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毎月の返済額はいくらまでなら安全か

この記事の結論
  • 借入金の返済原資は「税引後当期純利益+減価償却費」で計算する(簡易キャッシュフロー、中小企業庁「返済原資の計算」に基づく整理、2026年9月確認)
  • 年間の返済可能額の大原則は「返済原資 ≧ 年間借入金返済額」で、毎月の返済額の上限の目安は返済原資を12で割った額
  • 借入総額を返済原資で割った「債務償還年数」が10年以内かどうかは、金融機関が返済能力を見るときの目安として複数の専門家解説に共通する(法令上の基準ではない)
この記事の内容
  1. 結論:毎月の返済額の上限は「返済原資÷12」
  2. 返済原資とは何か:税引後利益+減価償却費
  3. なぜ減価償却費を足すのか
  4. 債務償還年数:借入総額を返済原資の何年分で返せるか
  5. 計算例:自社の返済可能額と債務償還年数を出す
  6. チェックリスト:自社の返済額を確認する手順
  7. 返済額が返済原資を超えているときにやること
  8. 文例:返済条件の見直しを金融機関に相談する
  9. 実体験:新規融資の前に返済原資を試算していた立場から
  10. 次にやること

この記事は、新しく融資を受けようとしている、または今の毎月の返済額が重いと感じ始めた個人事業主・中小企業の経営者に向けて書いています。 「月商のどれくらいまでなら借りていいか」という感覚的な話ではなく、決算書の数字から「毎月いくらまでなら安全に返せるか」を計算する方法を、計算例・チェックリスト・文例つきで整理します。

こんな状態ではありませんか
  • 新しく借入をしたいが、毎月の返済額をいくらに設定していいか分からない
  • 今の返済額が重いと感じているが、「重い」を数字で確認したことがない
  • 金融機関に相談する前に、自社の返済能力を自分の言葉で説明できるようにしておきたい

結論:毎月の返済額の上限は「返済原資÷12」

借入金を安全に返せるかどうかの大原則は、「返済原資 ≧ 年間の借入金返済額」 です(中小企業庁「返済原資の計算」の考え方に基づく整理、2026年9月確認)。返済原資とは、事業が1年間で生み出す現金のうち、返済に回せる部分のことで、決算書の「税引後当期純利益」に「減価償却費」を足して計算します。この返済原資を12で割った額が、毎月の返済額の上限の目安になります。月商の何割、といった感覚的な基準ではなく、まず自社の決算書からこの数字を出すところが出発点です。

返済原資とは何か:税引後利益+減価償却費

返済原資(簡易キャッシュフローとも呼ばれます)の計算式は次の通りです。

項目 内容
税引後当期純利益 決算書(損益計算書)の一番下、税金を引いたあとの利益
+ 減価償却費 建物・車両・機械設備などを購入した際、複数年に分けて費用計上している金額
= 返済原資(簡易キャッシュフロー) 1年間で借入返済に充てられる現金の目安

この計算式は、中小企業庁「中小企業BCP策定運用指針」内の「返済原資の計算」のページで、「I.税引後当期純利益」「II.年間減価償却金額」「III.返済原資合計(I+II)」として示されているものです(中小企業庁「返済原資の計算」、2026年9月確認)。金融機関が融資審査で企業の返済能力を見るときにも、同じ考え方(利益+減価償却費)が使われています。

なぜ減価償却費を足すのか

減価償却費は損益計算書の上では費用として利益を押し下げますが、その費用を計上したタイミングでは現金は出ていきません(設備を購入した時点ですでに現金は支払い済みだからです)。つまり減価償却費の分だけ、実際の利益は決算書に出ている数字より現金として多く手元に残っていることになります。この「実際には出ていっていない費用」を利益に足し戻すことで、1年間に実際に使える現金の目安を出すのが、返済原資の計算です。

債務償還年数:借入総額を返済原資の何年分で返せるか

毎月の返済額そのものに加えて、金融機関が重視するもう1つの指標が「債務償還年数」です。これは、今ある借入金の総額を、1年間の返済原資で割ったもので、「今のペースで返し続けた場合、あと何年で完済できるか」を表します。

債務償還年数 一般的な見方
10年以内 健全な範囲とされることが多い
それを超える場合 借入が返済能力に対して重いと見られやすい

この「10年以内」という数字は、法令や公的機関が定めた統一基準ではなく、複数の税理士・経営コンサルティング会社の解説記事に共通して見られる、金融機関の実務上の目安です(石井税理士・行政書士事務所、税理士法人新日本経営ほか、2026年9月確認)。業種によって設備投資の重さが異なり、製造業など設備投資が重い業種では20年程度が目安とされる場合もあるため、幅を持って捉える必要がありますが、自社の債務償還年数が10年を大きく超えている場合は、新規の借入を積み増す前に立ち止まって確認する価値があります。

計算例:自社の返済可能額と債務償還年数を出す

次の前提で、ある会社の毎月の返済額の上限と、債務償還年数を計算します。

前提項目 設定値
税引後当期純利益(直近期) 200万円
減価償却費(直近期) 100万円
返済原資(簡易キャッシュフロー) 200万円 + 100万円 = 300万円
毎月の返済額の上限の目安 300万円 ÷ 12か月 = 25万円
借入金の残高合計(有利子負債) 1,500万円
債務償還年数 1,500万円 ÷ 300万円 = 5年

このケースでは、毎月の返済額の合計が25万円以内であれば返済原資の範囲内に収まっており、債務償還年数も5年で目安の10年以内に入っています。逆に、既存の返済額と新規借入の返済額を足した合計が月25万円を超える場合、返済原資を上回るペースで借りていることになります(数値はいずれも説明のための仮の設定です)。

なお、返済原資を全額返済に充てる計画は、運転資金の余裕をゼロにすることと同じです。実務上は、返済原資の全部ではなく一定の余裕を残した範囲に返済額を収めておくほうが、売上が落ち込んだ月にも耐えられます。

チェックリスト:自社の返済額を確認する手順

次の手順で、自社の数字を確認してください。

  • □ 直近期の決算書から「税引後当期純利益」を確認した
  • □ 直近期の決算書から「減価償却費」を確認した(製造原価・販管費に分かれて計上されている場合は合算する)
  • □ 上記2つを足して、自社の返済原資(簡易キャッシュフロー)を計算した
  • □ 返済原資を12で割り、毎月の返済額の上限の目安を出した
  • □ 現在の借入金の毎月の返済額の合計(元本のみ)を確認し、上限の目安と比べた
  • □ 借入金残高の合計を返済原資で割り、債務償還年数を計算した(10年以内かどうかを確認)
  • □ 新規の借入を検討している場合、既存の返済額と合算した合計で再計算した

返済額が返済原資を超えているときにやること

計算した結果、毎月の返済額の合計が返済原資の上限を超えていた場合、選択肢は主に3つです。①複数の借入を1本にまとめて毎月の返済額を下げる借換え、②既存の借入について金融機関に返済期間の延長(返済条件の変更)を相談する、③新規の借入や設備投資を見送り、まず返済原資そのものを増やす(利益率の改善・固定費の見直し)ことです。どの選択肢を取るにしても、まず自社の返済原資の数字を持って金融機関に相談することが、交渉の起点になります。

文例:返済条件の見直しを金融機関に相談する

返済額が返済原資に対して重いと分かった段階では、延滞してから相談するのではなく、余裕があるうちに条件変更(リスケジュール)の相談を持ちかけることが重要です。

件名:返済条件の見直しについてご相談(○○株式会社)

○○銀行○○支店
○○様

いつもお世話になっております。

直近の決算内容を踏まえて資金繰り計画を見直したところ、
現在の毎月のご返済額(○○円)が、当社の返済原資に対して
負担が大きくなっている状況を確認いたしました。

つきましては、今後の返済条件について、
月々のご返済額の見直し、または返済期間の延長を
ご相談させていただきたく、ご連絡いたしました。

直近の決算書・資金繰り表をお持ちして
詳細をご説明させていただければと存じます。
ご都合のよい日時をお知らせいただけますでしょうか。

よろしくお願いいたします。

○○(会社名・氏名)
連絡先:○○

条件変更の相談は、延滞が発生する前に行うほど選択肢が広く残ります。延滞後の相談は、金融機関側の判断がより厳しくなる方向に働きやすい点に注意してください。

実体験:新規融資の前に返済原資を試算していた立場から

私の場合

前職ではEC事業会社の執行役員として管理部門を統括しており、新規の借入や設備投資の検討の際には、必ず簡易キャッシュフロー(税引後利益+減価償却費)を試算し、既存の返済額と合算した金額がその範囲に収まるかを確認してから金融機関との交渉に臨んでいました。感覚的に「これくらいなら返せるだろう」という判断ではなく、決算書の数字から返済原資を出しておくと、金融機関との面談でも「なぜその借入額・返済期間にしたのか」を数字で説明でき、交渉がスムーズに進みやすいという実感があります。

次にやること

まず、直近期の決算書から「税引後当期純利益」と「減価償却費」を確認し、両方を足した返済原資を計算してください。 その数字を12で割った額が、毎月の返済額の上限の目安です。現在の返済額の合計、または検討中の新規借入を含めた返済額の合計がこの上限を超えている場合は、上のチェックリストで自社の債務償還年数まで確認したうえで、借換えや条件変更の相談を検討してください。


※本記事は一般的な財務・資金繰りの考え方に基づく整理であり、2026年9月時点の調査によるものです。返済原資の計算式は中小企業庁「返済原資の計算」に基づく整理です。債務償還年数の「10年以内」という目安は法令上の基準ではなく、複数の専門家解説に共通する実務上の目安として整理したものです。自社の具体的な返済計画・金融機関との交渉は、税理士・中小企業診断士など専門家にご相談ください。

出典 - 中小企業庁「中小企業BCP策定運用指針」返済原資の計算(2026年9月13日確認) - 債務償還年数「10年以内」の目安:石井税理士・行政書士事務所、税理士法人新日本経営ほか複数の専門家解説に共通(2026年9月13日確認、法令・公的機関の統一基準ではない)

当サイト運営者

執行役員として、会社の管理部門を統括していました

執行役員として6年、会社の管理部門を統括する立場にいました。資金繰りの意思決定を経営の側から見てきた経験をもとに書いています。このサイトで紹介するのは手数料の上限を公式に明記している業者だけです。「審査なし」「誰でも通る」を売りにする業者は、載せません。

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