労働保険料の延納(分割納付)
- 労働保険料の延納は労働保険の保険料の徴収等に関する法律第18条に基づく制度で、概算保険料が40万円以上(労災保険・雇用保険どちらか一方のみ成立している場合は20万円以上)であれば申請により3回に分割できる
- 労働保険事務組合に労働保険事務を委託している場合は金額を問わず延納できる
- 納期限は原則7月10日・10月31日・翌年1月31日の3回(年度更新の申告と同時に手続きする)
この記事の内容
この記事は、毎年7月の労働保険年度更新で「概算保険料をまとめて払うのがきつい」と感じている一人社長・経理担当者に向けて書いています。 結論から言うと、概算保険料が一定額以上であれば、申請により労働保険料を年3回に分割して納める「延納」という制度が使えます。要件と納期限を知らずに全額を7月にまとめて払っている会社は少なくありません。
- 労働保険の年度更新の書類が届いたが、概算保険料を一括で払う資金繰りが厳しい
- 「延納」という言葉を見たことはあるが、自社が対象になるか分からない
- 分割した場合、いつまでに何回払えばいいのか知りたい
この語(「労働保険 3期 納付期限」)で来られた方への結論を先に: 第3期(最終回)の納付期限は、通常の会社は原則として翌年1月31日です。労働保険事務組合に事務委託している場合は翌年2月14日、事務組合に委託せず「口座振替」で納めている場合も引き落とし日は翌年2月14日になります(いずれも土日祝なら翌営業日にずれます)。口座振替を使っている会社と使っていない会社とで期限の感覚が変わる点は、後ろの「労働保険料「3期」の納付期限はいつ?」の章で詳しく整理しています。
結論:延納は「概算保険料を3回に分けて払う」制度
延納とは、労働保険(労災保険・雇用保険)の年度更新で申告する概算保険料を、要件を満たせば1回で全額納付する代わりに年3回に分割して納付できる制度です。根拠は労働保険の保険料の徴収等に関する法律(昭和44年12月9日法律第84号)第18条で、条文は「政府は、厚生労働省令で定めるところにより、事業主の申請に基づき、その者が第十五条から前条までの規定により納付すべき労働保険料を延納させることができる。」というものです(2026年9月6日、法令データベースで条文原文を確認)。具体的な金額要件は、この法律の委任を受けた労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則(昭和47年労働省令第8号)第27条(継続事業)・第28条(有期事業)で定められています。e-Gov法令検索で条文原文を確認したところ(2026年9月6日確認)、継続事業(通常の会社)は概算保険料が40万円以上(労災・雇用保険のどちらか一方のみ成立している場合は20万円以上)、有期事業(建設業の個別工事など)は概算保険料が75万円以上であることが条件です。なお有期事業は、金額要件を満たさなくても労働保険事務組合に事務委託しておりその事業の全期間が6ヶ月を超える場合は延納が認められます(継続事業の事務組合委託の要件とは条件が異なります。詳しくは次の章で解説します)。
まとめて払うのがきつくても、焦らなくていい話
毎年7月に届く労働保険の年度更新の書類は、金額が大きく見えるうえに申告書の書き方も独特で、身構えてしまうのは自然な反応です。延納は「申請すれば認められる」正式な制度であり、資金繰りを理由に使うことを後ろめたく思う必要はありません。 ただし自動的に適用されるわけではなく、年度更新の申告書に延納の意思を明記して初めて認められる手続きだという点は押さえておいてください。
延納の対象になる条件
延納が使えるかどうかは、事業の種類と概算保険料の金額で決まります。
| 事業の種類 | 延納の金額要件 |
|---|---|
| 継続事業(通常の会社)で労災保険・雇用保険の両方が成立 | 概算保険料が40万円以上 |
| 継続事業で労災保険・雇用保険のどちらか一方のみ成立 | 概算保険料が20万円以上 |
| 有期事業(建設業の個別工事など、期間の定めがある事業) | 概算保険料が75万円以上 |
| 継続事業で労働保険事務組合に事務委託している場合 | 金額を問わず延納可能(その保険年度の10月1日以降に保険関係が成立した事業を除く) |
| 有期事業で労働保険事務組合に事務委託している場合 | 金額を問わず延納可能(事業の全期間が6ヶ月を超えるものに限る) |
一般的な会社(継続事業)であれば、目安として概算保険料が40万円を超えるかどうかが分かれ目になります。建設業などの個別の工事のように期間が決まっている「有期事業」は、これとは別枠で75万円以上が延納の要件です(労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則第27条・第28条。2026年9月6日、e-Gov法令検索で条文原文を確認)。なお「二元適用事業」(農林漁業・建設業など、労災保険と雇用保険の保険関係を別々に成立させる業種の区分)であること自体が延納の要件になるわけではなく、延納の金額要件を左右するのは「労災保険・雇用保険のどちらか一方のみ保険関係が成立しているか」という点です。金額が要件に満たない場合でも、労働保険事務組合に事務委託していれば延納が認められます(継続事業はその保険年度の10月1日以降に保険関係が成立した事業を除く、有期事業は事業の全期間が6ヶ月を超えるものに限る、という条件付きです)。それ以外で金額が要件に満たない場合は、延納を選ぶことはできず、年度更新の申告と同時に全額を納付することになります。
延納の納期限:年3回
延納が認められた場合の納期限は、原則として次の3回です。
| 期 | 対象期間 | 納期限(原則) |
|---|---|---|
| 第1期 | 4月1日〜7月31日分 | 7月10日 |
| 第2期 | 8月1日〜11月30日分 | 10月31日 |
| 第3期 | 12月1日〜翌年3月31日分 | 翌年1月31日 |
この第1期〜第3期の納期限(7月10日・10月31日・翌年1月31日)は、都道府県労働局が発行する口座振替案内(佐賀労働局公式PDF、2026年9月6日確認)に「通常の納期限」として明記されており、一次資料で確認できています。いずれも納期限が土曜日・日曜日・祝日に当たる場合は、その翌営業日が期限になります。第1期の納期限は、労働保険の年度更新そのものの申告・納付期限(例年6月1日〜7月10日)と同じ日です。つまり延納を選んでも、7月10日にまず1回目を払う必要がある点は一括納付と変わりません。
ただし、労働保険事務組合に事務を委託している場合は、この第2期・第3期の納期限自体が変わります。 同じく都道府県労働局公式資料(佐賀労働局公式PDF、島根労働局「令和8年度労働保険事務組合用 労働保険年度更新の手引き」、いずれも2026年9月6日確認)によると、事務組合委託時の納期限は原則として第2期11月14日・第3期翌年2月14日で、土曜日・日曜日・祝日に当たる場合は翌営業日にずれます(令和8年度は2026年11月14日が土曜日、2027年2月14日が日曜日に当たるため、実際の納期限はそれぞれ11月16日・2月15日です)。事務組合に委託していない一般の会社は7月10日・10月31日・1月31日のままなので、混同しないようにしてください。実際に年度によって曜日のずれで日付が前後することがあるため、その年の正確な納期限は、年度更新の際に届く申告書・都道府県労働局の案内で必ず確認してください。
労働保険事務組合に委託していると条件が変わる
労働保険事務組合とは、中小企業の事業主が労働保険の事務(申告・納付など)を委託できる、厚生労働大臣の認可を受けた団体です。商工会議所や業界団体がこの認可を受けて運営していることが一般的です。事務組合に委託している場合は、概算保険料の金額にかかわらず延納が認められます(ただし、その保険年度の10月1日以降に新たに保険関係が成立した事業は対象外です。年度当初から保険関係が続いている通常の年度更新であれば影響しません)。概算保険料が40万円(有期事業以外で一方の保険関係のみ成立の場合は20万円)に届かない小規模な会社でも、事務組合に委託していれば分割納付ができるという違いがあるため、資金繰りを理由に事務組合への委託を検討する余地はあります。
加えて、前章で触れた通り、事務組合に委託すると第2期・第3期の納期限自体も変わります(原則11月14日・翌年2月14日。都道府県労働局公式資料で確認)。第1期は一般の会社と同じく7月10日のままです。ただし委託には別途手数料がかかるのが一般的なので、延納のためだけに委託するかどうかは、事務代行のメリットと合わせて判断してください。
労働保険料「3期」の納付期限はいつ?口座振替の場合の一覧
事務組合に委託していない一般の会社でも、労働保険料を「口座振替」で納めるよう申し込んでいる場合、実際に口座から引き落とされる日は、納付書どおりの納期限(7月10日・10月31日・翌年1月31日)より後ろにずれます。厚生労働省・都道府県労働局の口座振替案内(佐賀労働局公式PDF、2026年9月6日確認)によると、第1期(全期)は納期限7月10日に対し口座振替日は9月6日(ゆとり58日)、第2期は納期限10月31日に対し11月14日(ゆとり14日)、そして第3期は納期限翌年1月31日に対し口座振替日は翌年2月14日(ゆとり14日)です。つまり口座振替を使っていれば、3期の実際の支払いは1月31日ではなく2月14日まで待ってもらえます。
| 納付方法 | 第1期 | 第2期 | 第3期(最終回) | 口座振替の申込締切日 |
|---|---|---|---|---|
| 納付書で自分で納付(通常) | 7月10日 | 10月31日 | 翌年1月31日 | (対象外) |
| 口座振替を利用(一般の会社) | 9月6日引き落とし | 11月14日引き落とし | 翌年2月14日引き落とし | 全期/第1期分:2月25日、第2期分:8月14日、第3期分:10月11日 |
| 労働保険事務組合に委託 | 7月10日 | 11月14日 | 翌年2月14日 | 事務組合の納期限自体が口座振替日と同じになるため、別途の申込締切はない |
出典:佐賀労働局「労働保険料は『口座振替』が便利です」案内PDF(2026年9月6日、pdftotextで本文抽出して確認。各期の通常納期限・口座振替による納付日〈引き落とし日〉・ゆとり日数・申込締切日を明記)
この語で検索した人が次に詰まりやすい点: 「口座振替にしているから、1月31日までに口座に入れておけばいいのか、2月14日まで待っていいのか」という点です。答えは、その期の申込締切(第3期分は10月11日)までに口座振替の申し込みが間に合っていれば、引き落としは2月14日に行われるので、1月31日時点で口座に残高が無くても延滞にはなりません。ただし申込締切に間に合わなかった場合、その期は口座振替の対象外となり、納付書で1月31日までに直接納付する必要があります(佐賀労働局公式PDFに「申込締切日を過ぎて提出された場合は、次の期からの振り替えとなります」と明記されています)。また、これらの日付が土曜・日曜・祝日に当たる場合は、その後最初の金融機関営業日にずれます。2026年度(令和8年度)は事務組合の第2期・第3期の納期限が実際には11月16日・翌年2月15日にずれることが前章の通り確認できており、同じ暦日(11月14日・2月14日)を使う一般の会社の口座振替日も、同じ考え方でずれる可能性が高い点は留意してください。
延納の申請方法
延納は、別の書類を新たに提出するわけではなく、年度更新の際に提出する「概算保険料申告書」の中で延納の意思を示すことで手続きします。具体的には、申告書の該当欄に分割納付する回数(3回)を記入し、第1期分の保険料額を計算して納付します。第2期・第3期分は、それぞれの納期限が近づくと納付書が送付されてくるため、届いた金額をそのまま納付すれば手続きは完了します。申告書の記入方法や添付書類の詳細は、年度によって様式が変わることがあるため、年度更新の際に同封される記入例、または所轄の労働基準監督署・都道府県労働局に確認してください。
延納にもデメリットはある
延納は無利息で使える制度ですが、資金繰りが厳しいから使う、という判断だけでは見落とす点もあります。
- 納め忘れのリスクが3回に増える:一括納付なら1回で済む手続きが年3回になるため、第2期・第3期の納付を忘れるリスクが単純に増えます。カレンダーやリマインダーに納期限を登録しておく必要があります
- 概算保険料と確定保険料の差額精算は別扱い:延納しても、翌年度の年度更新で行う確定保険料との差額精算(不足分の追加納付・超過分の還付または充当)の仕組みは変わりません
- 滞納すると延滞金が発生する:分割した各期の納期限を過ぎて納付が遅れると、一括納付の場合と同様に延滞金が発生します(労働保険の保険料の徴収等に関する法律に延滞金の規定があります)。延納は「支払いを先延ばしにできる制度」であって「支払わなくてよい制度」ではない、という前提を忘れないようにしてください
実体験:年度更新の事務を見てきた立場から
前職では執行役員として管理部門を統括する立場にいたため、この記事は「延納を自分で申請した」個人の体験ではなく、「毎年7月の年度更新の事務処理を管理する側から見ていた」立場に基づいています。
労働保険の年度更新は、賞与や納税とは時期が重なりにくいものの、概算保険料の額自体は決して小さくなく、資金繰りの計画に組み込んでおかないと7月の資金繰りを圧迫する要因になり得るという実感があります。延納を選ぶかどうかは、単に「今月払えるか」ではなく、その後10月・翌年1月の資金繰りの見通しまで含めて判断すべきものだと、事務を見ていた立場では感じていました。分割すれば1回あたりの負担は減りますが、支払いのタイミングが年3回に増える分、資金繰り表に反映し忘れると別の月にしわ寄せが来ます。
次にやること
まず、今年度の年度更新で届いた概算保険料の額を確認し、40万円(有期事業以外で一方の保険関係のみ成立の場合は20万円、有期事業は75万円)以上かどうかを見てください。 要件を満たしていれば、年度更新の申告書に延納の意思を記入して第1期分を7月10日までに納付し、第2期・第3期の納期限(一般の会社は10月31日・翌年1月31日、労働保険事務組合に委託している場合は11月14日・翌年2月14日。いずれも実際の日付はその年の申告書で確認)を資金繰り表にあらかじめ書き込んでおいてください。要件に満たない場合や、そもそも委託を検討したい場合は、労働保険事務組合への相談も選択肢になります。
※本記事は2026年9月時点の調査に基づく情報整理です。延納の根拠条文(法第18条)と金額要件(施行規則第27条・第28条)はe-Gov法令検索で条文原文を確認し、第1期〜第3期の納期限(一般の会社・事務組合委託の会社それぞれ)は都道府県労働局の公式資料で確認しています。個別の手続き・金額計算については、社会保険労務士にご相談ください。
出典 - 労働保険の保険料の徴収等に関する法律(昭和44年12月9日法律第84号)第18条「政府は、厚生労働省令で定めるところにより、事業主の申請に基づき、その者が第十五条から前条までの規定により納付すべき労働保険料を延納させることができる。」(2026年9月6日、厚生労働省法令等データベースサービスで条文原文を確認) - 労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則(昭和47年労働省令第8号)第27条・第28条 https://laws.e-gov.go.jp/law/347M50002000008(2026年9月6日、e-Gov法令検索で条文原文を確認。第27条=継続事業は概算保険料40万円以上〈労災・雇用保険どちらか一方のみ成立の場合20万円以上〉、または労働保険事務組合委託〈当該保険年度の10月1日以降に保険関係が成立したものを除く〉で延納可。第28条=有期事業は概算保険料75万円以上、または労働保険事務組合委託〈事業の全期間が6ヶ月を超えるものに限る〉で延納可、と規定) - 佐賀労働局「労働保険料は『口座振替』が便利です」案内PDF https://jsite.mhlw.go.jp/saga-roudoukyoku/content/contents/002422481.pdf(2026年9月6日、pdftotextで本文抽出して確認。第1期7月10日・第2期10月31日・第3期1月31日が「通常の納期限」、労働保険事務組合は第2期・第3期の納期限がそれぞれ11月14日・2月14日である旨を明記) - 島根労働局「令和8年度労働保険事務組合用 労働保険年度更新の手引き」https://jsite.mhlw.go.jp/shimane-roudoukyoku/content/contents/002606568.pdf(2026年9月6日、pdftotextで本文抽出して確認。令和8年度の事務組合納期限が第2期11月16日〈月〉・第3期2月15日〈月〉と明記されている〈原則11月14日・2月14日がそれぞれ土曜・日曜に当たるための繰り下げ〉)