設立1期目の融資はどれが使える?公庫と保証協会と制度融資
- 法人設立1期目でまず選択肢になるのは、決算実績を前提としない日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」と、信用保証協会の創業関連の保証・自治体の制度融資の創業枠で、いずれも「事業開始後間もない」ことを前提に設計された制度(公式サイトで確認)
- 公庫の無担保・無保証人枠は「新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を2期終えていない方」が対象で、設立1期目の法人はこの対象に含まれる(2024年度ニュースリリースで確認)
- プロパー融資や公庫の一般貸付は決算書の実績を前提に審査する制度のため、1期目では対象外になるか、通っても厳しい条件になりやすいとされる(複数の専門家解説、一次情報での明確な基準記載はなし)
- 個人事業から法人成りした場合、「事業開始後7年以内」の起算点が法人設立時か個人事業の開業時かは公庫の公式ページに明記がなく(実務家の解説は「個人事業の開始時点から通算」で一致するが公庫公表の基準ではない)、申込み前に公庫の窓口へ直接確認する必要がある
この記事の内容
この記事は、法人を設立したばかりで、まだ決算を一度も終えていない「1期目」の会社の経営者に向けて書いています。 結論から言うと、1期目に現実的な選択肢になるのは、決算実績を前提としない日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」と、信用保証協会の創業関連の保証・自治体の制度融資の創業枠です。銀行のプロパー融資や公庫の一般貸付は決算書の実績を審査材料にする制度のため、1期目にいきなり申し込んでも対象外になるか、通っても厳しい条件になりやすいと考えておいたほうが計画が狂いません。
- 法人を設立したばかりで、銀行に融資を相談しても「決算を見てから」と言われるのではないかと不安
- 個人事業から法人成りしたが、それまでの実績が融資審査でどう扱われるのか分からない
- どの制度が「1期目でも申し込める」制度なのか、公庫と信用保証協会の違いが整理できていない
結論:1期目に対象になるのは「創業前提」で設計された制度だけ
法人設立1期目は、決算書がまだ1期分も存在しない状態です。金融機関が融資審査でまず見る「過去の決算内容」という材料そのものが無いため、決算実績を前提に設計された融資制度の多くは、そもそも申込みの土俵に乗りません。一方で、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」や、信用保証協会の創業関連の保証、自治体の制度融資の創業枠は、最初から「これから事業を始める方、または始めて間もない方」を対象に設計されているため、決算実績が無いことを理由に門前払いされることはありません。まず自分が使える制度を、この「創業前提かどうか」という軸で絞り込むことが、1期目の資金調達の出発点になります。
決算実績がないことを、引け目に感じなくていい
「まだ決算を1回もしていない会社だから、融資は無理だろう」と最初から諦める必要はありません。創業前提で設計された制度は、決算実績が無いことを前提に審査の材料を組み立てています。 見られるのは過去の実績ではなく、事業計画の具体性と、代表者としてその計画を説明できるかどうかです。
心身に不調が出るほど資金繰りに追い詰められている場合は、この記事の情報より先に、医師や産業医への相談を優先してください。ここから先は、制度の仕組みの整理です。
なぜ1期目はプロパー融資・一般貸付が難しいのか
銀行のプロパー融資や、日本政策金融公庫の「一般貸付」(事業を営むほとんどの業種を対象にした、用途を限定しない基本形の融資)は、過去数期分の決算書をもとに返済能力を判断する制度です。1期目の法人にはこの決算書そのものが存在しないため、金融機関は代表者個人の信用情報や、これから提出される見込みの事業計画書だけで判断せざるを得ず、結果として審査のハードルが上がりやすいとされています。公庫の一般貸付の公式ページ(日本政策金融公庫)には決算年数を条件とする記載はなく、銀行のプロパー融資の審査基準も各行の内部運用であり公表されていません。「1期目は一律に対象外」と明文化した一次情報は見当たらず、この記述は複数の創業融資専門メディアの解説に共通する目安です(公的機関・金融機関による統一基準の公表は見当たらない。2026年9月確認)。
「絶対に借りられない」という意味ではなく、「決算実績を前提にした審査には材料が足りない」という構造の問題だと理解しておくと、最初からどの窓口に相談すべきかを見誤らずに済みます。
比較表:1期目の法人が検討できる融資
| 制度 | 決算実績なしでも対象か | 融資限度額の目安 | 主な窓口 |
|---|---|---|---|
| 公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」 | 対象(事業開始後おおむね7年以内、うち無担保・無保証人枠は税務申告2期未満が目安) | 7,200万円(日本政策金融公庫公式サイトで確認) | 日本政策金融公庫 |
| 信用保証協会の創業関連の保証 | 対象(創業前後を主な対象とする保証制度) | 3,500万円(一般社団法人全国信用保証協会連合会で確認) | 金融機関経由、または協会窓口 |
| 自治体の制度融資(創業枠) | 対象(自治体ごとに条件あり) | 自治体ごとに異なる(例:東京都「創業」枠は3,500万円、東京都中小企業制度融資の公式ページで確認) | 金融機関、または自治体窓口経由 |
| 公庫「一般貸付」・銀行のプロパー融資 | 対象外になりやすい、または条件が厳しくなりやすいとされる(公表された統一基準はなし) | 一般貸付は運転・設備とも4,800万円が目安(日本政策金融公庫公式サイトで確認) | 公庫の支店、銀行・信用金庫 |
| ビジネスローン | 対象になりやすいが金利は高め | 金融機関・商品ごとに異なる | ノンバンク・銀行系ビジネスローン |
※融資限度額の出典は、日本政策金融公庫公式サイト・一般社団法人全国信用保証協会連合会公式サイト・東京都中小企業制度融資公式ページ、および[日本政策金融公庫の新規開業資金|自己資金なしで通るか][自治体の制度融資の探し方|金利ゼロ台があるのはここ]の出典欄を参照してください。一般貸付・プロパー融資が1期目で対象外になりやすいという扱いは、公庫の公式ページに決算年数を条件とする記載がなく、プロパー融資の審査基準も各行の内部運用のため公表されていません(2026年9月確認。以下は複数の創業融資専門メディアの解説に共通する目安です)。
公庫の新規開業・スタートアップ支援資金
1期目の法人にとって最初に検討すべき制度が、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」です。対象は「新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方」で、融資限度額は7,200万円、返済期間は設備資金20年以内・運転資金10年以内です(公式サイトで確認)。
このうち無担保・無保証人で利用できる枠は、正確には「新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を2期終えていない方」を対象にしています(日本政策金融公庫「創業支援Q&A」公式ページで確認)。法人設立1期目は、税務申告(決算)をまだ一度も終えていない状態にあたるため、この無担保・無保証人枠の対象に含まれます。自己資金については、公庫の公式Q&Aで「自己資金は重要な要素のひとつだが、それ以上に創業計画全体がしっかりしているかが重要」「創業資金総額に占める自己資金の割合は平均で2割程度」と説明されており、必須の自己資金額は明記されていません(日本政策金融公庫「創業支援Q&A」公式ページで確認)。この無担保・無保証人枠は、2024年4月1日付の日本政策金融公庫ニュースリリースにより拡充されており、従来の要件だった「創業資金総額の1/10以上の自己資金があること等」は2024年度に撤廃されています。同時に融資限度額も3,000万円(うち運転資金1,500万円)から7,200万円(うち運転資金4,800万円)に、返済期間も運転資金7年以内から10年以内(原則)に、据置期間も2年以内から5年以内に拡充されました(日本政策金融公庫ニュースリリース「スタートアップサポートプラザの新設について」2024年4月1日付で確認)。詳しい審査のポイントは[日本政策金融公庫の新規開業資金|自己資金なしで通るか]、面談で聞かれることは[創業融資の面談で聞かれること|準備する書類一式]にまとめています。
信用保証協会の創業関連の保証・自治体の制度融資
公庫と並ぶもう一つの柱が、信用保証協会が創業前後の事業者を対象に設計している保証と、それに自治体の利子補給・保証料補助が乗る制度融資です。信用保証協会の創業関連保証の保証限度額は3,500万円です(一般社団法人全国信用保証協会連合会の公式ページで確認)。信用保証協会の基本的な仕組み(保証料・返済不能時の扱い)は[信用保証協会の保証付き融資|プロパー融資との違い]、自治体ごとに条件が異なる制度融資の探し方は[自治体の制度融資の探し方|金利ゼロ台があるのはここ]で整理しています。自治体の制度融資は自治体ごとに限度額・条件が異なり(例えば東京都中小企業制度融資「創業」は3,500万円、東京都中小企業制度融資の公式ページで確認)、全国共通の基準はありません。
公庫の融資と信用保証協会経由の融資は、審査する主体も、保証料の有無も異なる別の制度です。1期目の資金調達では、この2系統を同時に検討し、それぞれの窓口(公庫の支店、取引予定の金融機関、自治体の産業振興課・商工会議所)に個別に相談することをおすすめします。片方が難しくても、もう片方の制度なら通る可能性があります。
個人事業から法人成りした場合の注意点
個人事業として実績を積んだ上で法人を設立した「法人成り」の場合、法人としては1期目でも、個人事業時代の確定申告実績があるという点で、まったくのゼロからの創業とは事情が異なります。
ただし、公庫の「事業開始後おおむね7年以内」という年数のカウントが、法人設立時から数え直されるのか、個人事業の開業時から通算されるのかについて、日本政策金融公庫「創業支援Q&A」公式ページには明記がない(2026年9月確認)。複数の税理士・公認会計士事務所による解説では、「個人事業主として実際に事業活動を始めた時点(開業届の提出日や最初の確定申告日ではなく、仕入れや販売など事業を始めた時点)から通算する」という説明で一致しているが、これは実務家の解釈であり公庫自身が公表した基準ではない。無担保・無保証人枠の対象となる「税務申告を2期終えていない方」という基準についても、法人としての税務申告を指すのか、個人事業主時代の申告実績が影響するのかを明記した公式記載は見当たらない。法人成りをした方は、この年数のカウント方法を窓口(公庫の支店、または信用保証協会)に個別に確認してから申し込むことを強くおすすめします。ここを確認せずに「まだ7年以内だから大丈夫」と思い込んで進めると、想定していた枠の対象外だったという事態になりかねません。
1期目の申し込みで用意しておくもの
- 創業計画書(または事業計画書):1期目は決算書の代わりに、この計画書が審査の中心的な材料になります
- 履歴事項全部証明書(登記簿謄本)・定款:法人としての設立事実を示す基本書類です
- 代表者個人の預金通帳:自己資金の状況や、これまでの資金の動きを確認されます
- 法人の設立時貸借対照表、または試算表:決算をまだ迎えていなくても、設立時点や申込時点の財務状況を示す資料があると説明がしやすくなります
- 代表者の本人確認書類・(法人成りの場合)個人事業時代の確定申告書:法人成りの場合は、個人事業時代の実績を補足資料として持参できると、事業の継続性を説明しやすくなります
実体験:管理部門を統括する立場から見た「実績がない会社」への見方
正直に書きます。私自身が法人を設立して1期目に融資を申し込んだ経験はありません。前職では執行役員として管理部門を統括する立場にいたため、この記事は「借りる側」の体験ではなく、実績のない新規事業や子会社の資金計画を社内で検討・報告する側として見てきた事実に基づいています。
社内で「まだ実績のない新しい取り組み」に予算を通す場面で繰り返し見てきたのは、決裁者が最終的に信頼するのは「過去の実績」ではなく「計画の解像度」だったということです。実績が無い分、計画の前提・数字の根拠・想定外が起きたときの対応まで具体的に説明できるかどうかで、通る計画と差し戻される計画がはっきり分かれていました。1期目の会社が融資を申し込むときも、決算実績が無いことを引け目に感じるより、事業計画の解像度をどこまで高められるかに時間を使うほうが、結果につながりやすいのではないかと感じています。
次にやること
まず、日本政策金融公庫の支店に電話し、「法人設立1期目だが、新規開業・スタートアップ支援資金の対象になるか」を確認してください。 法人成りの場合は、その電話の中で「個人事業の開業時期は、7年以内の判定や税務申告の期数にどう影響するか」も併せて聞いておくと、無担保・無保証人枠の対象かどうかが早い段階で分かります。同時に、取引を考えている金融機関や自治体の窓口にも制度融資の相談を入れ、公庫と信用保証協会系の両方の窓口を並行して動かすことをおすすめします。
※本記事は2026年9月時点の調査に基づく情報整理です。法人成りの場合の「事業開始後7年以内」の起算点は、日本政策金融公庫の公式ページを調べた上で「公式には明記されておらず、実務家の解釈が広まっているだけの運用実態」と判断したものです。一般貸付・プロパー融資が1期目で対象外になりやすいという扱いも同様に、公庫の公式ページ・各行の審査基準を調べた上で「そもそも公表されていない運用実態」と判断したものです。個別の融資判断は、日本政策金融公庫・信用保証協会・取引金融機関にご自身でご確認ください。
出典 - 日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」の対象者・融資限度額(7,200万円)・返済期間は、日本政策金融公庫公式サイト(https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/01_sinkikaigyou_m.html)で確認(2026年9月確認) - 無担保・無保証人枠の対象(「新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を2期終えていない方」)、自己資金に関する公式説明(「自己資金は重要な要素のひとつだが、それ以上に創業計画全体が重要」)は、日本政策金融公庫「創業支援Q&A」公式サイト(https://www.jfc.go.jp/n/finance/sougyou/faq/)で確認(2026年9月確認) - 無担保・無保証人枠の自己資金要件(「創業資金総額の1/10以上の自己資金があること等」)の撤廃、融資限度額(3,000万円→7,200万円)・返済期間(運転資金7年以内→10年以内)の拡充は、日本政策金融公庫ニュースリリース「スタートアップサポートプラザの新設について」(https://www.jfc.go.jp/n/release/pdf/topics_240401b.pdf、2024年4月1日付)で確認(2026年9月確認) - 一般貸付の融資限度額(運転資金4,800万円・設備資金4,800万円)は、日本政策金融公庫公式サイト(https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/jiyusij_m.html)で確認(2026年9月確認)。公庫の融資制度の全体像は[日本政策金融公庫の融資の種類一覧|どれを申し込むか]の出典欄も参照 - 信用保証協会の創業関連保証の保証限度額(3,500万円)は、一般社団法人全国信用保証協会連合会公式サイト(https://www.zenshinhoren.or.jp/model-case/sogyo/)で確認(2026年9月確認)。保証料の基本的な仕組みは[信用保証協会の保証付き融資|プロパー融資との違い]の出典欄を参照 - 東京都中小企業制度融資「創業」の融資限度額(3,500万円)は、東京都中小企業制度融資の公式ページ(https://www.tokyo-sogyo-net.metro.tokyo.lg.jp/finance/seido_yuushi.html)で確認(2026年9月確認)。自治体の制度融資の探し方全般は[自治体の制度融資の探し方|金利ゼロ台があるのはここ]の出典欄を参照 - プロパー融資・一般貸付が1期目で対象外になりやすいという扱いは、公庫の一般貸付・新規開業ページに決算年数を条件とする記載がなく、プロパー融資の審査基準も各行の内部運用のため公表されていないと判断した(2026年9月確認。以下は複数の創業融資専門メディアの解説に共通する目安) - 法人成りの場合の「事業開始後7年以内」の起算点は、日本政策金融公庫「創業支援Q&A」公式サイト(https://www.jfc.go.jp/n/finance/sougyou/faq/)を確認したが明記が見当たらなかった(2026年9月確認)。複数の税理士・公認会計士事務所の解説では「個人事業主として実際に事業活動を始めた時点から通算する」という説明で一致しているが、公庫自身が公表した基準ではない - 実体験部分は運営者本人が前職(執行役員・管理部門統括)で見てきた事実に基づく