売掛債権担保融資(ABL)とは
- ABL(Asset Based Lending)は売掛債権や在庫を担保に金融機関から資金を借りる「融資」で、金銭消費貸借契約にもとづき返済義務を負う
- ファクタリングは売掛債権を売る「債権譲渡」で、原則ノンリコースなら売掛先倒産時の返済義務を負わない(民法466条、貸金業法2条1項)
- 信用保証協会のABL保証制度は保証割合が融資金額の80%・保証限度額2億円・融資限度額2億5,000万円(神奈川県信用保証協会の案内、2026年9月2日確認)
- 東京都は独自に動産・債権担保融資(ABL)制度を設け、1企業あたりの借入限度額は最大3億5,000万円(東京都産業労働局、2026年9月2日確認)
- ABLの金利水準について中小企業庁・信用保証協会の一次情報での相場公表は確認できていない
この記事の内容
この記事は、不動産担保を持たない中小企業・個人事業主で、「ABL」という言葉を銀行や商工会議所から聞いたが、ファクタリングと何が違うのか分からない方に向けて書いています。 結論から言うと、ABL(売掛債権担保融資)は売掛債権や在庫を担保にお金を「借りる」融資であり、ファクタリングは売掛債権を「売る」取引です。どちらも売掛債権を使う点は同じですが、法的な性質がまったく違うため、返済義務の有無や審査のスピードにも差が出ます。
- 「ABL」という言葉を聞いたが、ファクタリングと同じものだと思っていた
- 不動産担保がなくても使える資金調達の方法を探している
- どちらを選べばいいのか、違いを整理して比較したい
結論:ABLは「融資」、ファクタリングは「売買」
ABL(Asset Based Lending、動産・債権担保融資)とは、企業が保有する売掛債権や在庫(棚卸資産)を担保にして、金融機関から資金を借りる融資です。担保として不動産を持たない中小企業でも、事業活動で日々生まれる売掛債権や在庫を担保に使える点が特徴です(東京都産業労働局「東京都動産・債権担保融資(ABL)制度」、2026年9月5日確認)。
ここでファクタリングと混同しやすいのは、どちらも「売掛債権」という同じ対象を使うためです。しかし法的な扱いはまったく別で、この違いが返済義務・審査期間・貸金業の適用有無に直結します。
- ABL:金銭消費貸借契約にもとづく「融資」。売掛債権や在庫を担保に入れてお金を借り、期日までに元本と利息を返済する
- ファクタリング:債権譲渡契約にもとづく「売買」。売掛債権そのものをファクタリング会社に売り、額面より低い金額を早期に受け取る
ABL(売掛債権担保融資)とは何か
ABLは、経済産業省・中小企業庁が不動産担保に頼らない資金調達の選択肢として推進してきた融資手法です。担保にできる資産は金融機関や制度によって幅があり、売掛債権のほか、在庫(棚卸資産)、機械・設備までを対象にする制度もあります。
例えば東京都は独自に「東京都動産・債権担保融資(ABL)制度」を設けており、対象となる担保資産・融資限度額・融資期間は次のとおりです(東京都産業労働局、2026年9月5日確認)。
| 担保の種類 | 融資期間 |
|---|---|
| 機械・設備(車両、建設機械、工作機械等) | 7年以内または15年以内 |
| 再生可能エネルギー発電設備 | 7年以内または15年以内 |
| 売掛債権・在庫 | 1年以内 |
この制度を利用した場合の1企業あたりの借入限度額は、最大で3億5,000万円です(同、2026年9月5日確認)。売掛債権・在庫を担保にする場合は融資期間が1年以内と短く、運転資金の「つなぎ」として繰り返し借り換える形で使われるのが一般的です。
比較表:ABLとファクタリングの違い
両者の違いを整理すると、次のようになります。
| 項目 | ABL(売掛債権担保融資) | ファクタリング |
|---|---|---|
| 法的な性質 | 融資(金銭消費貸借契約) | 債権の譲渡(売買契約) |
| 返済義務 | あり(元本+利息を返済) | 原則なし(ノンリコース契約の場合) |
| 売掛先が倒産した場合 | 影響なし(借りたお金は返す義務が残る) | 契約による(ノンリコースなら利用者に影響なし) |
| 貸金業法の扱い | 貸し手が銀行等以外なら貸金業登録が必要 | 原則、貸金業法の規制対象外(貸金業法2条1項) |
| 担保の対抗要件 | 債権譲渡登記・動産譲渡登記等 | 通知・承諾、または債権譲渡登記 |
| 調達スピード | 審査から実行まで一定の期間を要する | 業者によっては即日〜数日 |
| バランスシートへの影響 | 負債が増える | 売掛債権(資産)が現金に変わる |
(一般社団法人日本中小企業金融サポート機構「売掛債権担保融資(ABL)とは?ファクタリングとの違い・選ぶポイント」、マネーフォワードケッサイ「ABLとファクタリングの違いについて」、2026年9月5日確認)
なぜ違いが生まれるのか:契約の性質
この違いの根っこにあるのは、「お金を受け取る対価が何か」という点です。
ABLは、売掛債権や在庫という資産に「担保としての価値」を認め、それを裏付けにお金を貸す契約です。担保に入れるだけなので、売掛債権の所有権は引き続き自社に残ります。その代わり、借りたお金は元本と利息をつけて返す義務が発生します。
ファクタリングは、売掛債権そのものの所有権をファクタリング会社に移す契約です。売掛債権という資産を売ってしまうため、その対価であるお金は返済する必要がありません(ただし償還請求権あり=ウィズリコースの契約では、売掛先が倒産した場合に利用者が代わりに支払う義務を負うことがあります)。
貸金業法2条1項は「金銭の貸付け」を業として行うものを貸金業と定義しており、銀行等はこの規制の適用対象から除外されています。ABLを銀行が行う場合は銀行としての規制に服し、ノンバンクが行う場合は貸金業登録が必要になります。一方、ファクタリングは債権の売買であるため、原則としてこの定義に当てはまらず、貸金業登録なしで営業できます(貸金業法2条1項、民法466条:債権の譲渡性)。この論点はファクタリング単体の合法性についても詳しく整理していますので、あわせて確認してください。
ABLを使える制度:信用保証協会のABL保証と自治体制度
ABLを利用する場合、信用保証協会の保証を付けて借りる方法があります。神奈川県信用保証協会の案内によると、ABL保証(流動資産担保融資保証制度)の内容は次のとおりです(2026年9月5日確認)。
- 対象:国内の事業者に対する売掛債権または棚卸資産を有する者(棚卸資産を担保とする場合は法人に限る)
- 保証限度額:2億円
- 保証割合:融資金額の80%(責任共有制度、融資限度額は2億5,000万円)
- 担保:根保証は売掛債権・棚卸資産(いずれか一方のみも可)、個別保証は売掛債権のみ
- 不動産担保:不要
信用保証協会のABL保証は全国の信用保証協会で扱われている制度ですが、保証割合・限度額は協会や制度改定によって変わり得ます。申し込みを検討する際は、事業所のある地域の信用保証協会に最新の条件を直接確認してください。
これとは別に、東京都のように自治体が独自にABL制度を設け、利子等の一部を補助しているケースもあります。東京都の場合、機械・設備を担保にする融資では融資額の4%を、売掛債権・在庫を担保にする融資では融資額の3.5%を上限に、必要経費の2分の1を都が補助します。ただし小規模企業者・創業5年未満の中小企業は、担保の種類にかかわらず融資額の4%を上限に必要経費の全額が補助されます(東京都産業労働局、2026年9月5日確認)。自分の事業所がある自治体に同種の制度があるかどうかは、商工担当窓口で確認する必要があります。
なお、ABLの一般的な金利水準について、中小企業庁や信用保証協会が相場を公表している一次情報は確認できていない(2026年9月5日確認)。民間の比較サイトでは年2%〜10%程度という整理も見られますが、実際の金利は担保評価・信用力・借入期間によって個別に決まるため、この記事では相場としての数字は示しません。
ABLのメリット・デメリット
| メリット | デメリット | |
|---|---|---|
| ABL | 不動産担保がなくても、売掛債権・在庫という事業性資産を活用できる/継続的な運転資金枠として使いやすい | 融資である以上、返済義務(元本+利息)は残る/審査・実行までにファクタリングより時間がかかる傾向がある |
| ファクタリング | ノンリコース契約なら売掛先の倒産リスクを負わない/業者によっては即日〜数日で現金化できる | 手数料が金利より割高になりやすい/繰り返し使うと資金繰りがかえって悪化することがある |
どちらを選ぶか:使い分けの目安
調査した範囲で整理すると、次のような使い分けが考えられます。
- 継続的な運転資金枠を安定して確保したい場合:信用保証協会のABL保証や自治体のABL制度を使い、担保余力を計画的に運転資金へ回す
- 今すぐ・単発でまとまった現金が必要な場合:即日性を重視するならファクタリングの検討余地がある。手数料の上限を明記している業者かどうかを契約前に確認する
例えばラボルは、少額1万円からの利用と手数料10%固定を公式に明記しているファクタリングサービスです(labol公式サイト、※2026年9月時点の調査)。ただし、この記事はABLとファクタリングどちらが優れているかを断定するものではなく、担保にできる資産・返済義務の有無・必要な資金化スピードという3点を踏まえて、自社の状況に合う方を選ぶための整理です。
計算例:東京都のABL制度で利子補助はいくらになるか
本文で紹介した「東京都動産・債権担保融資(ABL)制度」の利子補助の仕組みを使い、仮に売掛債権・在庫を担保に融資額1,000万円を借りた場合で、事業者が実質負担する利子等の上限を計算してみます。本文にすでに出ている数字(融資額の3.5%上限・必要経費の2分の1補助)だけを使います。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 融資額(仮) | 1,000万円 |
| 利子等の必要経費の上限(融資額の3.5%) | 35万円 |
| 都の補助額(必要経費の2分の1) | 17万5,000円 |
| 事業者が実質負担する利子等の上限 | 17万5,000円 |
計算の順序は次のとおりです。
- 融資額1,000万円 × 3.5% = 35万円(補助対象になる利子等の必要経費の上限)
- 35万円 × 1/2 = 17万5,000円(都からの補助額)
- 35万円 − 17万5,000円 = 17万5,000円(補助を受けたあとに事業者が実質負担する利子等の上限)
前提:担保は売掛債権・在庫(融資期間1年以内)とし、小規模企業者・創業5年未満の中小企業には該当しない一般の中小企業と仮定しています。小規模企業者・創業5年未満の場合は上限が融資額の4%・必要経費の全額補助に変わるため、この計算はそのまま当てはまりません(東京都産業労働局、2026年9月5日確認)。実際の融資額・補助額は審査と申請内容によって変わるため、この数字はあくまで仕組みを理解するための一例です。
ABLとファクタリングの一番の違いは何ですか
ABLは「融資」、ファクタリングは「売買」という点が一番の違いです。ABLは金銭消費貸借契約にもとづき売掛債権や在庫を担保にお金を借りるため返済義務が残りますが、ファクタリングは売掛債権そのものを売る債権譲渡契約のため、原則ノンリコースなら返済義務を負いません(民法466条、貸金業法2条1項)。
ABLは不動産担保がなくても使えますか
はい、使えます。ABLは売掛債権や在庫(棚卸資産)といった、事業活動で日々生まれる資産を担保にできるため、不動産担保を持たない中小企業でも利用できる資金調達手法です(東京都産業労働局、2026年9月5日確認)。
売掛先が倒産した場合、ABLの返済義務はどうなりますか
ABLでは、売掛先が倒産しても借りたお金を返済する義務は残ります。ABLはあくまで融資であり、売掛債権や在庫は担保として差し入れているだけなので、売掛先の倒産の有無にかかわらず元本と利息の返済義務は変わりません。
信用保証協会のABL保証の保証限度額はいくらですか
神奈川県信用保証協会の案内では、ABL保証(流動資産担保融資保証制度)の保証限度額は2億円です。保証割合は融資金額の80%で、融資限度額は2億5,000万円とされています(神奈川県信用保証協会、2026年9月5日確認)。
ABLの金利相場はどのくらいですか
中小企業庁や信用保証協会が金利の相場を公表している一次情報は確認できていません(2026年9月5日確認)。実際の金利は担保評価・信用力・借入期間によって個別に決まるため、この記事では相場としての数字は示していません。
次にやること
まず、自社に不動産担保がないかを確認したうえで、事業所のある地域の信用保証協会にABL保証の取り扱いがあるかを問い合わせてください。 継続的な運転資金枠として計画的に使いたいならABL、単発で急ぎの資金化が必要ならファクタリングという整理を軸に、両方の見積もり条件(保証割合・手数料・返済義務の有無)を並べて比較したうえで判断してください。
※本記事は2026年9月時点の調査に基づく情報整理です。個別の融資・契約が自社に適しているかの判断は、金融機関または専門家にご相談ください。
出典 - 東京都産業労働局 東京都動産・債権担保融資(ABL)制度 - 神奈川県信用保証協会 ABL保証 - 一般社団法人日本中小企業金融サポート機構 売掛債権担保融資(ABL)とは?ファクタリングとの違い・選ぶポイント - マネーフォワードケッサイ ABLとファクタリングの違いについて - labol(ラボル)公式 ファクタリングの手数料はいくら?相場や上限と計算方法 - 民法466条(債権の譲渡性)、貸金業法2条1項(貸金業の定義)