平均月商
  4. 目安:3〜4ヶ月・6ヶ月・12ヶ月という3段階
  5. 業種によって「普通の倍率」は大きく変わる
  6. 倍率が高くなりやすいパターン
  7. 倍率が高いときにできること
  8. 次にやること

この記事は、借入が積み重なってきて、銀行融資の審査に通りにくくなってきたと感じている経営者・個人事業主に向けて書いています。 結論から言うと、借入金月商倍率とは「いまの借入金残高が、月商(1か月あたりの売上)の何か月分に相当するか」を表す指標です。この倍率が高いほど、銀行からは「売上規模に対して借入が重い会社」と見られやすくなります。自社の数字が何倍になっているかをまず計算し、目安と照らし合わせることが最初の一歩です。

こんな状態ではありませんか
  • 借入が増えてきて、これ以上借りて大丈夫なのか自分でも分からない
  • 銀行から追加融資を断られ、何を見られて落ちたのか心当たりがない
  • 「借りすぎ」と言われても、何を基準に多い・少ないと判断すればいいのか知らない

結論:借入金月商倍率は「借入金が月商の何か月分か」を表す指標

借入金月商倍率とは、借入金の残高を平均月商で割って、「借入金が月商の何か月分に相当するか」を数値化した経営指標です。単位は「ヶ月」または「倍」で表され、数字が小さいほど売上規模に対して借入が軽く、数字が大きいほど借入が重い状態を示します。決算書の数字だけを見ていても「多いのか少ないのか」は分かりにくいものですが、月商という自社の実力値で割ることで、他社や過去の自社と比較しやすくなります。

なぜこの指標が重要なのか:銀行が最初に見る数字のひとつ

ここが要点

借入金月商倍率は、銀行が融資審査で使う指標のひとつとして複数の税理士事務所の解説記事で紹介されています。ただし、これだけで可否が決まるわけではなく、他の指標(自己資本比率・債務償還年数など)と合わせて総合的に判断されます。

銀行が融資を検討するとき、「この会社は借入をきちんと返せるか」を判断する材料のひとつとして、借入金の規模を売上と比較します。利益や資産だけでなく、日々の商売の規模(月商)に対して借入がどれくらい重いかを見ることで、返済負担の目安をつかむためです。倍率が高い状態が続くと、追加の融資審査で慎重に見られやすくなる、という指摘が複数の解説記事に見られます(具体的な社内基準は金融機関ごとに異なり、公表されていません)。

計算式:借入金残高÷平均月商

計算式は次のとおりです。

借入金月商倍率(ヶ月) = 借入金残高 ÷ 平均月商

  • 借入金残高:決算書(貸借対照表)の「短期借入金」「長期借入金」の合計。有利子負債とほぼ同じ意味で使われます。
  • 平均月商:年間売上高 ÷ 12。季節変動が大きい業種では、直近数か月の平均を使う場合もあります。

具体例で計算してみます。年間売上高が1億2,000万円、借入金残高が2,000万円の会社の場合、

  • 平均月商 = 1億2,000万円 ÷ 12 = 1,000万円
  • 借入金月商倍率 = 2,000万円 ÷ 1,000万円 = 2.0ヶ月

この会社は「借入金が月商2か月分」の状態にある、と読みます。

目安:3〜4ヶ月・6ヶ月・12ヶ月という3段階

借入金月商倍率には、公的機関が定めた統一基準はありません(2026年9月確認)。ただし、複数の税理士事務所の解説記事では、おおむね次のような目安が紹介されています。

倍率の目安 見方
3〜4ヶ月程度 安全水準といわれる
6ヶ月程度(年商の約1/2) 注意水準・借入限度の目安といわれる
12ヶ月以上 危険水域といわれる

(出典:税理士 松波竜太著『借入は減らすな!』あさ出版を引用する井上寧税理士事務所・藤原淳税理士事務所の解説記事。2026年9月確認)

ただし、この「12ヶ月」という危険水域の数字は、上記の書籍を引用する解説記事に見られるもので、税理士事務所の解説記事すべてが同じ数字を使っているわけではありません。あが税理士法人・行政書士西澤事務所の解説記事では「6ヶ月を超えると危険」というより厳しい目安が示されており、事務所によって「どこからが危険か」の線引きに幅があります(2026年9月確認)。TKC経営指標(後述)を出典として明記した解説記事は見当たりませんでした。

これらはあくまで「目安」であり、金融機関ごとの内部基準や、次の見出しで説明する業種差によって、同じ倍率でも評価が変わります。自社の倍率が6ヶ月を超えているからといって即座に危険というわけではなく、逆に3ヶ月以内だから安心とも言い切れません。あくまで「立ち止まって確認する目安」として使う数字です。

業種によって「普通の倍率」は大きく変わる

借入金月商倍率は、業種によって水準が大きく異なります。ザイマニが公開している、EDINET開示の上場企業約3,700社(金融業を除く)のデータをもとに算出した2025年の中央値は次のとおりです(出典:ザイマニ「借入金月商倍率の計算式・業種別の目安をわかりやすく解説」。2026年9月確認)。

業種 借入金月商倍率(中央値)
全業種 1.9ヶ月
建設業 1.0ヶ月
卸売業 1.0ヶ月
情報・通信業 1.3ヶ月
小売業 1.7ヶ月
陸運業 5.6ヶ月
不動産業 7.3ヶ月
電気・ガス業 9.9ヶ月

不動産業や電気・ガス業のように、設備投資が大きく資金回収に時間がかかる業種は、もともと倍率が高くなりやすい傾向があります。一方、卸売業や建設業のように在庫や工事代金の回転が早い業種では、倍率は低めに出やすくなります。

この数字はいずれも上場企業のデータであり、中小企業・個人事業主の実態とは前提が異なる点に注意が必要です。 中小企業向けには、TKC経営指標(BAST)に、同一の考え方の指標である「借入金対月商倍率」が業種別・優良企業/黒字企業/欠損企業(赤字企業)別に収録されています(出典:TKCグループ「収録業種・分析項目」ページ。2026年9月確認)。自社に近い規模・業種の数字を確認したい場合は、顧問税理士を通じてTKC経営指標を参照することをお勧めします(本記事では個別の数値までは確認していません)。

倍率が高くなりやすいパターン

調査した範囲では、次のような状況で借入金月商倍率が上がりやすいという指摘が見られます。

  • 売上が減ったのに借入額を維持・追加した:分母(月商)が縮んだ分、倍率は自動的に上がります。
  • 設備投資を借入で賄い、投資額に対して売上の伸びが追いついていない:大きな借入をした直後は一時的に倍率が跳ね上がります。
  • 赤字が続き、運転資金の穴埋めのために借入を重ねた:利益で返せない状態が続くと、借入残高だけが積み上がります。
  • 複数の金融機関・ノンバンクから借り増しを重ねた:1件ごとの返済負担は小さく見えても、合計すると倍率が大きく上がっていることがあります。

設備投資や季節要因による一時的な上昇であれば、その後の売上回復とともに倍率は下がっていきます。倍率が上がった原因が「投資」なのか「赤字の穴埋め」なのかを区別して見ることが、次の対策を考えるうえで重要です。

倍率が高いときにできること

自社の借入金月商倍率が目安より高いと分かった場合、次のような選択肢が考えられます。

  • 借入の一本化を検討する:複数の借入をまとめることで、金利負担や返済スケジュールを整理できる場合があります。
  • 資金繰り表を作り、月商の実態を正確に把握する:平均月商の計算が粗いままだと、倍率の数字自体が実態とずれます。
  • 新規の借入前に、既存の借入残高と月商を確認する:借入を追加する前に、追加後の倍率がどう変わるかを試算しておくと、審査での説明もしやすくなります。
  • 銀行融資を断られた場合の資金調達の順番を確認する:倍率が高い状態で無理に新規借入を探すより、まず自社の状況を正確に説明できる状態を整えることが先です。

倍率を下げる特効薬はなく、基本的には「売上を伸ばす」「借入を減らす」「両方を同時に進める」のいずれかしかありません。まずは自社の数字がどの水準にあるかを把握することが出発点になります。

次にやること

直近の決算書から「借入金残高」と「年間売上高」を取り出し、借入金残高÷(年間売上高÷12)を計算して、自社の借入金月商倍率を出してください。その数字を、本記事の目安表および自社の業種と照らし合わせ、6ヶ月を超えている場合は、顧問税理士に相談してTKC経営指標の業種別データと比較することをお勧めします。

Sources: - 借入金月商倍率の計算式・業種別の目安をわかりやすく解説 | ザイマニ - 借入金は自社にとって適正な水準となっていますか?「借入金月商倍率」で確認できます | 井上寧税理士事務所 - 借入金月商倍率とは借入金が過剰になっていないか?いくらまで借入ができるか?を判断する際の経営指標です | 井上寧税理士事務所 - 借入金月商倍率とは | 藤原淳税理士事務所 - 【経営指標】「借入金月商倍率」 | あが税理士法人 - 借入月商倍率って何?経営者が知っておくべき資金繰りの重要指標 | 行政書士西澤事務所 - 収録業種・分析項目 | TKC経営指標(BAST) | TKCグループ - ラインナップ | TKC経営指標(BAST) | TKCグループ

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