事業計画書と創業計画書の違い
- 「創業計画書」は日本政策金融公庫(国民生活事業)が新規開業者向けに用意している指定様式という固有名詞であるのに対し、「事業計画書」はどの機関のどの制度でも使われる一般名詞で、様式は提出先ごとに異なる
- 公庫の中小企業事業(中小企業経営力強化資金等)や信用保証協会の借換え、ものづくり補助金は、いずれも「事業計画書」という名前ながら様式・書き方が別々に決まっている
- 自分がどちらを用意すべきかは「開業前後か・提出先はどこか・何のための融資(補助金)か」の3点で決まる
この記事の内容
この記事は、金融機関や公庫の窓口で「事業計画書を出してください」「創業計画書を書いてください」と言われ、この2つが同じものなのか別物なのか分からず手が止まっている方に向けて書いています。 結論から言うと、「創業計画書」は日本政策金融公庫が新規開業者向けに用意している決まった様式の名前であるのに対し、「事業計画書」はどの機関のどの制度でも使われる一般的な呼び方で、様式は提出先ごとに違います。この記事では、公庫と信用保証協会の公式ページの記載から、この違いと自分がどちらを用意すべきかを整理します。
- 「創業計画書」と「事業計画書」、どちらを準備すればいいのか分からない
- 窓口や解説サイトによって言葉の使われ方が違い、混乱している
- すでに開業しているが、公庫や信用保証協会に何を出せばいいか知りたい
結論:名前が違うのは「決まった様式」か「一般的な呼び方」かの違い
日本政策金融公庫の書式ダウンロードページを確認すると、「創業計画書」は国民生活事業(小規模事業者・個人事業主向け)のページに掲載されており、「新たに事業を始める方に事業計画等をご記入いただくもの」と説明されています(https://www.jfc.go.jp/n/service/dl_kokumin.html、2026年9月18日確認)。一方、中小企業事業(ページの見出しは「中小企業の方」)のページには「創業計画書」という名前の書式はなく、代わりに「事業計画書」という書式が、新事業育成資金向け・中小企業経営力強化資金等向け(「事業計画書および同進捗報告書」)・新事業活動促進資金向けの3種類、それぞれ別の様式で用意されています(https://www.jfc.go.jp/n/service/dl_chusho.html、2026年9月21日再確認)。
つまり、公庫という同じ組織の中でも、「創業計画書」は特定の様式1つを指す固有名詞であるのに対し、「事業計画書」は制度ごとに中身が違う複数の様式に共通してつけられた一般的な呼び方です。まずこの構造を押さえておくと、窓口や解説サイトで言葉の使われ方が違っても混乱しにくくなります。
なぜ2つの言葉が混同されるのか
「創業計画書」も広い意味では事業計画を書く書類なので、解説記事の中では「創業計画書(事業計画書)」のようにまとめて紹介されることがあります。言葉が重なって見えるのは自然なことで、混乱するのは珍しくありません。
「事業計画書」という言葉は業界共通の統一書式を指しているわけではなく、依頼された側(あなた)が、依頼した側(金融機関)の趣旨に沿って作る資料全般を指していると考えたほうが実態に近いといえます。
創業計画書とは何か:公庫が新規開業者向けに用意する指定様式
創業計画書は、日本政策金融公庫の国民生活事業が、「新たに事業を始める方に事業計画等をご記入いただくもの」として用意している指定の様式です。様式は「創業の動機」「経営者の略歴等」「必要な資金と調達方法」「事業の見通し(月平均)」「自由記述欄」など、1〜10の10項目で構成されています(公庫の創業計画書Excel、https://www.jfc.go.jp/n/service/xls/kaigyou00_190507a.xlsx、2026年9月21日確認)。公式サイトから様式そのものと、業種別の記入例(洋風居酒屋・美容業・中古自動車販売業など9業種)をダウンロードできます(https://www.jfc.go.jp/n/service/dl_kokumin.html、2026年9月21日確認。様式の10項目の内訳は本サイト記事「創業計画書の書き方|数字の根拠をどう作るか」で解説しています)。
同じ国民生活事業のページには「企業概要書」という別の様式もあり、こちらは「はじめてお取引いただく方に、取扱商品・サービス等の企業内容について、簡単にご記入いただくもの」と説明されています(同ページ、2026年9月21日確認)。公式ページには、創業計画書と企業概要書のどちらを出すかの境目(開業後の年数や決算を終えたかどうか)を示した記載は見当たりませんでした。【各自確認:自分が創業計画書と企業概要書のどちらを提出すべきか。開業からの年数や決算の有無を伝えたうえで、日本政策金融公庫(国民生活事業)の窓口に確認】いずれにしても、創業計画書は「新たに事業を始める方」という対象が決まった、公庫独自の様式だという点は公式ページから確認できます。
事業計画書とは何か:提出先ごとに様式が変わる一般名詞
事業計画書は、「事業の内容と見通しをまとめた資料」全般を指す一般的な呼び方です。同じ公庫の中でも、中小企業事業のページでは「事業計画書」という名前の様式が、新事業育成資金・中小企業経営力強化資金等・新事業活動促進資金(100億宣言関連)のそれぞれに、別々の様式として用意されています(https://www.jfc.go.jp/n/service/dl_chusho.html、2026年9月18日確認)。制度が変われば様式そのものが変わる、という点が創業計画書との大きな違いです。
何をどこまで書けばよいか分からない場合は、金融機関の担当者に「様式の指定はあるか」を先に確認するのが確実です。
比較表:創業計画書と事業計画書は何が違うか
| 創業計画書 | 事業計画書 | |
|---|---|---|
| 位置づけ | 日本政策金融公庫(国民生活事業)の指定様式という固有名詞 | 「事業の内容と見通しをまとめた資料」を指す一般名詞 |
| 対象 | 新たに事業を始める方(公庫の説明文) | 制度・提出先によって様々(既存事業者の追加融資、補助金申請者など) |
| 様式 | 公庫が用意する指定の様式(公式サイトでダウンロード可) | 提出先・制度ごとに様式が異なる |
| 主な提出先 | 日本政策金融公庫(国民生活事業) | 公庫(中小企業事業)、信用保証協会、銀行、補助金の事務局など |
信用保証協会でも同じ使い分けがある
信用保証協会でも、公庫と似た構造の使い分けが確認できます。東京信用保証協会の書式ダウンロードページでは、「創業計画書」は「創業保証をご利用の場合」の様式(このほかにスタートアップ創出促進保証制度用もあります)として用意されている一方、「事業計画書」は「『資金繰』で既存の保証をまとめる場合」の様式として、別に用意されています。同ページには事業計画書について「特別借換用ではありません」とも明記されています(https://www.cgc-tokyo.or.jp/download/download.html、2026年9月21日再確認)。つまり保証協会の窓口でも、「創業計画書」は創業保証を使う人向け、「事業計画書」は既存の保証をまとめる場合に使う書類、という役割分担になっています。ほかの都道府県の信用保証協会では様式や名称の運用が異なる場合があるため、実際に申し込む協会の書式ダウンロードページで確認してください。
チェックリスト:自分は創業計画書と事業計画書、どちらを用意すればいいか
- □ これから新たに事業を始めて、日本政策金融公庫(国民生活事業)に融資を申し込む → 創業計画書を用意する
- □ すでに開業していて、公庫の融資に初めて申し込む → 創業計画書か企業概要書かを公庫の窓口で確認する【各自確認:自分が創業計画書と企業概要書のどちらを提出すべきか。開業からの年数や決算の有無を伝えたうえで、日本政策金融公庫(国民生活事業)の窓口に確認】
- □ 信用保証協会の窓口で「既存の保証をまとめる(借換え・資金繰りの相談)」をする → その保証協会が用意している事業計画書の様式を確認する
- □ 公庫の中小企業経営力強化資金など、中小企業事業の制度を検討している → その制度専用の事業計画書の様式を公庫のページで確認する
- □ ものづくり補助金など、補助金への申請を考えている → 公募要領で定められた事業計画書の書き方・ページ数を確認する(次の見出しで詳しく説明します)
チェックが2つ以上の項目に当てはまる場合(たとえば創業したばかりで、公庫と保証協会の両方に相談する場合など)は、それぞれの提出先ごとに求められる書類が別だと考え、両方を個別に準備してください。
補助金の「事業計画書」はまた別物と考える
融資ではなく補助金の場合も、「事業計画書」という同じ呼び方が使われますが、中身はさらに別物です。ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ものづくり補助金)の第23次公募要領(公募期間2026年2月6日〜5月8日)では、事業計画書の本文を電子申請システムに入力し、補足の図や画像を本文と紐づけたうえで、A4サイズ5ページ以内のPDFにまとめて提出するよう定められています。5枚を超えるPDFや、本文を入力せずにPDFだけを添付した場合は審査の対象にならないとも書かれています(公募要領3.3、https://portal.monodukuri-hojo.jp/common/bunsho/ippan/23th/%E5%85%AC%E5%8B%9F%E8%A6%81%E9%A0%98_23%E6%AC%A1%E7%B7%A0%E5%88%87_20260206.pdf、2026年9月21日確認。2026年10月4日に公募要領PDFを再読し、公募期間「2026年2月6日(金)〜5月8日(金)17:00」と「A4サイズ5ページ以内」の記載を確認。公式ポータルの最新公募回は同日時点で第23次)。公募回ごとに要件が変わることがあるため、申請する回の公募要領で確認してください。なお、事業再構築補助金は、事務局の公式サイトで「新規の応募申請受付は第13回公募で終了」と案内されており(https://jigyou-saikouchiku.go.jp/、2026年9月21日確認)、今から新規に申請できる補助金ではありません。同じ言葉でも、提出先が変われば書くべき内容も変わると考えておいてください。
次にやること
まず、自分がこれから何に申し込むのかを、上のチェックリストと照らし合わせてください。 日本政策金融公庫(国民生活事業)にこれから新たに事業を始める方として申し込むなら創業計画書、すでに開業している場合は創業計画書と企業概要書のどちらかを公庫の窓口で確認し、それ以外の融資・補助金であれば、提出先に「事業計画書に指定の様式はあるか」を確認することが最初の一歩になります。様式がある場合は公式サイトの最新版をダウンロードし、様式がない場合は、この記事で紹介した比較表を目安に、自分の状況(開業前後か・既存事業者か・融資か補助金か)を整理してから書き始めてください。
※本記事は2026年9月時点の調査に基づく情報整理です。日本政策金融公庫の国民生活事業・中小企業事業それぞれの書式ダウンロードページ、公庫の創業計画書Excel、東京信用保証協会の書式ダウンロードページ、ものづくり補助金の第23次公募要領、事業再構築補助金事務局の公式サイトは、本文中の記載を直接確認しています(2026年10月4日に再確認し、記載内容に変更がないことを確認済み)。実際の申請にあたっては、各機関・各補助金事務局の最新の公式情報をご確認ください。
出典 - 日本政策金融公庫「各種書式ダウンロード 小規模事業者/個人事業主の方【国民生活事業】」(創業計画書・企業概要書の説明文、記入例の業種) https://www.jfc.go.jp/n/service/dl_kokumin.html(2026年9月21日確認) - 日本政策金融公庫「創業計画書」Excel(1〜10の10項目) https://www.jfc.go.jp/n/service/xls/kaigyou00_190507a.xlsx(2026年9月21日確認) - 日本政策金融公庫「各種書式ダウンロード 中小企業の方【中小企業事業】」(事業計画書が新事業育成資金・中小企業経営力強化資金等・新事業活動促進資金それぞれに別様式で用意されていること、創業計画書・企業概要書という名称の書式が無いこと) https://www.jfc.go.jp/n/service/dl_chusho.html(2026年9月21日確認) - 東京信用保証協会「中小企業向け書式ダウンロード」(創業計画書=創業保証利用者向け、事業計画書=「資金繰」で既存の保証をまとめる場合) https://www.cgc-tokyo.or.jp/download/download.html(2026年9月21日確認) - ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公募要領(第23次公募)3.3「事業計画書への記載事項」 https://portal.monodukuri-hojo.jp/common/bunsho/ippan/23th/%E5%85%AC%E5%8B%9F%E8%A6%81%E9%A0%98_23%E6%AC%A1%E7%B7%A0%E5%88%87_20260206.pdf(2026年9月21日確認) - 事業再構築補助金事務局サイト(新規の応募申請受付は第13回公募で終了) https://jigyou-saikouchiku.go.jp/(2026年9月21日確認)