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粗利率の見方

この記事の結論
  • 粗利率は「(売上高−売上原価)÷売上高」で計算し、業種によって目安は大きく違う(宿泊・飲食で6〜7割、卸売業で1〜2割程度が中小企業庁「中小企業実態基本調査」の集計にある水準)
  • 粗利率が下がったときに疑う場所は主に「値引き・セールの増加」「仕入原価の上昇」「売れ筋の商品構成の変化」「原価に算入していない費用の見落とし」の4つ
  • 同業他社の平均と比べる前に、まず自社の先月・前年同月と比べて下がったかどうかを確認するのが順番として先
この記事の内容
  1. 結論:粗利率は「(売上高−売上原価)÷売上高」で出す
  2. まず、感覚がずれていても責める必要はない
  3. 粗利率とは何か:営業利益率との違い
  4. 業種別の目安:比較表で見る
  5. 粗利率が下がったときに疑う4つの場所
  6. 計算例:先月と今月を比べて下がった原因を絞り込む
  7. チェックリスト:粗利率が下がったときの確認順序
  8. 実体験:EC事業でセール比率と粗利率のせめぎ合いを見ていた立場から
  9. 次にやること

この記事は、「うちの粗利率は高いのか低いのか分からない」「先月より粗利率が下がった気がするが、どこを疑えばいいのか分からない」個人事業主・中小企業の経営者に向けて書いています。 粗利率という言葉は知っていても、業種によって目安がまったく違うことや、下がったときにどの費目から確認すればいいかは、意外と整理されていません。結論から言うと、粗利率は「(売上高−売上原価)÷売上高」で計算し、下がった原因は「値引き」「仕入原価」「商品構成」「原価の算入漏れ」の4か所のどれかにあることがほとんどです。

こんな状態ではありませんか
  • 自社の粗利率が「普通」なのか「危ない水準」なのか、比べる相手が分からない
  • 試算表を見ると粗利率が下がっている気がするが、どこから確認すればいいか分からない
  • 粗利率と営業利益率の違いがあいまいなまま、なんとなく使っている

結論:粗利率は「(売上高−売上原価)÷売上高」で出す

粗利率(売上総利益率)とは、売上高から売上原価(仕入や材料費など)を引いた「粗利益(売上総利益)」が、売上高に占める割合のことです。次の式で計算します。

粗利率 = (売上高 − 売上原価) ÷ 売上高

たとえば売上高500万円、売上原価300万円なら、粗利益は200万円、粗利率は40%です。この数字は業種によって水準がまったく違うため、同業種の目安と比べて自社が高いか低いかを見たあと、時系列(先月・前年同月)で下がっていないかを確認する、という2段階で使います。

まず、感覚がずれていても責める必要はない

ここが要点

「経営者なら自社の粗利率くらい把握していて当然」と自分を追い込む必要はありません。日々の売上や入金の管理と、粗利率という「率」で構造を捉え直す作業は、頭の使い方が別物です。 忙しい中でこの数字に手が回っていなかったのは、優先順位として自然なことです。あとは試算表から数字を拾って式に当てはめ、下がっている場所を1つずつ確認していく、機械的な作業が残っているだけです。

数字を見るだけで動悸がする、眠れないといった心身の不調が出ている場合は、この記事より先に医師や産業医への相談を優先してください。ここから先は、数字を整理するための手順です。

粗利率とは何か:営業利益率との違い

粗利率は「仕入や原価にかかる費用」だけを引いた利益率で、家賃・人件費・広告費といった販売管理費(販管費)はまだ引いていません。これに対して営業利益率は、粗利益からさらに販管費を引いた「営業利益」を売上高で割った数字です。

指標 引く費用 何が分かるか
粗利率 売上原価(仕入・材料費など)のみ 商品・サービス自体の稼ぐ力
営業利益率 売上原価+販管費(家賃・人件費・広告費など) 会社全体の本業の稼ぐ力

粗利率が同業他社より低くても、販管費を抑えていれば営業利益率で挽回できることもあります。逆に粗利率が高くても、固定費が重ければ営業利益は残りません。粗利率単体では「儲かっているか」までは分からず、あくまで「商品・サービス自体の値付けと原価のバランス」を見る数字だと捉えてください。

業種別の目安:比較表で見る

粗利率の水準は業種によって大きく異なります。中小企業庁「中小企業実態基本調査」令和7年確報(令和6年度決算実績、2026年6月29日公表)のうち、e-Stat公開の統計表「3.売上高及び営業費用 (2)産業中分類別表 1)法人企業」に掲載された業種別の売上高・売上原価から、売上総利益率〔=(売上高−売上原価)÷売上高〕を算出すると次のとおりです(2026年9月16日、原資料から算出)。

業種 売上総利益率(粗利率)の目安
宿泊業、飲食サービス業 66.0%
学術研究、専門・技術サービス業 54.5%
情報通信業 44.9%
不動産業、物品賃貸業 40.5%
生活関連サービス業、娯楽業 34.5%
小売業 29.5%
建設業 25.1%
運輸業、郵便業 24.1%
製造業 20.9%
卸売業 14.4%

飲食・宿泊業の粗利率が高いのは、人件費を売上原価ではなく販管費に計上する会計処理を採る事業者が多いためだと複数の税理士・会計士の解説記事で一致して説明されており(公的機関がこの会計処理の割合を統計として公表している資料は見当たらない、2026年9月16日確認)、「利益が多く残る」という意味ではありません。卸売業のように粗利率が低い業種は、その分を販売数量でカバーする構造になっています。自社の業種の目安と比べて大きくずれている場合、それ自体が良い悪いではなく、価格戦略や商品構成を見直す入口になります。

粗利率が下がったときに疑う4つの場所

同業種の目安と比べるより先に、自社の粗利率が過去(先月・前年同月)と比べて下がっていないかを確認するほうが実務的です。下がっていた場合、原因は主に次の4つのどれかにあります。

疑う場所 起きていること 気づき方の例
値引き・セールの増加 売価を下げて数量を確保している 客単価は横ばいなのに粗利額が減っている
仕入原価の上昇 仕入先の値上げ・為替・原材料費の高騰を売価に転嫁できていない 仕入先からの値上げ通知が来ている、売価は据え置き
商品構成(ミックス)の変化 粗利率の低い商品・サービスの比率が増えた 売上は伸びているのに粗利率だけ下がっている
原価の算入漏れ・見直し 送料・決済手数料・ロス品などを原価に含めていなかった、または含め方を変えた 前月まで一定だった粗利率が急に動いた

この4つのうち、値引きと仕入原価の2つは日々の営業判断で動きやすく、商品構成と算入漏れの2つは仕組み側の問題であることが多い、という傾向で見分けると原因を絞り込みやすくなります。

計算例:先月と今月を比べて下がった原因を絞り込む

ある月の売上高が600万円、売上原価が360万円だった場合と、翌月に売上高700万円、売上原価が455万円になった場合を比べます。

項目 先月 今月
売上高 600万円 700万円
売上原価 360万円 455万円
粗利益 600万円 − 360万円 = 240万円 700万円 − 455万円 = 245万円
粗利率 240万円 ÷ 600万円 = 40% 245万円 ÷ 700万円 = 35%

売上高は100万円増え、粗利益も5万円増えていますが、粗利率は40%から35%に下がっています。この場合、まず確認するのは「売上が増えた分、値引き販売や粗利率の低い商品の比率が増えていないか」です。増えた売上100万円に対して増えた原価が95万円ということは、増加分だけを見ると原価率が95%(粗利率5%)ということになり、既存分より著しく利益の薄い売り方・仕入れ方が増えたことが分かります。自社の数字で確認する場合は、上の表と同じ順番で先月と今月(または前年同月)の売上高・売上原価を並べ、粗利率の差を出し、差が出た月に何を変えたかを照らし合わせてください。

チェックリスト:粗利率が下がったときの確認順序

  • □ 先月・前年同月と比べて、粗利率が実際に下がっているかを数字で確認した
  • □ その期間にセール・値引き・クーポンなど、売価を下げる施策を行っていないか確認した
  • □ 主要な仕入先から値上げの通知や取引条件の変更がなかったか確認した
  • □ 売れ筋商品・サービスの構成が変わっていないか(粗利率の低いものの比率が増えていないか)確認した
  • □ 送料・決済手数料・ロス品・値引き販売の処理が、売上原価に含まれているか(含め方が前月と変わっていないか)確認した

実体験:EC事業でセール比率と粗利率のせめぎ合いを見ていた立場から

私の場合

前職ではEC事業会社の執行役員として管理部門を統括しており、月次の粗利率を毎月確認する立場にありました。売上の伸びだけを見て「好調」と判断すると、実際には粗利額がほとんど増えていない、というケースもありました。この経験から、売上が伸びた月ほど粗利率もあわせて確認する習慣を持つようになりました。特にECでは、送料や決済手数料をどこまで原価に含めるかという社内の会計処理のルールが変わるだけで、粗利率の数字が動くこともあったため、率の変化を見たときは「本当に儲けの構造が変わったのか、計算のルールが変わっただけなのか」を最初に切り分けるようにしていました。

次にやること

まず、直近2〜3ヶ月分の試算表から売上高と売上原価を並べ、上の計算例と同じ式で月ごとの粗利率を出してください。下がっている月があれば、その月に値引き・仕入価格・商品構成・原価の算入方法のどれかに変化がなかったかを、上のチェックリストの順番で確認してください。同業種の目安と比べるのは、その後で十分です。

当サイト運営者

執行役員として、会社の管理部門を統括していました

執行役員として6年、会社の管理部門を統括する立場にいました。資金繰りの意思決定を経営の側から見てきた経験をもとに書いています。このサイトで紹介するのは手数料の上限を公式に明記している業者だけです。「審査なし」「誰でも通る」を売りにする業者は、載せません。

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