設備はリースと購入どっちが得か
- 資金繰りだけを見れば初期費用が最も小さいのはリース、次に中古購入、最も大きいのが新品購入だが、総支払額は逆順になりやすい
- 中小企業の少額減価償却資産の特例(取得価額30万円未満を即時償却できる制度)は令和8年3月31日までの適用で、令和8年度税制改正大綱では40万円未満への引き上げと令和11年3月31日までの延長が示されているが、国税庁のタックスアンサーには2026年9月6日時点でまだ反映されていない
- 2027年4月1日以後開始事業年度から新リース会計基準が適用されるが、会計監査を受けない中小企業は引き続き「中小企業の会計に関する指針」に基づく賃貸借処理(オフバランス)を選べる
この記事の内容
この記事は、パソコン・複合機・厨房機器・工作機械などの設備投資を検討している一人社長・中小企業の経営者に向けて書いています。 結論から言うと、資金繰りだけを優先するなら初期費用が最も小さいのはリース、次に中古購入、最も大きいのが新品購入です。ただし総支払額(長期で見た支払総額)は逆順になりやすく、資金繰りの余裕と総コストのどちらを優先するかで答えが変わります。
- 設備を新調したいが、まとまった現金を一度に出す余裕がない
- リースにすると割高になると聞いたことがあるが、本当か分からない
- 中古で安く済ませたいが、税務上の扱いが新品と違うのか気になる
結論:資金繰り優先ならリース→中古→新品購入の順
設備投資でリース・新品購入・中古購入のどれを選ぶかは、「今すぐ出せる現金がいくらあるか」と「その設備を何年使うつもりか」の2つで決まります。初期費用の小ささだけを見れば、月々定額のリースが最も資金繰りへの負担が軽く、次に取得価格そのものが安い中古購入、最も重いのが新品を一括または借入で購入する場合です。一方で、リースは金利に相当する費用が月額に上乗せされているため、同じ設備を長く使うほど新品購入(特に自己資金での購入)より総支払額が大きくなりやすい傾向があります。
3つの選択肢の基本的な違い
- リース:リース会社が設備を購入し、自社はリース会社に月々のリース料を支払って使用する契約。所有権はリース期間中もリース会社側にあるのが基本です(リース期間終了後に再リース・返却・買い取りを選べる契約もあります)
- 新品購入:自己資金または銀行融資で新品の設備を一括取得する方法。取得と同時に所有権が自社に移り、減価償却を通じて費用化していきます
- 中古購入:中古市場・リユース業者から設備を取得する方法。取得価格が新品より安く、後述する耐用年数の簡便法によって減価償却の期間を短縮できる場合があります
比較表:リース・新品購入・中古購入
| 観点 | リース | 新品購入 | 中古購入 |
|---|---|---|---|
| 初期費用 | 小さい(月々の支払いのみ。頭金が必要な契約もある) | 大きい(一括なら全額、借入なら頭金・諸費用) | 中程度(新品より取得価格が低い) |
| 月々のキャッシュフロー | 定額で読みやすい | 借入返済がある場合は定額、一括なら発生しない | 借入の有無による |
| 所有権 | リース期間中はリース会社側 | 自社(取得と同時) | 自社(取得と同時) |
| 総支払額の傾向 | 金利相当分を含むため長期では割高になりやすい | 自己資金なら最も安く済みやすい | 新品より安いが、故障・保守費用が別途かかる可能性 |
| 会計・税務処理 | ファイナンスリースは原則資産計上、中小企業は賃貸借処理も可(後述) | 減価償却(耐用年数は法定耐用年数) | 減価償却(耐用年数は簡便法で短縮できる場合がある) |
| 銀行融資枠への影響 | リース会社の与信枠を使うため銀行の借入枠を温存しやすい | 借入を使う場合は銀行の与信枠を消費する | 借入を使う場合は銀行の与信枠を消費する(取得額が小さい分、消費は少ない) |
| 向いているケース | 手元資金を減らしたくない・型落ちが早い設備(IT機器等) | 長期間使う・自己資金に余裕がある | コストを抑えつつ所有権も欲しい・短期間の使用でよい |
リースの会計・税務処理|2027年からの新基準にも触れる
リース取引は会計上「ファイナンス・リース取引」と「オペレーティング・リース取引」に区分されます。オペレーティング・リースは賃貸借処理(支払ったリース料をそのまま費用計上)、ファイナンス・リースは原則として売買取引に準じた処理(リース資産・リース債務を計上し、リース期間定額法などで減価償却)が求められます(企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」)。
ただし、会計監査を受けない中小企業については、日本公認会計士協会・日本税理士会連合会・日本商工会議所・企業会計基準委員会の4団体が公表する「中小企業の会計に関する指針」により、所有権移転外ファイナンス・リース取引でも通常の賃貸借処理(オフバランス)を選べます。多くの中小企業にとって、リース料は「資産計上せず、支払った分だけ費用にできる」扱いのままです。
なお、企業会計基準委員会(ASBJ)は2024年9月13日に企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」を公表しており、2027年4月1日以後開始する連結会計年度・事業年度の期首から、借手のリース取引を原則としてすべてオンバランスで処理する新基準が適用されます(早期適用は2025年4月1日以後開始する連結会計年度・事業年度の期首から可能。ASBJ「企業会計基準第34号『リースに関する会計基準』等の公表」の脚注・適用時期の項目で確認)。同資料の脚注には、中小企業においては「中小企業の会計に関する指針」(日本公認会計士協会・日本税理士会連合会・日本商工会議所・企業会計基準委員会の4団体により公表)または「中小企業の会計に関する基本要領」を用いることができ、企業会計基準(新基準)を適用することも妨げられないと明記されています。自社が新基準の対象になるかは顧問税理士に確認しておくと安心です。
新品購入の税務処理|少額減価償却資産の特例
新品で設備を購入した場合、原則として法定耐用年数にわたって減価償却費として費用化します。ただし、中小企業者等(青色申告書を提出し、常時使用従業員数が500人以下など一定の要件を満たす法人・個人事業主)が取得価額30万円未満の減価償却資産を取得した場合、その事業年度の損金として即時に全額計上できる特例があります(年間の合計取得価額300万円が上限。国税庁タックスアンサーNo.5408で確認)。
この特例は平成18年4月1日から令和8年3月31日までの取得が対象です(2026年9月6日時点の国税庁タックスアンサーで確認)。財務省の令和8年度税制改正大綱では、対象金額を40万円未満に引き上げ、適用期限を3年延長する(現行の令和8年3月31日までの期限を単純に3年延ばすと令和11年3月31日までとなりますが、大綱の本文に「令和11年3月31日」という具体的な期日そのものは明記されていません)ことに加えて、対象法人から常時使用する従業員数が400人を超える法人を除外する(現行の「500人以下」要件を実質的に「400人以下」へ厳格化する)ことも示されています。この内容は2026年9月6日時点で国税庁タックスアンサーにはまだ反映されておらず、正式な適用条件は今後の官報公布待ちです。購入時点で顧問税理士に最新の適用要件を確認してください。
中古購入の税務処理|耐用年数を短縮できる「簡便法」
中古資産を取得した場合、法定耐用年数ではなく、その資産をあと何年使えるかを見積もった「使用可能期間」を耐用年数にできます。見積りが困難なときは、以下の「簡便法」で算定した年数を使うことが認められています(国税庁タックスアンサーNo.5404、耐用年数の適用等に関する取扱通達1-5-1〜4)。
- 法定耐用年数の全部を経過した資産:法定耐用年数の20%に相当する年数
- 法定耐用年数の一部を経過した資産:(法定耐用年数 − 経過年数) + (経過年数 × 20%)
計算結果に1年未満の端数が出た場合は切り捨て、2年に満たない場合は2年とします。ただし、中古資産を事業用に整備するための支出(資本的支出)が取得価額の50%を超える場合は、この簡便法を使えません。耐用年数が短くなれば同じ取得価額でも1年あたりの減価償却費が大きくなり、早いペースで費用化できます。取得価格の低さに加えて、この耐用年数の短縮も中古購入が資金繰り上有利に働きやすい理由です。
資金繰りの視点で見る決め手:銀行融資枠を残せるか
3つの選択肢のうち、資金繰りの観点で最後に確認してほしいのが「どの与信枠を使うか」です。リースはリース会社独自の審査・与信枠で契約するため、銀行からの借入枠を消費しません。運転資金の調達余地を残しておきたい時期に設備投資が重なるなら、設備はリースで確保し、銀行融資枠は運転資金のために温存する使い分けが有効です。逆に、銀行との関係が良好で長期間その設備を使う予定があるなら、金利相当分を含まない新品購入のほうが総コストは抑えられます。中古購入は、初期費用を抑えつつ所有権も持ちたい場合や、立ち上がり期でまず動くものを安く揃えたい場合の選択肢です。判断に迷う場合は、自社の資金繰り表にリース料・借入返済額・減価償却費の各パターンを当てはめ、月々のキャッシュフローがどう変わるかを実際の数字で比較してください。
実体験について
正直に書きます。私自身が個人で設備のリースと購入を比較検討し、契約の意思決定をした経験はありません。前職では執行役員として管理部門を統括していましたが、設備投資の可否は事業部門と経理部門が主導しており、リース会社の見積もりと購入時の借入条件を並べて比較する立場にはいませんでした。この記事は、リース会社・国税庁・企業会計基準委員会などの公式情報を一次情報として整理したものです。
ただ、資金繰りを管理する立場として「まとまった支出を今すぐ出すか、月々の定額に均すか」という判断には、設備投資に限らず繰り返し向き合ってきました。どちらが正解かは総コストだけで決まらず、そのときの手元資金と、他に使いたい与信枠がどれだけ残っているかで変わる、という感覚は実感として持っています。
次にやること
まず、検討している設備の見積もりを、リース会社1社・新品購入時の借入条件・中古購入先の3パターンで揃えて取り寄せてください。 そのうえで、自社の資金繰り表に月々の支払額(リース料・借入返済額)をそれぞれ当てはめ、他の資金需要(運転資金など)を圧迫しないかを確認したうえで契約先を決めてください。少額減価償却資産の特例や中古資産の耐用年数の扱いは、購入時点の最新の制度を顧問税理士に確認してから適用してください。
※本記事は2026年9月時点の調査に基づく情報整理です。会計処理・税務上の特例の適用可否は個々の状況によって異なるため、実際の契約・申告前に顧問税理士へご確認ください。
出典 - No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例|国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5408.htm(2026年9月6日確認) - 令和8年度税制改正の大綱|財務省 https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/08taikou_03.htm(2026年9月6日確認) - No.5404 中古資産の耐用年数|国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5404.htm(2026年9月6日確認) - 第5節 中古資産の耐用年数(耐用年数の適用等に関する取扱通達)|国税庁 https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/sonota/700525/01/01_05.htm(2026年9月6日確認) - 企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」等の公表|企業会計基準委員会 https://www.asb-j.jp/jp/accounting_standards/y2024/2024-0913.html(2026年9月6日確認) - 企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」等の公表にあたって(適用時期・中小企業の取扱いに関する脚注を含む)|企業会計基準委員会 https://www.asb-j.jp/jp/wp-content/uploads/sites/4/lease_20240913_01.pdf(2026年9月6日確認) - 中小会計指針・中小会計要領|日本税理士会連合会 https://www.nichizeiren.or.jp/taxaccount/sme_support/guide/(2026年9月6日確認)