小さな会社の資金繰りガイド 苦しくなる前の備えから、危機のときの順番まで
ホーム › 賞与の月にたまたま重なる納税と保険料
本ページはプロモーションが含まれます

賞与の月にたまたま重なる納税と保険料

この記事の結論
  • 賞与にかかる社会保険料は、通常の給与分とあわせて標準賞与額を決定した月の翌月末日までに納付する(日本年金機構)
  • 源泉所得税は原則毎月10日納付だが、納期の特例を受けている場合は1〜6月分をまとめて7月10日、7〜12月分をまとめて翌年1月20日に納付する(国税庁)
  • 労働保険の年度更新は毎年6月1日から7月10日までの間に申告・納付する手続きで、令和8年度の申告期間も6月1日(月)から7月10日(金)までとされている(厚生労働省)
  • 前事業年度の確定法人税額が20万円を超える普通法人は、事業年度開始の日以後6か月を経過した日から2か月以内に中間申告・納税の義務が生じる(国税庁)
  • 国税には納税の猶予・換価の猶予という制度があり、原則1年以内(延長で最長2年)、担保額100万円以下・猶予期間3か月以内などの条件では担保が不要になる場合がある(国税庁)
  • 社会保険料にも換価の猶予・納付の猶予という同様の制度がある(日本年金機構)
この記事の内容
  1. 結論:賞与月が重いのではなく、期限が賞与月に集まりやすい
  2. なぜ重なるのか|4つの支払いにはそれぞれ別のルールがある
  3. 主な期限の一覧表
  4. 夏(6〜7月)に集中しやすい理由
  5. 法人税・消費税の中間申告は決算月によって時期が変わる
  6. 事前にやること|「重なる月」を資金繰り表に先に書き込む
  7. それでも足りないとき|納税・保険料の猶予制度
  8. 猶予でも間に合わないとき
  9. 次にやること

この記事は、賞与を支払った月に限って手元資金が急に苦しくなる経営者・経理担当者に向けて書いています。 結論から言うと、これは賞与そのものが重いからではなく、賞与の支給と同じ時期に、社会保険料・源泉所得税・労働保険料・法人税等の納期がもともと集中しやすい構造になっているためです。何が・いつ・どういう理由で重なるのかを先に知っておけば、支払いの順番と手元資金の置き場所を事前に組み替えられます。

こんな状態ではありませんか
  • 賞与を払った月やその翌月に、なぜか他の支払いも一気に重なって資金が足りなくなる
  • 社会保険料・源泉所得税・労働保険料・法人税の納期がバラバラで、いつ何が来るのか把握しきれていない
  • 重なることが分かっていても、何を先に手を打てばいいのか分からない

結論:賞与月が重いのではなく、期限が賞与月に集まりやすい

賞与を支払った月やその前後だけ資金繰りが急に苦しくなる場合、原因は賞与の金額そのものよりも、賞与の支給時期に、もともと別々のルールで決まっている複数の納期が集中しやすいことにあります。社会保険料・源泉所得税・労働保険料・法人税等は、それぞれ根拠になる法律も、計算の基準になる期間も、納期のルールも異なります。たまたま重なっているように見えて、実際には毎年同じ理屈で重なる、予測できる谷です。

なぜ重なるのか|4つの支払いにはそれぞれ別のルールがある

資金繰りに影響する主な支払いを、根拠と発生タイミングで整理すると次のようになります。

支払い 何にかかるか 発生のタイミング
社会保険料(健康保険・厚生年金) 通常給与分+賞与分 毎月発生。賞与分は支給の都度追加で発生する
源泉所得税 給与・賞与から天引きした所得税 原則毎月。納期の特例があれば半年ごと
労働保険料 前年度に支払った賃金総額(給与・賞与を含む) 年1回、年度更新の時期にまとめて精算・申告
法人税・消費税等 その事業年度の所得・売上 決算月から逆算した中間申告・確定申告の時期

賞与は社会保険料と源泉所得税の計算の材料になっている一方、労働保険料は前年度の賃金総額を年1回まとめて精算する仕組みです。つまり、賞与を払った月に社会保険料と源泉所得税が増えるのは当然として、そこに労働保険の年度更新や法人税の中間申告のタイミングがたまたま近い時期に来ると、支払いが一気に積み重なって見えます。

主な期限の一覧表

それぞれの法定の納期は次の通りです。

支払い 納期限 根拠
社会保険料(賞与分含む) 通常給与分とあわせて、賞与を支払った月の翌月末日 日本年金機構「厚生年金保険料等の納付」
源泉所得税(原則) 給与・賞与を支払った月の翌月10日 国税庁タックスアンサーNo.2505
源泉所得税(納期の特例。給与の支給人員が常時10人未満の事業者が対象) 1〜6月分は7月10日、7〜12月分は翌年1月20日 国税庁タックスアンサーNo.2505
労働保険料(年度更新) 毎年6月1日から7月10日までの間に申告・納付(令和8年度も同期間) 厚生労働省「労働保険年度更新に係るお知らせ」
法人税・地方法人税(中間申告) 前事業年度の確定法人税額が20万円超の場合、事業年度開始の日以後6か月を経過した日から2か月以内 国税庁「予定申告及び納税の義務」

同じ「賞与にかかる支払い」でも、社会保険料は翌月末、源泉所得税は原則翌月10日(納期の特例があれば半年後)と、期限がそろっていません。 さらに労働保険料と法人税等は賞与そのものとは無関係に、年1回・決算月基準で決まった時期にやってきます。これらが暦の上でたまたま近づく月に、支払いが集中して見えるということです。

夏(6〜7月)に集中しやすい理由

多くの会社で夏季賞与が6月から7月にかけて支給されるため、この時期は次の3つが重なりやすくなります(厚生労働省「毎月勤労統計調査」でも、夏季賞与は6〜8月に支払われた特別給与のうち賞与分として特別集計されている)。

  1. 夏季賞与分の社会保険料(賞与を支給した月の翌月末が納期限)
  2. 夏季賞与分の源泉所得税(納期の特例なしなら翌月10日。特例ありなら7月10日にまとめて)
  3. 労働保険の年度更新(6月1日〜7月10日の申告・納付期間)

労働保険の年度更新は前年度1年分の賃金総額(給与・賞与を含む)をまとめて精算する手続きのため、賞与の支給とは直接連動していません。しかし申告・納付の期間が固定で毎年6月1日から7月10日と決まっているため、多くの会社の夏季賞与支給時期とほぼ重なります。冬季賞与(12月前後)の時期には労働保険の年度更新はないため、夏の方が支払いが重なりやすい傾向があります。

法人税・消費税の中間申告は決算月によって時期が変わる

法人税等の中間申告は、決算月を基準に「事業年度開始の日以後6か月を経過した日から2か月以内」という計算式で決まるため、自社の決算月によって時期が変わります。

決算月(事業年度) 6か月経過日 中間申告の期限
3月決算(4月〜翌3月) 10月1日 11月30日
6月決算(7月〜翌6月) 1月1日 2月末日
9月決算(10月〜翌9月) 4月1日 5月31日
12月決算(1月〜12月) 7月1日 8月31日

12月決算の会社は、中間申告の期限(8月末)が夏季賞与の社会保険料・源泉所得税・労働保険の年度更新(6〜7月)と近い時期に来やすく、夏に支払いが集中しやすい決算月です。 逆に3月決算の会社は中間申告が11月末のため、夏の賞与月とは重ならず、冬季賞与の時期(12月前後)と近づく形になります。自社がどの月に重なりやすいかは、まず決算月から中間申告の期限を逆算することで把握できます。なお、この中間申告の義務が生じるのは前事業年度の確定法人税額が20万円を超える普通法人に限られ、消費税にも別途、前年度の確定消費税額に応じた中間申告・納付の制度があります。

事前にやること|「重なる月」を資金繰り表に先に書き込む

ここが要点

対策の中心は、賞与の支給を決める段階で、その前後にどの支払いが来るかを先に資金繰り表へ書き込んでおくことです。賞与額が決まってから慌てて他の支払いを洗い出すのではなく、順番を逆にします。

具体的には、次の3点を賞与支給月の前に確認します。

  1. 賞与分の社会保険料・源泉所得税がいつ引き落とされるか(通常給与分と合算されるため、金額は単純な足し算にならない)
  2. その時期に労働保険の年度更新(6〜7月)や法人税等の中間申告が重ならないか(決算月から逆算)
  3. 重なると分かった場合、賞与の支給日をずらせるか、それとも支払いのどちらかを前倒し・分割できるか

賞与の支給日そのものは、賃金規程や労働契約の定めに反しない範囲でしか動かせません。 動かせるのはあくまで会社側の資金の準備であり、支給日を理由なく後ろ倒しにすることはできない点に注意してください。

それでも足りないとき|納税・保険料の猶予制度

事前に準備していても、重なる月の資金が足りない場合、国税にも社会保険料にも、それぞれ猶予の制度があります。

制度 内容 根拠
国税の納税の猶予・換価の猶予 原則1年以内(納付できないやむを得ない理由があれば、既に猶予した期間とあわせて2年を超えない範囲で延長可)の猶予。担保額が100万円以下、または猶予期間が3か月以内などの条件では担保が不要になる場合がある 国税通則法46条7項・国税徴収法152条3項/4項(延長)、国税庁「通常の納税の猶予の要件等」「申請による換価の猶予の要件等」
社会保険料の換価の猶予・納付の猶予 一括で納付すると事業の継続や生活の維持が困難になる場合などに、分割納付などの形で猶予を受けられる制度 日本年金機構「厚生年金保険料等の猶予」

どちらの制度も、納期限を過ぎてから慌てて申請するのではなく、納期限が来る前に税務署・年金事務所へ相談することが前提になっています。 猶予が認められても延滞税・延滞金がゼロになるわけではなく、一定の減免にとどまる場合がある点も踏まえ、あくまで一時的な時間稼ぎの制度として捉えてください。

猶予でも間に合わないとき

猶予制度は申請から承認までに一定の日数がかかるため、賞与支給の直前に「今月中に現金が要る」という状況には間に合わないことがあります。その場合、確定している売掛金をファクタリングで現金化する方法もあります。少額から利用できるサービスとしてラボルがあり、公式サイトでは手数料一律10%・1万円からの利用に対応していることが明記されています(2026年9月確認)。ファクタリングは借入ではなく売掛金の売却であるため、審査基準は自社の信用力よりも売掛先の信用力が重視されます。 ただし、これは賞与・納税・保険料という支払い側の構造そのものを軽くする手段ではなく、あくまで一時的に手元現金を作る手段である点は変わりません。

次にやること

まず、自社の決算月から法人税等の中間申告の期限を逆算し、それが夏季賞与(6〜7月)・冬季賞与(12月前後)のどちらに近いかを確認してください。 そのうえで、賞与を支給する前の段階で、賞与分の社会保険料(翌月末納付)・源泉所得税(翌月10日、または納期の特例で半年ごと)・労働保険の年度更新(6月1日〜7月10日)がその月に重ならないかを資金繰り表に書き込み、足りないと分かった時点で、納期限が来る前に税務署・年金事務所へ猶予の相談をしてください。


※本記事は2026年9月時点で確認できた国税庁・厚生労働省・日本年金機構の公表情報をもとにした一般的な整理です。労働保険の申告期間や中間申告の要件は年度・個々の会社の状況によって変わるため、実際の納期限・猶予の可否については所轄の税務署・年金事務所・顧問税理士に個別に確認してください。

出典(2026年9月確認) - 賞与分の社会保険料の納付期限(通常給与分とあわせて翌月末日):日本年金機構「厚生年金保険料等の納付」(nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/nofu/nofu.html) - 源泉所得税の納付期限(原則翌月10日)と納期の特例(1〜6月分→7月10日、7〜12月分→翌年1月20日、対象は給与の支給人員が常時10人未満の源泉徴収義務者):国税庁タックスアンサー「No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例」(nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2505.htm) - 労働保険の年度更新期間(毎年6月1日〜7月10日、令和8年度も同期間):厚生労働省「労働保険年度更新に係るお知らせ」(mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/hoken/roudouhoken21/index.html) - 法人税の中間申告義務(前事業年度確定法人税額20万円超・事業年度開始の日以後6か月を経過した日から2か月以内):国税庁「前事業年度の確定分法人税額が20万円を超える場合、予定申告及び納税の義務が発生します」(nta.go.jp/taxes/nozei/oshirase/pdf/01.pdf) - 国税の納税の猶予・換価の猶予(原則1年以内、延長は既往期間とあわせて2年を超えない範囲、担保額100万円以下または猶予期間3か月以内等は担保不要の場合あり):国税通則法46条7項、国税徴収法152条3項・4項(延長規定)、国税庁「国税の納税の猶予制度FAQ」(nta.go.jp/taxes/nozei/nofu_konnan/pdf/0021001-141_05.pdf)、「第2章第1節 通常の納税の猶予の要件等」(nta.go.jp/law/jimu-unei/tyousyu/150302/02/01.htm)、「第3章第2節 申請による換価の猶予の要件等」(nta.go.jp/law/jimu-unei/tyousyu/150302/03/02.htm) - 社会保険料の換価の猶予・納付の猶予制度:日本年金機構「厚生年金保険料等の猶予(換価の猶予・納付の猶予)」(nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/nofu/kankayuyo.html) - 株式会社ラボル公式「ファクタリングの手数料はいくら?」(labol.co.jp/insight/factoring-commission/、手数料一律10%・少額1万円から対応と明記) - 夏季賞与の支給時期(6〜8月に支払われた特別給与のうち賞与分):厚生労働省「毎月勤労統計調査」用語の解説(mhlw.go.jp/toukei/list/30-1j.html)

当サイト運営者

執行役員として、会社の管理部門を統括していました

執行役員として6年、会社の管理部門を統括する立場にいました。資金繰りの意思決定を経営の側から見てきた経験をもとに書いています。このサイトで紹介するのは手数料の上限を公式に明記している業者だけです。「審査なし」「誰でも通る」を売りにする業者は、載せません。

この記事の作り方: 下書きにAIを使い、法令の条文と官公庁の公式ページに照らして事実確認したうえで公開しています。確認の取れない記述が残る記事は公開せず、一次資料が見つからない箇所は本文にそう書いています。確認の手順を見る →

この記事に関係する無料の道具(登録不要・その場で使える)
あわせて読みたい