小さな会社の資金繰りガイド 苦しくなる前の備えから、危機のときの順番まで
ホーム › 親族借入の契約書
本ページはプロモーションが含まれます

親族借入の契約書

この記事の結論
  • 親族・知人からの借入は、口約束のままだと後日の返済トラブルだけでなく、税務署から「実質的に贈与」と判断されるリスクがある
  • 民法587条の2により書面があれば金銭の受け渡し前でも契約は成立するため、金額に関わらず金銭消費貸借契約書を作るのが基本
  • 契約金額が1万円以上の紙の契約書には印紙税がかかる(国税庁タックスアンサーNo.7140)
  • 無利息または著しく低い利息の貸付は、利子相当額が贈与とみなされる場合がある(国税庁タックスアンサーNo.4420)。年間110万円の暦年贈与の基礎控除内であれば贈与税はかからないが、契約書と実際の返済実績がなければ「形式上の貸借」とみなされるリスクが残る
  • 利息を付ける場合、個人間の貸借にも利息制限法が適用され、元本額に応じて年15〜20%が上限になる
この記事の内容
  1. 結論:契約書は必須、利息の有無で税務リスクが変わる
  2. なぜ口約束ではダメか:民法上の位置づけ
  3. 契約書に最低限書くべき項目
  4. 収入印紙はいくらか
  5. 無利息だと「みなし贈与」になることがある
  6. 利息を付ける場合の上限:利息制限法
  7. 税務署から見て「実質的な貸借」と認められるための実務
  8. 次にやること

この記事は、銀行融資やファクタリング以外の選択肢として、親や親族、知人からの借入を検討している個人事業主・小規模事業者に向けて書いています。 結論から言うと、金額の大小にかかわらず金銭消費貸借契約書を作ること、そして利息をどう扱うかを決めておくことの2点が、後日のトラブルと税務上のリスクを避ける最低条件です。「身内だから口約束でいい」という判断が、後で一番揉めます。

こんな状態ではありませんか
  • 親や兄弟にお金を貸してほしいと頼むことになりそうだが、口約束だけで済ませていいのか分からない
  • 借用書を作るとして、何を書けばいいのか、収入印紙は必要なのか分からない
  • 利息を付けないと「贈与」とみなされて税金がかかると聞いたが、本当かどうか分からない

結論:契約書は必須、利息の有無で税務リスクが変わる

親族・知人からの借入は、銀行融資やファクタリングと違って審査がなく、スピードも早いという利点があります。一方で、次の2点を押さえていないと、後になって「返済したはずなのに贈与と言われた」「揉めて訴訟になった」というトラブルに発展しやすい取引でもあります。

  1. 契約書を作る:金額にかかわらず、貸付日・金額・返済方法・返済期日を書面に残す
  2. 利息をどう扱うか決める:無利息にする場合も、利息を付ける場合も、それぞれに税務上のルールがある

以下、この2点を順に整理します。

なぜ口約束ではダメか:民法上の位置づけ

金銭の貸し借り(消費貸借)は、民法587条により、当事者の一方が金銭を受け取ることによって効力が生じる「要物契約」と定義されています。つまり、口約束の段階では契約として成立せず、実際にお金が渡って初めて成立する、という建て付けです(民法587条)。

2020年4月施行の改正民法では、587条の2として「書面でする消費貸借」が新設されました。これにより、書面(または電磁的記録)があれば、金銭の交付前の合意の時点で契約が成立するようになっています(民法587条の2)。逆に言えば、書面がなければ、金銭を受け取るまで法的な貸し借りの約束にならない、という原則は変わっていません。

口約束のリスクは民法上の成立要件だけではありません。国税庁のタックスアンサーNo.4420「親から金銭を借りた場合」は、「実質的に贈与であるにもかかわらず形式上貸借としている場合や『ある時払いの催促なし』または『出世払い』というような貸借の場合には、借入金そのものが贈与として取り扱われます」としています(国税庁タックスアンサーNo.4420、2026年9月2日確認)。返済期日も金額も決まっていない口約束は、税務署から見ると「実質は贈与だったのでは」と疑われやすい形そのものです。

契約書に最低限書くべき項目

金銭消費貸借契約書に決まった書式はありませんが、後日のトラブルと税務上の疑義の両方を避けるには、最低限次の項目を書面に残す必要があります。

項目 内容
貸主・借主 氏名・住所(署名または記名押印)
貸付日 実際に金銭を受け渡した日
貸付金額 具体的な金額
利率 無利息か、利息を付ける場合は年利何%か
返済方法 一括か分割か。分割なら毎月の金額
返済期日 最終的な完済期日、分割の場合は各回の期日
遅延損害金 期日に遅れた場合の扱い(定めなくても契約は成立するが、記載する例が多い)

金額が大きい場合や、返済期間が長い場合は、司法書士・行政書士など専門家に文面のチェックを依頼するのも選択肢です。

収入印紙はいくらか

金銭消費貸借契約書(金銭借用証書を含む)は、印紙税法上の第1号文書に該当し、紙で作成し契約金額が1万円以上の場合は収入印紙が必要です(国税庁タックスアンサーNo.7140「印紙税額の一覧表」、2026年9月2日確認)。契約金額に応じた税額は次のとおりです。

契約金額 印紙税額
1万円未満 非課税
1万円以上10万円以下 200円
10万円超50万円以下 400円
50万円超100万円以下 1千円
100万円超500万円以下 2千円
500万円超1千万円以下 1万円
契約金額の記載のないもの 200円

なお、電子契約(PDFのやり取りなど)で締結した場合は、紙の現物を作成しないため印紙税は課税されません。これは政府が「文書課税である印紙税においては、電磁的記録により作成されたものについて課税されないこととなる」と国会で答弁していることに基づきます(第162回国会・印紙税に関する質問に対する答弁書、平成17年3月15日、2026年9月2日確認)。印紙を貼り忘れた場合も契約自体は無効になりませんが、原則として過怠税(本来の印紙税額の3倍)の対象になります(国税庁「印紙を貼り付けなかった場合の過怠税」、2026年9月2日確認)。

無利息だと「みなし贈与」になることがある

親族間で借入をする際、「身内だから利息は取らない」という判断をすることは多くあります。ここで注意が必要なのが、無利息貸付に対する税務上の扱いです。

国税庁タックスアンサーNo.4420は、「その借入金が無利子などの場合には利子に相当する金額の利益を受けたものとして、その利益相当額は、贈与として取り扱われる場合があります」としています(国税庁タックスアンサーNo.4420、2026年9月2日確認)。つまり、元本そのものは贈与ではなくても、「本来払うはずだった利息を免除してもらった」部分が、みなし贈与として扱われる可能性がある、ということです。

ここが要点

贈与税には暦年課税の基礎控除があり、1年間に贈与を受けた財産の合計額が110万円以下であれば贈与税はかかりません(国税庁タックスアンサーNo.4408「贈与税の計算と税率(暦年課税)」、2026年9月2日確認)。無利息貸付の場合にみなされる利益額は、通常は借入額と一般的な金利水準から計算される少額にとどまることが多く、実務上は基礎控除の範囲内に収まるケースが多いとされています。ただし、借入額が大きい場合や、他の贈与と合算した場合は基礎控除を超える可能性があるため、金額が大きい借入では税理士に事前相談することをすすめます。

もう1つ重要なのが、無利息かどうかとは別に、「そもそも貸借として認められるか」という論点です。同じタックスアンサーは、返済能力や返済状況などから見て真に金銭の貸借であると認められる場合に限り、借入金そのものは贈与にならないとしています。返済期日も金額も曖昧なまま、実際にも返済が行われていない状態では、無利息かどうか以前に「貸したことになっていない」と判断されるリスクがあります。

利息を付ける場合の上限:利息制限法

利息を付ける場合、金利には上限があります。利息制限法は、貸金業者かどうかにかかわらず、金銭の貸借契約に適用される法律です。元本の金額に応じて、次の上限金利を超える部分の利息の定めは無効になります(利息制限法1条)。

元本額 上限金利(年)
10万円未満 20%
10万円以上100万円未満 18%
100万円以上 15%

親族・知人からの借入で、この上限を超える利率を設定することは通常考えにくいものの、上限があること自体は押さえておく必要があります。なお、業として反復継続的に金銭を貸し付ける場合は貸金業法の登録が必要になりますが、親族・知人への一度限りの貸付が直ちに「業として行う」貸付に該当するものではありません。反復・継続して不特定多数に貸し付けるような実態がある場合は、貸金業に該当しないかどうかを別途確認してください。

税務署から見て「実質的な貸借」と認められるための実務

契約書と利息の扱いを整えたうえで、実務として次の3点を残しておくと、後日「実質は贈与だったのでは」と疑われるリスクを下げられます。

  1. 返済計画に無理がないこと:収入に対して現実的に返せる金額・期間になっているか
  2. 実際に返済が行われていること:現金の手渡しではなく、銀行振込で記録を残す
  3. 契約書に貸主・借主双方の署名(押印)があること:後から作った体裁の書類ではなく、貸付時点で取り交わしたものであること

これらは、国税庁タックスアンサーNo.4420が「返済能力や返済状況などからみて真に金銭の貸借であると認められる場合」という基準を示していることの裏返しです。契約書があっても、返済の実態が伴わなければ、この基準を満たしていると判断されない可能性があります。

次にやること

借りる金額と返済期間が決まったら、まずこの記事の「契約書に最低限書くべき項目」の表をそのまま使って金銭消費貸借契約書を作成し、貸主・借主双方の署名(押印)を取り交わしてください。契約金額が1万円以上で紙の契約書にする場合は、収入印紙の金額もあわせて確認してください。無利息にする場合も利息を付ける場合も、借入額が大きい・返済期間が長いケースでは、贈与税の判断を誤ると後から追徴課税を受けるリスクがあるため、契約書を交わす前に税理士へ一度相談することをすすめます。


出典 - 民法(e-Gov法令検索)第587条・第587条の2(消費貸借・書面でする消費貸借。587条の2は2020年4月1日施行)。条文の解説は民法第587条、民法第587条の2も参照 - 国税庁タックスアンサーNo.4420 親から金銭を借りた場合 - 国税庁タックスアンサーNo.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税) - 国税庁タックスアンサーNo.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで - 国税庁 印紙を貼り付けなかった場合の過怠税 - 第162回国会 印紙税に関する質問に対する答弁書(平成17年3月15日、電磁的記録による契約は印紙税が課税されない旨の政府答弁) - 利息制限法(e-Gov法令検索)第1条(上限金利)

当サイト運営者

執行役員として、会社の管理部門を統括していました

執行役員として6年、会社の管理部門を統括する立場にいました。資金繰りの意思決定を経営の側から見てきた経験をもとに書いています。このサイトで紹介するのは手数料の上限を公式に明記している業者だけです。「審査なし」「誰でも通る」を売りにする業者は、載せません。

この記事の作り方: 下書きにAIを使い、法令の条文と官公庁の公式ページに照らして事実確認したうえで公開しています。確認の取れない記述が残る記事は公開せず、一次資料が見つからない箇所は本文にそう書いています。確認の手順を見る →

この記事に関係する無料の道具(登録不要・その場で使える)
あわせて読みたい