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月次試算表の見方

この記事の結論
  • 試算表で資金繰りに直結して毎月見るべきなのは「現金及び預金」「借入金」「未払法人税等・未払消費税等」の3ヶ所
  • 現金及び預金は実際の通帳残高と一致しているかを確認し、借入金は予定どおり減っているか・1年以内返済予定額が急に増えていないかを見る
  • 未払法人税等・未払消費税等はまだ現金は出ていないが将来必ず出ていく金額で、法人税は事業年度が6か月を超えると原則中間申告(国税庁「法人税のあらましと申告の手引」)、消費税は直前課税期間の確定消費税額が48万円超で中間申告が必要(国税庁No.6609)になるため、この欄が積み上がっているのは異常ではなく通常の姿
  • 損益計算書側の売上・利益より先に、貸借対照表側のこの3ヶ所を確認する方が資金繰りの実態をつかむには近道
この記事の内容
  1. 結論:見るのは「現金・借入金・未払税金」の3ヶ所
  2. まず、読み方が分からなくても不思議ではない
  3. 試算表とは何か:貸借対照表と損益計算書が一体になった書類
  4. 1ヶ所目:現金及び預金 ― 通帳の実際の残高と一致しているか
  5. 2ヶ所目:借入金 ― 予定どおり減っているか、来年に返済が跳ねないか
  6. 3ヶ所目:未払法人税等・未払消費税等 ― まだ出ていない支払いがいくら積み上がっているか
  7. 比較表:3ヶ所で何を確認し、ズレていたら誰に何を聞くか
  8. 計算例:未払消費税等の欄から、来月以降に出ていく現金を逆算する
  9. チェックリスト:試算表が届いたら5分でやること
  10. 実体験:管理部門を統括した立場から見た試算表の使い方
  11. 次にやること

この記事は、顧問税理士から毎月「試算表」が届くものの、どこを見ればいいか分からないままフォルダに保存だけして終わっている個人事業主・中小企業の経営者に向けて書いています。 試算表は貸借対照表と損益計算書が一体になった数十行の書類ですが、資金繰りの観点で毎月確認すべき場所は、そのうち3ヶ所だけです。この記事では、その3ヶ所と、届いたその場でできる確認の手順を整理します。

こんな状態ではありませんか
  • 税理士からメールやクラウド共有で試算表が届くが、開いてもどこを見ればいいか分からずそのまま閉じている
  • 「利益は出ています」と言われるのに、なぜか通帳の残高が思ったように増えていかない
  • 税理士に何を質問すればいいか分からず、毎月「特に問題ないですよね」で済ませている

結論:見るのは「現金・借入金・未払税金」の3ヶ所

試算表が届いたら、資金繰りの観点でまず確認すべきなのは次の3ヶ所です。

  1. 現金及び預金 ― 通帳・ネットバンキングの実際の残高と一致しているか
  2. 借入金 ― 前月より予定どおり減っているか、来年以降に返済額が跳ねる借入はないか
  3. 未払法人税等・未払消費税等 ― まだ現金は出ていないが、将来出ていく金額がいくら積み上がっているか

損益計算書の売上高や利益の欄を見て一喜一憂する前に、この3ヶ所を貸借対照表側から確認するほうが、資金繰りの実態をつかむには近道です。

まず、読み方が分からなくても不思議ではない

ここが要点

試算表を毎月きちんと読み込んでいない自分を責める必要はありません。試算表はもともと、税理士や会計事務所が申告のために作る書類であり、経営者が資金繰りを見るために設計された書式ではありません。 読み方を教わっていなければ、開いても何が重要な数字か分からないのは当然のことです。

数字を見るだけで動悸がする、眠れないといった心身の不調が出ている場合は、この記事より先に医師や産業医への相談を優先してください。ここから先は、書類を読むための手順です。

試算表とは何か:貸借対照表と損益計算書が一体になった書類

試算表は、会社のある一時点の財産状況を示す貸借対照表(B/S)と、一定期間の儲けを示す損益計算書(P/L)を1枚にまとめた書類です。決算時に作る正式な計算書類と違い、月次の試算表は「その月末で帳簬を締めたらこうなる」という速報値の位置づけで、税理士の側で概算処理を含んだまま出てくることもあります。

会社法432条1項は「株式会社は、法務省令で定めるところにより、適時に、正確な会計帳簿を作成しなければならない」と定めており、試算表はこの会計帳簿をもとに月ごとに集計した書類にあたります。ただし「毎月試算表を作成し経営者に提出すること」自体が法律で義務付けられているわけではなく、多くの場合は税理士との顧問契約に基づく実務上の慣行です。

1ヶ所目:現金及び預金 ― 通帳の実際の残高と一致しているか

貸借対照表の資産の部、一番上に出てくる「現金及び預金」の欄です。ここに書かれている金額は、その月末時点の事業用の預金口座と手元現金の合計になっているはずなので、まず自分の通帳・ネットバンキングの残高と照合してください。

一致していれば、税理士の手元にある取引データと実際の口座の動きが合っている証拠になります。ズレている場合、多くは次のどちらかが原因です。

  • まだ税理士に渡していない・伝えていない入出金がある(振込手数料、現金での支払いなど)
  • 複数の口座を使っている場合、一部の口座の通帳・データが渡っていない

ズレを毎月放置すると、翌月以降もズレたまま数字が積み上がり、資金繰りが厳しくなった局面で「試算表上の現金」と「実際に使える現金」が違う、という一番困る状態を招きます。

2ヶ所目:借入金 ― 予定どおり減っているか、来年に返済が跳ねないか

貸借対照表の負債の部にある「短期借入金」「長期借入金」です。ここでは次の3つを確認します。

  1. 前月・前年同月と比べて、残高が返済予定どおり減っているか
  2. 「1年以内返済予定の長期借入金」に急に大きな金額が出ていないか(これは今後1年間で現金が出ていく金額)
  3. 借入が増えているなら、それが何のための借入か把握しているか(運転資金なのか設備投資なのか)

特に2つ目は見落としやすい項目です。長期借入金の一部は、返済期日が近づくと「1年以内に返済する分」として流動負債側に振り替えて表示されます。ここが急に増えていれば、来年のどこかで返済額がまとまって増えることを意味します。

3ヶ所目:未払法人税等・未払消費税等 ― まだ出ていない支払いがいくら積み上がっているか

貸借対照表の負債の部にある「未払法人税等」「未払消費税等」です。資金繰りの観点では、ここが一番見落とされやすく、かつ一番重要な項目です。

これらは、実際にはまだ支払っていないものの、その期間の負担としてすでに発生している税金の見積額です。損益計算書上はすでに費用や利益の計算に反映されていても、現金はまだ出ていきません。しかし申告・納付のタイミングが来れば、まとまった金額が一度に口座から出ていきます。

法人税には、事業年度が6か月を超える普通法人を対象に、原則として事業年度開始から6か月を経過した日から2か月以内に行う中間申告の制度があります(前事業年度の実績を基準にした金額が10万円以下の場合などは提出不要。国税庁「法人税のあらましと申告の手引」)。消費税にも、直前の課税期間の確定消費税額(国税分)が48万円を超える場合に中間申告・納付が必要になる制度があり、金額に応じて年1回・3回・11回に分かれます(国税庁No.6609「中間申告の方法」、No.6611「任意の中間申告制度」)。

つまり試算表の「未払法人税等」「未払消費税等」の欄が月を追うごとに膨らんでいくのは異常なことではなく、通常の姿です。問題は、その金額を資金繰りの予定に反映せず、「まだ払っていないお金」として存在ごと忘れてしまうことです。

比較表:3ヶ所で何を確認し、ズレていたら誰に何を聞くか

見る場所 確認すること ズレていたら聞くこと
現金及び預金 実際の通帳・ネットバンキングの残高と一致しているか 「まだお伝えしていない入出金があるかもしれません。口座は全部お渡しできていますか」
借入金(短期・長期・1年内返済分) 予定どおり減っているか、1年内返済予定額が急に増えていないか 「来年、返済額が増える借入はありますか」
未払法人税等・未払消費税等 残高がいくらで、いつ・いくらを支払うことになるか 「この未払い分は、いつ・いくら支払う予定ですか」

計算例:未払消費税等の欄から、来月以降に出ていく現金を逆算する

前提を次のように仮置きします(金額はすべて仮の例です)。

  • 前期の確定消費税額(国税分)が200万円だった小規模法人
  • 当期の試算表の「未払消費税等」欄に、当期分の見積額として60万円が計上されている

前期の確定消費税額200万円は「48万円超400万円以下」の範囲に入るため、年1回の中間申告対象になります(国税庁No.6609)。中間申告(年1回)の納付額は、直前の課税期間の確定消費税額の12分の6(2分の1)の額とされているため、次の金額が期中に一度、口座から出ていきます。

200万円 × 6/12 = 100万円 ……… 中間申告での納付額(期中に1回)

これとは別に、試算表に載っている「未払消費税等」60万円は、決算後の確定申告で納める当期分の見積額です。つまりこの会社には、

  • 期中に100万円(中間納付)
  • 決算後に60万円前後(確定申告での納付。試算表の見積額のため、期末までの実績で多少動く)

の、合計2回・160万円前後の消費税の支払いが、今後の現金の動きとして待っていることになります。自社の数字で確認する場合は、前期の確定消費税額(申告書の控えに記載があります)と、当期の試算表の未払消費税等の欄を、この2つの欄に当てはめてください。

チェックリスト:試算表が届いたら5分でやること

  • □ 「現金及び預金」の金額が、実際の通帳・ネットバンキングの残高と一致しているか確認した
  • □ 「借入金」が予定どおり減っているか、「1年以内返済予定の長期借入金」が急に増えていないか確認した
  • □ 「未払法人税等」「未払消費税等」の金額と、それぞれの支払い予定時期を確認した
  • □ ズレや疑問点があれば、その場で税理士にメールかチャットで質問した(次回の訪問・打ち合わせまで持ち越さない)

実体験:管理部門を統括した立場から見た試算表の使い方

私の場合

前職ではEC事業会社の執行役員として管理部門を統括しており、経理担当者が作成した月次試算表を毎月確認する立場にありました。売上や利益の欄は毎回きちんと見ていましたが、恥ずかしながら「未払法人税等」「未払消費税等」の残高がどのくらいのペースで積み上がっているかを意識して見るようになったのは、消費税の中間納付でまとまった金額が一度に出ていき、資金繰りの見通しが一瞬狂いかけた経験がきっかけでした。それ以降は試算表を受け取ったら、損益計算書側(売上・利益)より先に、貸借対照表側の現金・借入金・未払税金の3つを確認する順番に変えました。この順番にするだけで、税金の支払いを「急に来た予定外の出費」ではなく「前から分かっていた予定」として扱えるようになります。

次にやること

まず、直近の試算表を開き、「現金及び預金」を通帳の残高と照合し、「借入金」の残高推移と、「未払法人税等」「未払消費税等」の金額・支払い予定時期を確認してください。 ズレや大きな金額が見つかったら、その場で税理士に質問することが、この3ヶ所を見る一番の目的です。


※本記事は2026年9月時点の一般的な整理に基づく情報です。個別の税務・資金繰りの判断については、顧問税理士など専門家にご相談ください。

出典 - 会社法432条1項(会計帳簬の作成及び保存) - 国税庁「法人税のあらましと申告の手引 令和6年10月」(出典、2026年9月時点で確認) - 国税庁 No.6609「中間申告の方法」(出典、2026年9月時点で確認) - 国税庁 No.6611「任意の中間申告制度」(出典、2026年9月時点で確認)

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執行役員として、会社の管理部門を統括していました

執行役員として6年、会社の管理部門を統括する立場にいました。資金繰りの意思決定を経営の側から見てきた経験をもとに書いています。このサイトで紹介するのは手数料の上限を公式に明記している業者だけです。「審査なし」「誰でも通る」を売りにする業者は、載せません。

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